タイムスリップ・トレーナー前編

『おまえには失望した』

タイムスリップ・ヤリヒコは小馬鹿にしたようなポーズをとった。

『急に現れて何を言うんだぜ』

礼三郎はラウンズであるヤリヒコを警戒している。

『安心しろ、おまえじゃ俺と命のやりとりは出来ない』

そういい放ち更に続けた。

『ハルヒコごときから逃げているようではな』

『...』

  


『だから俺がおまえを鍛えてやろう』

『は?』

『フッフッフたっのしいゾーっ』

ヤリヒコは手配書めいたモノを広げた。

『おまえの修行でやっつけるラウンズだ』

筋骨粒々の男の絵だ。

『タイムスリップ・ゲルヒコだ。手強いぞ』

もう一つはジジイ。

『タイムスリップ・コツヒコだ、見た目で油断するなよ』

  


『いきなりラウンズですか?』

目の前の男もラウンズであることを礼三郎は一瞬忘れる。

『無論勝てるように俺が稽古をつけてやる。最強の俺様がだぞ』

ラウンズは程度の差こそあれ自分が最強だと思う傾向にある。

『本当はヤマビコが居れば良かったんだがな...。いいヤツだったよ』

  


『ヤリヒコ、いったい何を考えているんだ?』

『おまえの婚活のお助けをしてやりたくてな。ラウンズをたくさん倒す必要があるんだろ?』

『は?』

『さすが最強のブラッディフェザーの娘、発想のスケールが違うぜ』

ヤリヒコは嬉々として答える。

『ヒレーさん』

礼三郎はヤリヒコの真の名を呼んだ。

  


『良いのですか?』

『俺が俺に勝った男の話をするのがおかしいか?おまえにとっての最強の敵がサダヒコであるように俺にとっての最高の敵が村井幸太郎だった。それだけの話だ』

『ヒレーさん』

『くっちゃべってる場合じゃない。ラウンズは今もおまえを狙っている』

  


『話は終わりましたか?』

白いローブに白いマントのタイムスリップ者が姿を現した。

『はじめまして先輩。私はタイムスリップ騎士団長、タイムスリップ・フユヒコです。あなたのスパーリングのお相手をさせていただきます』『

フユヒコ…いやおまえは?』

礼三郎にはフユヒコの顔に見覚えがあったのだ。

  


『覚えていていただけましたか先輩。私はシガツツイタチです。ええ他のみんなも元気にタイムスリップしていますよ先輩のおかげでね。デシクツもコトリアソビも先輩に会えて良かった。トウウンも早く会いたいと言っています』

丁寧な言葉のわりにシガツツイタチの眼は侮蔑的だ。

『オテアライは?』

  


『オテアライ?誰でしたっけ?』

シガツツイタチは笑った。

『シガツツイタチ!』

『待て、喧嘩はやめろって』

殴りかかろうとした礼三郎をヒレーが制止する。

『ヤリヒコ、先輩の自由にさせて良いのですよ?先輩は私に勝てませんから』

  


『もちろん覚えてますって。先輩の救済を拒否した愚かなヤツです』

『…。おまえはシガツツイタチじゃない。紛い物だ』

『フフ、怒ってパワーアップしてみてくださいよ。仮にもサダヒコ様と同じ身体を持つ者が貧弱ではタイムスリップ教団自体の評価にも関わりますからね』

『倒していいのか?』

『是非』

  


『おいおいじゃあやろうぜ』

ヤリヒコが変身し巨大化していく。

『じゃあ早くアダマンティンに乗ってくださいね。私もイペタムに乗ります』

『俺はエーデルワイスに乗るぜ』

フユヒコはタイムスリップし現れたアームヘッドに乗り、礼三郎もエーデルワイスを呼び出し乗り込んだ。


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