ゴールデン・サークル前編

私はすべてを救いすべてを浄化する

あまねくすべてにタイムスリップの祝福を

───タイムスリップ賛歌

  


私は結局なにもなすことが出来なかった。未来も見れずあらゆる可能性を持つわけでもない誰にも心からの称賛をうけることもなかった。

  


ゼニ、ガラクタ、ラッキー、ゴエン、コーバン...私は...私は...。

  


だが今の私にはタイムスリップがある!

  


小銭男が見せた黄金の円に最も近づいた!私は偉い!ー私はタイムスリップ・カネヒコ。私はこの世でもっとも偉大なる存在へと至る!



  


『ゲールゲルゲル!』

『ホーネホネホネ!』

タイムスリップ神殿左ナグルファル会議室。奇妙な笑い声が響き渡った。

『何をしてるんですか』

最後に入室したタイムスリップ・フユヒコとタイムスリップ・ヤリヒコは面食らった。

『ホホホホ、ゲルヒコくんと新しい笑い方の練習じゃよ』

『それは必要ですか』

『必要だろフユヒコ!悪の組織っぽくて最高だろうが!メカヒコもそう思うだろ?』

『ニンゲンハオロカデスネめーかめかめか』

『…タイムスリップ教団は別に悪の組織という訳ではない』

『フユヒコはそうおもっているわけだ』

ヤリヒコがからかうのをフユヒコは無視する。

『参加ラウンズは揃ったな』

  


ラウンズの黄金盤は3時と5時、7時が消灯している。タイムスリップ・ラウンズはヒコボシとミツヒコ、ヤマビコを喪っている。

『私はタイムスリップ四天王の代表とサダヒコ様の名代としてタイムスリップ会議の議長を務めさせてもらう』

残りの四天王とサダヒコはスパーリングに勤しんでいるのだ。

  


『ラウンズの穴を早急に埋めたい。候補はあるか』

『私に考えがあるぞ』

骨めいた老人コツヒコが答えた。

『ヒコボシどのの後任は難しい、じゃが5時にVを推したい』

『例のファントムか』

『そうじゃ、私はサダヒコ様にメカヒコちゃんと一緒に彼の捕獲任務を要請されている』

『メカヒコとコツヒコの連携、骨折りゾーンとくたばり儲けを使うつもりか』

『そうじゃヤリヒコどの、そうすればVと言えどなすすべもなかろう』

『やり過ぎてしまわないか』

フユヒコは懸念した。

『捕獲任務じゃが倒してしまってもええじゃろう。私はゴルゴタに良い骨を与えるのも良いなあと考えておる』

『カンガエガアマクナイデスカ?』

『さすがメカヒコちゃん!私もV相手では骨が折れると思う』

『ふむ、5時はコツヒコとメカヒコに任せよう』

コツヒコとメカヒコが際限なく話をしそうなのでフユヒコが話題を変えた。

『だが3時は難しい』

『そうじゃのう。ヒコボシどのの優しさ骨身に染みてのう』

  


すでに多くのラウンズは役目を終えており最終作戦の戦力となる力あるものならラウンズに推挙できる。だがヒコボシの会計任務は日常的に必要でありヒコボシの代わりをナツヒコに務めさせるというのは出来ない。

『ゴリヒコでよくね』

ヤリヒコが口を開いた。

  


ヒコボシの会計任務は彼が生前から育てた後進たち。タイムスリップ・ゴリヒコ、タイムスリップ・テング、タイムスリップ・カッパらが代行している。中でもゴリヒコはヒコボシの副官としてかなり高い会計能力を持っている。

  


『なるほど検討しておこう』

全能なるサダヒコとは違い、フユヒコは団員の全貌を知っている訳ではない。

『でもあと一枠は教団内から実力有るものを出すべきじゃないかな』

ゲルヒコがフユヒコに進言する。

『エクジコウ、ファクトリー、同盟。我々には敵が多い』

『だがエクジコウと同盟は潰し合う。放置せよとサダヒコ様はおっしゃられていますぞ?』

『コツヒコ、ではファクトリーはボクに任せてよ。ウズウズしてるんだ』

ゲルヒコが少年の姿をとり目を輝かせた。

『待てゲルヒコ』

  


『どうして』

ゲルヒコが不満げにフユヒコを見た。

『おまえは働きすぎだ。プライベート空間で百ナグルファル年の休暇をサダヒコ様にいただいただろう』

『うーん』

『ゲルヒコさん。お楽しみはヌルヌル空間でのお休みが終わってからで良いじゃろ。骨休めじゃ』

  


『休暇が終わったら一新されるラウンズ楽しみにしてるよ!』

『俺はもっと空席が増えててゲルヒコが驚く方に賭けるぜ』

『ヤリヒコ!』

『次に欠けるのは11時かもなあ?』

『私は6時だと思いますよ』

『…アンガイ零時カモシレマセン』

メカヒコが悲痛な顔をした。サダヒコの次の任務を知っているのだ。

  


『…メカヒコ、心配なのはわかるが不敬であるぞ』

フユヒコも不安を隠しきれていない。サダヒコは唯一の弱点を克服しに行くのだから。

『でー7時の後任だけどお前らは誰がやりたいの?』

ヤリヒコが円卓を囲む無数の団員に声を掛ける。

『良い、発言を許す』

フユヒコが促した。

  


『おまえどう』

ヤリヒコがタイムスリップ音楽家に声を掛ける。

『タイムスリップ・フンフーンヒコです。4分33秒で礼三郎とやらを倒して見せましょう』

『ほう』

ヤリヒコが目を輝かせる!

『なあラウンズ試験って何をやってたか知ってる?』

『ヤリヒコ、知っているぞ』

タイムスリップ不良が答えた。

  


『アルプス、答えてみ』

『サダヒコを倒す事だ』

『その通り』

ラウンズはタイムスリップ・サダヒコを高める為に存在する。一度でもサダヒコを上回る事がなければその価値はない。

『アルプスの言う通りだ!サダヒコを倒してみよ!』

サダヒコ即ち礼三郎を倒すことが出来た者がヤマビコの後任となる...!

  


『盛り上がってるじゃーん』

ハルヒコが金のローブの男を引き連れて入室する。

『彼にやらせてみなーい?』

『おまえ、名前は?』フユヒコが金のローブに問う。

『私はタイムスリップ・カネヒコ』

  


◎ゲルヒコに壊滅させられた超空間組織◎

ゲルヒコに壊滅させられた超空間組織である。名称不明。詳細不明。タイムパトロールではない。ゲルヒコに壊滅させられた。

  

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