正常と狂気の狭間で

山西光一

覚悟

僕は今日、あの男をこの世から消す。消さなければならないんだ。

強い覚悟を胸に僕はその男の元に向かった。

男は暗闇の中、ひとり佇んでいた。

顔は下を向いたままだ。

まるで何かを待っているかのようだ。

僕はゆっくりと男の前に進む。

僕に気がついた男は顔を上げた。

「久しぶりだな。お前からオレに会いにくるなんて珍しいじゃないか。どういう風の吹き回しだ?」目の前の男がそう問いかけてきた。

相変わらず人を見下したような冷たい口調だ。


深呼吸をひとつして僕は言った「今日でお前との関係を終わりにする」


男は何も言わずに僕の目を見つめる。どれくらい時間がたったのだろう数秒かそれとも数分なのか。

時の流れはいつも残酷だ。


男は、不敵な笑みを浮かべたまま口を開く「本気か?」

そんな男を前に僕は少しだけ怯でしまった。

ヒビるな。ここでビビったらいつもと同じだ。何も変わらない。

今日で全てを終わりにするんだ。

そう自分に言い聞かせた僕は負けるもんかとばかりに男を睨み付ける。


お互いの視線がぶつかりあう。

しばしの静寂。

そんな静寂を打ち破るように先に口を開いたのは男だった。

「今まで一緒にやってきたじゃないか。オレとお前は2人でひとつ。切っても切れない関係なんだよ。違うか?」

今までとは違い僕をなだめるように優しく語りかけるような言い方で話す男。




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