過去

「今まで一緒にやってきたじゃないか。オレとお前は2人でひとつ。切っても切れない関係なんだよ。違うか?」

今までとは違い僕をなだめるように優しく語りかけるように話す男。


そんな男に僕は強い嫌悪感と不快感を感じた。こいつはいつもそうだ。

時折、優しさを見せ僕を言葉巧みに操ろうとする。しかし、本性は冷酷で残忍なやつだということは痛い程わかっている。


「ほら、高校の時にお前をいじめてた平岡とその取り巻き連中いたろ?あいつらからお前を守ってやったのもオレじゃないか。違うか?」


「守っただと!あんたは自分が気に入らなかったからあいつらをボコボコにしただけだ!そもそも僕は守ってくれなんてひと言も頼んでない。」

僕は怒りに身を任せて大声で怒鳴る。


「でもお陰で快適な高校生活になっただろ?それ以降、誰もお前をバカにしたりいじめたりするやつはいなくなったじゃないか。」嘲笑的な笑みを浮かべながら男は語り続ける。

「だいたい、いつもお前は甘いんだよ。バカにされてもただ、黙って耐えているだけ。だから人に舐められるんだ。違うか?」


男の言葉は僕の心に突き刺さる。

確かにそうだった。僕は幼い頃から内気で弱くて自分の力では何もできない無力な人間だ。


男はさらに続ける「あとは、そうだ!あいつの件でも助けてやったな~。

名前はたしか北川。北川舞衣。

なかなかの美人だったな。」

その名前を聞いて僕の怒りは頂点に達した。こいつのせいで彼女は。

そんな僕の怒りに気がつかないのか無視しているのかわからないが男は話すのをやめない。


「お前はあいつのことが好きなくせにいつまでたっても片思いのまま。自分から彼女に話しかけることすらできない。本当に情けない男だよ。」

あいつは、オレの自尊心を傷つける言葉を次々と投げ掛けてくる。

僕は黙ってあいつの言うことを聞いていた。

「だから、ちょっと手助けしてやったんじゃないか。オレのおかげでいい思いができただろ?」嘲るような笑みを浮かべながら淡々と話し続ける男に僕は我慢ができなくなった。

「ふざけるな!僕はあんなこと望んでなかった!」僕は大声で反抗する。

「いゃ、お前は彼女と愛し合いたいと願っていた。いくら否定しても無駄だ。オレはお前のことをよく知っているんだ。」男は冷静に話を続ける。

「なぜなら、オレはお前でもありお前はオレでもあるからだ」

たしかにその通りだ。

この男の言うことは何も間違っていない。

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