代替ノ神ノ遣ワス者
俺はトキヒコに連れられタイムスリップ空間に浮く時空戦艦ナグルファルを訪れていた。ナグルファルは拳の形をした船二隻からなり、この狂った世界にお似合いの異様だった。その左拳の中にタイムスリップ教団の玉座はあった。そこに向かう途中、またもう一人のタイムスリップ者に出会った。そいつは緑ローブでミステリアスなトキヒコと違ってややおちゃらけたイメージを俺に持たせた。それは第一印象だけだったが。
「俺はタイムスリップ・ヤリヒコだ。そうかおまえが例のトキヒコが予言したものか」
予言?俺は察知されていた?
「サダヒコを監視するのは本来トキヒコだけだった。だがイレギュラーが生まれると感じた我らが代替の神は俺を創ったのだ。そして俺は遣わされたってわけさ」
「ヤリヒコ、不要な情報はまだ与えるべきではない。我らが主人に、サダヒコに彼をあわせねばならない。それが代替の神の意思であるが故に」
代替の神、いったいなにものなのか。当時の俺に知る由はなかった。世界を灼きタイムスリップの存在と化したとしても。そして俺はかつてのサダヒコと出会った。ほんとうにつまらない男であった。その想いは最初に出会った二人も同じであったに違いない。彼らが俺を二周目へと導いたのだから。
タイムスリップの玉座にその老人は鎮座していた。タイムスリップ・サダヒコは老いた保守とつまらない征服欲の権化であり新しい才能を嫌っていた。旧い世界の王となることを望んでいた。もし彼がもっと素晴らしい人物であったなら俺はこの生まれた一周目の世界を捨てずに彼と共に歩むこともあったかもしれない。その可能性はなかったわけだが。
「ワシがサダヒコである」
かつてサダヒコであった言葉が響いた。アマナサダヒコは代替の神の依代の家系でありそれゆえ使徒を遣わされタイムスリップの王となった。そしてその地位に満足して終わってしまった存在だ。
「なぜ自らの世界を焼いた?」
老いた王の言葉には怒気が籠っていた。
「サダヒコよ。タイムスリップの覚醒は己が世界を捧げねばできませぬ。それがタイムスリップの宿業」
「トキヒコ!おぬしには聞いておらぬ!」
「腐っていたからだ」
「は?」
「腐っているものは排除されねばならぬ。俺はそう考えている」
「あれはワシの支配すべき時代の一つぞ!」
「食べ残しの世界が欲しいのか?」
「ぬぬぬぬ!無礼!」
「払うべき礼が見つからなかったもので」
「まあまあ、若くてイキってるもので多めに見てくださいよサダヒコ様」
見かねたヤリヒコが仲裁に入る。
「彼は神のお気に入りですぞ?下手に扱って痛い目を見るのも嫌でしょ?」
「ふん!まあいい!二度とワシに顔を見せるな!」
「あーあ、嫌われちゃった」
「あんがいお前たちの世界もつまらないものだな」
強い力を手に入れればなにかが変わると思っていた。俺もまだ純粋であったのだろう。
「だろ?だからもっとおもしろくしようぜ?」
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