度シ難カッタノハ

 正直に言おう。俺は快感を感じていた。かつて俺を蹂躙した理不尽を己が肉体を持って打ち倒す行為と救済行為に。


「先輩!なんで?」


俺はかつての仲間を過去の厄災から救うために再びタイムスリップしていた。あの忌むべき最終反乱、それによって失われた5人の舎弟たち。彼らを救うためにともに世界に復讐するために。群青色の忌まわしいアームヘッドを拳の一撃で葬り去った俺に驚きと感謝を感じるハルヒコに俺は提案した。


「俺と共に来てくれないか?」

 ナツヒコ、アキヒコ、フユヒコらも救い出し彼らは俺についてきた。正直に言おう、俺は快感を感じていた。だから全員が俺についてくる。俺は正しいことをしているのだ。俺は正しくあらねばならんのだ。俺は彼らの先輩であらねばならなかったのだ。だがオテアライだけは俺を拒否した。


「あなたは先輩ではない」


彼女はそう言った。俺とともにタイムスリップの世界に来るつもりはないと。俺は筋肉覚醒を経た後、初めて動揺した。俺は完全なる存在になったのではないのか?かつての弱さを克服し理不尽に打ち勝てる強さを得て皆をその世界に導けるようになったのではないのか。


「どうしてだ」


俺の問いに彼女は俺の目をしばらく見てから答えた。


「あなたにもわかる時が来るはずです。あなたが先輩に戻れた時に、あなたの本当にしたいことがわかるはず」


そういって彼女はまだ戦火の煙がのぼる廃墟の影に消えていった。俺は何がしたかったのだろうか?

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