第4話 好きな星座とか星ありますか?

「雫さんって好きな星座とか星ってあります?」


「あるわね」


「それってなんですか?」


 俺は部室で星座の本を見ながら雫さんに聞く。


 今部室にいるのは俺と雫さんだけだ。


「私って7月7日生まれなの」


「凄いじゃないですか! その日って七夕の日ですよね?」


「そうよ。 ちなみに7月7日って星座だと何座か知ってる?」


「ええっと……分からないです」


「正解は蟹座よ」


「そうなんですね。 あ、じゃあ、好きな星座は誕生日が関係する蟹座ってことですか?」


「最近まではそうだったんだけど、変わったの。 1番好きなのは蠍座よ」


 蠍座?


 そういえば、俺って蠍座だ。


 もしかして関係あったりするのかな??


 ……いやぁ、あるわけないっか!!


「なんで蠍座が1番好きなんですか?」


「まず12星座には愛に例えると色々な愛があるってこと知ってる?」


「知らないです」


「そう。 蟹座なら親愛だったり、牡羊座だっら自己愛とか、とにかく色々な愛があるの」


「へぇ〜そうなんっすね。 あ、じゃあ蠍座は凄く良い愛ってことですか?」


 どんな愛なんだろ? 少しドキドキワクワクするな。


「蠍座の愛は『偏愛』なの」


「偏愛??」


 なんだかイマイチピンってこないな。


「この人だけって決めて、一点集中で深めていくのが偏愛なんですって」


「へ、へぇ」


「その深さは海よりも深くて海溝らしいわ。 裏切られても地獄の果てまで着いていく意味合いがあるんですって」


「へ、へぇ……」


 いやいや怖い怖い怖い。 ヤンデレじゃん。 ホラーじゃん!


 雫さんの落ち着いた笑みが、凄い味を出してるんだけど!


「そういう一途な感じっていいわよね……だから、そういう愛があるって言われている蠍座が私は1番好きなの」


「へ、へぇ! それいいっすねぇ!! うん! 素敵だなぁ!!」


「あら、照君もそう思う?」


「そう思うっす! 海よりも深くて、海溝ぐらい素敵だなって思うっす!!」


「ふふっ。 私たち、あんがい好みが合うのかもしれないわね」


「いや、まじで合いすぎて嬉しいなぁ!!」


「ふふふ……」


「へへへへへへ……」


 俺たちは顔を見合わせて笑い合う。


 でも、きっと雫さんの笑みと俺の笑みは意味合いが全然違うんだろうなと、脇汗をビッショリかきながら俺は思ったのだった。

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