タイムスリップ・トレーナー後編

『さてとりあえず乗ったな』

クルージーンがエーデルワイスに向かい合う。

『俺がおまえに教えれるのはこれだけだ』

『ヤリヒコ?巻き込み型タイムスリップなんて教えてどうする気なんですか』クルージーンがエーデルワイスの肩に手をおく。

『おいシガツツイタチ!巻き込み型タイムスリップってなんだよ』

  



ふと気づくと湖沼が広がる地帯にいた。

『タイムスリップした?』今までは放棄都市郊外にいたはずだ。

『おまえはこれが出来るようになれ』

巻き込み型タイムスリップ、すなわち自分と相手を同時にタイムスリップさせる技術だ。

『まあラウンズならみんな出来るがな』

『ヤリヒコ』

フユヒコが警戒した。

  


『なぜここに来た?』

『そりゃあおまえ、俺様の勇姿を優秀な後輩たちに見せるためだぜ』

クルージーンがソードである方向を指した。対峙する二機のアームヘッド。一方は紅白の天使、セイントメシア。対するはクルージーンと似た機体。

『俺の最後見届けてくれよお?』

  


『そういう意味ではない。貴様、正気なのか?』

『俺がまともだったことなどいまだかつてないさ』

ラウンズの言い合いをよそに礼三郎は真の強者の闘いに見いられていた。『ほらクライマックスだぜ』

緑の機体がセイントメシアの頭を斬った。一瞬倒れた天使だがまるで不死のように甦る。

『来るぜ』

  


セイントメシアがヒレーに止めを刺した。セイントメシアが最後に命を奪った人間。リズ最強の男、ヒレー・ダッカーはその歴史の最後の文にそう記録される。

『終わったな』

『ヒレーさん、あれは誰だ』

礼三郎はヒレーが庇った白いアームヘッドを見た。

めろ!先輩!』

『誰...』

クルージーンが震える!

  


ゾディアークを見たときと同じ反応だ!

『手間をかかせるヤツですね!』

イペタムがクルージーンを抑え込む!

『早くここから離れなければ!』

イペタムの肩の円が怪しく光る!

『うぐあああああああ!』

ヤリヒコが叫ぶ!クルージーンはイペタムを振り払う!

『厄介なパワーですね』

『シガツツイタチ』

  


『なんです?先輩、私は今忙しいんですよ』

『巻き込み型なんちゃらをやるんだな?』

『…そうですけど?』

『手伝うぜ』

イペタムを振り払ったクルージーンをエーデルワイスが押さえる。

『…わかりました私が合わせます』

イペタムもクルージーンを押さえる。

『良いですか?全身を拳にする感覚です』

  


全身を拳にする…。礼三郎は集中する。

『いつの時代でもいいです。ここじゃなくなればなんとかなります。先輩は余計なことを考えずタイムスリップに集中してください』

『わかったぜシガツツイタチ!』

『任せましたよ先輩』

エーデルワイスが右、イペタムが左を押さえる。三機のアームヘッドが光になり

  


『はじめてにしては上出来だな』

変形をやめたクルージーンの中からヤリヒコが礼三郎に声を掛けた。

『ここは?』

『さすがというべきですか?ここは元の時代です』

『そうそうすごいよな。鍛え甲斐がある』

『先輩、申し訳ない。スパーリングは今度にしましょう。私はこの男と筋肉対話はなしがあります』

  


『おいおい冗談だって、俺は礼三郎がちゃんと巻き込み型タイムスリップを…』

『拳で語りましょうよ?ヤリヒコ』

二人の礼三郎の知り合いはタイムスリップ消失し去っていった。

  


この時より礼三郎とラウンズの真の戦いが始まったのだ。

  

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