第5話 君は運命の赤い糸を信じるかい?
「ねぇ、照君は運命の赤い糸ってあると思う?」
本日最後の講義が終わり、部室棟へと向かっていると、黒のワンピースを着た雫さんとバッタリ出会った。
ミステリアスな雰囲気を醸し出している雫さんが黒のワンピースを着ると、なんだか絵画に出てくるお姫様みたいな凄みがあるな。
「運命の赤い糸ですか? 俺はあると思いますよ」
「これを見ても??」
ズイッと雫さんが自分のスマホを俺に近付ける。
そこにはマッチングアプリの広告が出ていて、大きく『貴方の運命の赤い糸、見つけませんか?』と表示されていた。
「いや、なんかそれを見ると少し気持ちが揺らいでしまいそうになりますけど、あるものはあると思いますよ?」
だって漫画とかアニメを見て、一目惚れなんてないだろーとか思っていた俺が、最近実際に一目惚れを体験したんだからな。
運命の赤い糸もきっとフィクションじゃなくて、実際にあるはずだ。
「ふーん……男の子って、そういうの信じないと思ってた」
「まぁ、信じてる男子は確かに少ないでしょうね。 雫さんは信じてるんですか?」
雫さんって、そういうのは信じてなさそうだよな。 理系っぽいというか、幽霊とかああいう非科学的な物は認めないイメージがある。
「私も運命の赤い糸はあると思ってるわ」
「わっ。 俺と一緒ですね」
「そうね。 でも、つい最近までは運命の赤い糸なんてあるわけないと思っていたわ」
「そうなんですか?」
なんであると思うようになったんだろう?
「そうなのよ。 なんなら、漫画とかで一目惚れの描写とかあるでしょ? あれとかつい最近まではあるわけがないって鼻で笑っていたのよ」
「あ、それ俺も分かります! 俺も最近まで運命の赤い糸や一目惚れなんて、あるわけないって高を括っていましたもん!」
「あら、そうなの? 私達って似た者どうしなのかもね」
「そうかもしれないっすね!」
俺達は朗らかな雰囲気の中、歩みを進める。
しかし部室棟が見えてくると、雫さんの歩みが止まってしまった。
どうしたんだろう?と思い、俺は雫さんの方を見る。
雫さんは下を向いていて、表情は見えなかった。
「雫さん、どうしたんですか?」
「…………運命の赤い糸や一目惚れを、最近までは信じていなかった? でも、今は信じている……ってことは、照君、君、今好きな人がいるってことじゃないかい??」
その言葉を聞いた瞬間、俺は身体が一気に暑くなり、ドバッと冷や汗が出てきた。
やばいやばい。 俺の好きな人が雫さんってバレるかもしれない。
でも、それ以上になんだこの雫さんから放たれる圧は!?
生きてきた中で、こんなに圧を感じたのは初めてだ。
「べ、別に好きな人がいるって訳ではないですよ? 友人の実体験を聞いて、信じるようになったんです!!」
「……そうなの?」
「そうなんです!! あ、雫さん! 先輩方もう部室に集まっているみたいですよ?」
窓から明かりが溢れている。 いやーこれは早く行かないと行けないなぁ!!
先輩を待たせるなんて後輩がしちゃいけないことだよな! うん! そうに違いない!!
「雫さん、早く行きましょうよ!」
「むむむ……腑に落ちないけど、まーしょうがないか」
俺は強引に流れを変える。
雫さんは納得していない感じだったけど、部室に入る頃にはいつも通りの雫さんになっていた。
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第6話から更新時間が朝6時00〜7時30だったところを、夜の19時00〜19時30投稿に変更します。
よろしくお願いします。
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