1章 最初の大会

第1話 初オーディション

あの後すぐに彼女も入部届を提出した。あの日一緒に来ていた彼女の友達も入部することにしたらしい。


私は部室前の廊下にいる。

今日はオーディションをするそうだ。大した説明もされず希望の役だけ聞かれた。廊下で待機して自分の順番が来たら中に入って台詞を読む。緊張で心臓が飛び出そうだ。昔踊っていた私はずっとジャンプしている。彼女はどうやらあがり症のようでずっとうろうろしている。


中に入る。先輩方が並んで座っている。もう何を読めばいいかすらわからない。正直、中学では学級委員をしていたから人前で話す機会は多かった。私は裏方志望だがオーディションくらいはいけると昨晩は舐めていた。


思ったように喋れなかった。

少し悔しい。


もうしばらく廊下で待っている。先輩方は配役に迷っているようだ。

まだ四月だがずっと廊下にいると暑くなってくる。

彼女は下を向いてしゃがみ込んでいる。役者をやりたいと言っていたから私より緊張しているのだろう。そういえば彼女の名前は春奈というそうだ。

もう一人の新入生(彼女の友達)は今中にいる。


やっと中に入れてもらえた。当たり前だが廊下よりはるかに居心地がいい。

春奈が役者に選ばれた。赤ずきん役だ。彼女に合ってる。私も嬉しかった。


どうやら三年生の先輩は一人で役者をやるらしい。演出は基本的には二年生の小川先輩が務めることになった。裏方は残った人で今から仕事を割るそうだ。私は音響に手を挙げた。わくわくする。


帰り際。春奈に名前の呼び方を聞かれた。呼び捨てで呼んでほしいと頼んだ。彼女にも名前を呼び捨てするように言われた。

もう一人の名前は夏花というらしい。なつと呼ぶことにした。



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