ゴールデン・サークル後編
四分三十一秒四分三十二秒…
『がばっっ!!』
タイムスリップ・フンフーンヒコのアームヘッド4分33秒は強敵だった。だが倒した。4分33秒で決着がつくという敵の調和を逆手に取りなんとか勝てた。
『馬鹿なこれが私自身のレクイエムになるとは…』
『落ち着けフンフーンヒコ』
ヤリヒコのアームヘッド、クルージーンが4分33秒を抱きかかえる。タイムスリップ教団において撤退や敗北は恥とされていない。戦略的に撤退を選ぶことはありうるし敗北しようが鍛えればよいのだ。最終的な教団の勝利のために。
『次はラウンズにふさわしい実力を持つがいい』
『TypeAの反応があるよ!ランクはE+、危険だ!A+!やだ低すぎ…S+++』
エーデルワイスに謎の鼻眼鏡の金髪英語教師に渡された追加パーツによって備わったアームヘッドナビゆにてぃーちゃんが警告する。
『いいぜ、もう終わった』
4分33秒とクルージーン、イペタムしかタイムスリップ教団はいない。
『いや終ってなどいない』
タイムスリップ拳の不意打ち!エーデルワイスは間一髪かわす!
『見ていろラウンズ!私が仲間入りするさまを!』
黄金色のアームヘッドが現れた!
『ウチデハンマーを渡すとはハルヒコのやつ本気ですね』
フユヒコが独り言ちた。
『ランクC++!高レベルです!気をつけて!』
ウチデハンマー、ウコンバサラの先行試作量産型でありサダヒコウェポンの有効性の拡大を意図して設計されたエリート団員用アームヘッド。ハンマー形態への変形やハルヒコ自身の能力である時止めはできないが恐るべきアームヘッドである!
『私は貴様とぬるい対話をするつもりはない。我が筋肉によって滅べ』
『何者だ!』
『やつはタイムスリップ・カネヒコ、ここでのびている三下とはレベルが違うぞ』
ヤリヒコは辛辣だ。
『気をつけて!愚かな人類!滅びちゃうよ!』
ゆにてぃーちゃんの警告!
『来い』
エーデルワイスがウチデハンマーを手招きする。
後ろからのタイムスリップ拳!予め仕掛けていたのだ!エーデルワイスは体を倒しながら回避!更にタイムスリップ拳!タイムスリップ教団は四次元的予測により敵の移動を察知し予め放っておいたタイムスリップ拳をその時間に放つことができる!
『まずいよ!』
ゆにてぃーちゃんが警告!
これは…!誘導している!タイムスリップ拳をかわしつつも追い詰められている!その先は!?ウチデハンマー!ウコンバサラめいた四足歩行のアームヘッドが迫っっている!砕け散れ!と言わんばかりの肩ハンマー!礼三郎は!?
『滅ぶー!!!』
ゆにてぃーちゃんが錯乱する!
『おっぴょっぽ!』
礼三郎はかわすのをやめた!タイムスリップ・チョコヒコとのマッスルコミュニケーションがもたらしたぶつかり稽古の如き決死のボディランゲージがウチデハンマーに炸裂!砕けるかに思えたエーデルワイスの拳はすでに再生し膨張!皮肉にも破壊と超回復におけるタイムスリップ教義を体現した!
『やっぱり先輩はすごい…』
タイムスリップ・フユヒコは邪悪な笑みを浮かべた。そうどんどん成長して、私のサダヒコ様…。『まだじゃ!』カネヒコはエーデルワイスを破壊すべくノータイム攻撃に掛かる!タイムスリップ拳は時差がある分強大な筋肉を破壊するのには力不足!
『無駄だぜ!』
エーデルワイスは逆にウチデハンマーを押し返す!吹き飛ばされたウチデハンマーはヌードルアームで衝撃吸収しつつソフトランディング!
『おのれ…どいつもこいつも…ワシを馬鹿にしおって…ワシは偉いんじゃぞ…!』
カネヒコの様子がおかしい!
『カネヒコ!』
フユヒコに答えるかのように何かが降った。
『ゴールデン・サークル』
降っているのは小銭だ。
『ワシはエライ。エライなんじゃ…。ワシはタイムスリップを極めここに到達した!』
小銭の氷柱がエーデルワイスめがけて降り注ぐ!否これは…!無差別攻撃だ!
『おい!俺達も居るんだぞ!』
『その程度で倒れるようならワシの糧になるがいいわい』
『ヤリヒコ!フンフーンヒコを連れてメスヒコのところへタイムスリップしなさい』
『フユヒコ、お前は?』
『エヘヘヘヘ、私はもっと先輩に魅せてもらいますよお』
イペタムは自身とクルージーンに降る小銭氷柱を粉砕している。
『そうか気をつけろよ』
『誰に言ってるんですかあ』
イペタムはなおも粉砕!
エーデルワイスはウチデハンマーに再び迫ろうとする!だが小銭の壁がそれを妨害!
『無限の銅貨は攻防一体!ワシの金こそワシの筋肉そのもの!ワシの地位を買った金こそがワシの力そのもの!』
壁はどんどん厚くなる!
『警告!』
そう金の力で押しつぶす気だ!
『クッ』
エーデルワイスはタイムスリップ!
だめだ!小銭もタイムスリップし襲ってくる!
『ハッハッハ!やはりワシはエライ!タイムスリップを選んで正解じゃった!数限りない世界の試行錯誤の果て正解を選んだワシが存在した!じゃがワシはここでとどまるつもりはないぞアンラッキー!』
エライは何らかのつてで教団を発見した!
おのれの能力に限界を感じたエライが存在した。エライは全領域支配皇のアンラッキーを訪ねようとしアイリーンに出会いムスタングによって偶然教団に出会った。そこからタイムスリップ超存在の存在を知りエライは!
『ワシは今究極へと至る!』
『ビッグレッド』
『は?』
エーデルワイスをタイムスリップ空間で押しつぶそうとした金が硬貨ではなく紙幣のように軽くなった。
『アイ・ノー・ユー』
薄れゆく全能感とともにエライはエーデルワイスの拳の直撃を受けた!
◎◎◎◎◎◎
『ワシは偉くなかったのかもしれん』
薄れゆく意識の中エライは彼を見下ろす礼三郎に語った。
『ワシはしぬ』
『…』
『お主のせいではないわ、小僧。ワシはな、偉くなることだけが生きがいだった。それももう終わりじゃ』
『エライさん』
『それとなエライというのは本名じゃなくてな』
だが本名を言ったエライの声はあまりにもか細く聞き取れなかった。トンドル侵略、アームヘッド最終反乱、そのたびに燃える彼の故郷に対し彼はあまりにも無力だった。それを痛感していたのは他ならぬ彼自身だったのかも知れない。エライは…タイムスリップをやめ斃れた。
『すごいですよ!先輩!』
フユヒコの嬉々とした声が静寂を破った。
『そうですよ!やればできるじゃないですか!ぶっ潰す気でやるんです!相手の事情なんて気にしちゃだめです!先輩は出来る子なんですから!』
『黙っていろシガツツイタチ』
『何を怒っているんですか?』
『わからないのか?』
『わかりませんね!』
『ならいい!』
強くなるということはシガツツイタチのように変わってしまうことなのだろうか。エライのように変わらないままやがてくる行き詰まりに斃れるのを待つのとそれはどちらが正しいのか。
『やったやった!やはり私は間違ってなんかいないんだ!』
フユヒコは礼三郎を無視し上機嫌でタイムスリップしていく。礼三郎はエライの亡骸をガッポ村へ連れてやった。
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