タイムスリップ・ラウンズ編

プロローグ

邪神を象った頭部より、漆黒の機体は主の声を発する。その者の名はタイムスリップ・サダヒコと言った。否、そうではない。アダマンティンの主の名は、真の名はあの日に棄てられた。「礼三郎・サライ・アームストロングよ。俺はお前を尊敬しているのだ」タイムスリップ・サダヒコは静かに声を出した。

  


「お前は俺を、俺のタイムスリップ教団を相手に絶望せず力に屈せず牙を剥いた。その闘志は他人とは思えぬ」サダヒコの声色は珍しく笑いを含んでいた。アダマンティンがエーデルワイスを組伏せている圧倒的優位からの余裕による態度ではない。「俺達は皆、本来の名前を棄てている」

  


アダマンティンよりタイムスリップ・サダヒコが姿を現した。「俺の棄てた名は、・・・礼三郎・サライ・アームストロング。俺はお前だよ。礼三郎」サダヒコは小麦色の髪をなびかせ、恐るべき速度でエーデルワイスのコクピットをこじ開けた。「あまり驚いていないな」「薄々そうだと思っていたぜ」

  


礼三郎とサダヒコ、まるで鏡のような二つの顔が近い。「俺に勝つつもりか?」「俺はお前にはならないぜ」礼三郎はサダヒコの虚無を覗くかのような深淵めいた眼を睨み、言葉を返した。「もはや、俺は貴様に情をかけるつもりはない。我がラウンズを持って相手をしてやる」「最後はお前ってわけか?」

  


「そうだ。時の果てでお前を待つ。・・・再会の日にお前がお前でいられるか、楽しみにしているぞ」そう言うとサダヒコとアダマンティンは消えた・・・。

  

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