繰リ返ス復讐

 世界は繰り返している。代替宇宙と現行宇宙(教団の言葉を借りれば時限宇宙)はお互いを繰り返している。代替の神なる代替特異点の支配する代替宇宙は一度滅び、現行宇宙が始まった。現行宇宙はかつての姿をたどるかのように歴史を繰り返す。その無限の繰り返しの中で代替特異点は思ってしまった。自らの過去と未来を拡張し現行宇宙を限りなくゼロにしようと。


「あなたのアームヘッドはどれにします?」


形式代替器TYPE-A、異界神話の概念で強化されたアームヘッドだ。複数の腕を持つそれは通常の人間が扱う兵器には見えなかった。


「俺にはレイザーブロウ、否ブライトブロウがある」


一般タイムスリップ教団員に俺は答えた。俺のアームヘッドは唯一、俺の世界からついてきた。俺はこいつと共に向かう。次の周回の世界へ。


 

 トキヒコが怒って去ってしまった後もヤリヒコと俺は話を続けた。


「いいのか?」


「俺はな、おまえと同じなんだよ」


「は?」


「俺は復讐者なんだよ。セイントメシアに敗れてすべて失った。俺は英雄だった。家族を失い戦いに生きた。そしてセイントメシアに殺された。俺はお前と同じ、救いの手から溢れた落ちた者なんだ。だから自分は自分で救うしかないんだ」


こいつの言っていることは何かおかしい。こいつは代替の神とやらの被造物なんだろ。それが人間の記憶があるようなことを言うのだ?


「そうだ、俺はそう言う設定の存在だ」


ヤリヒコは自嘲した。


「堕ちた英雄の紛い物、救世主を墜とし世界を弄ぶための代替特異点のおもちゃ、それが俺様だ」


「なにをして欲しいんだ?」


「おまえ、話が早いな。そうだ、俺がしたいのは、俺がして欲しいのは復讐だ」



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