怪物
この男の言うことは何も間違っていない。
すべての責任を取るために僕はこいつをこの世から消さなければならないんだ。
そう、僕の中にあるもうひとつの人格であるこいつを消さなければ。
こいつの罪は僕の罪でもあるのだから。
決意を固めた僕は男に告げた「お前の言う通りだ。僕はお前でお前は僕なんだ。だからこそ僕はお前を殺さなくてはならない。」
しばらくの沈黙の後、男が口を開く。
「もったいないな~オレと協力すればお前もいい思いができるのに。そう思わないか?」
「そんなこと思ったこともない!お前はこの世に生まれてきてはいけない存在だったんだ。」
「おいおい、そんな悲しいこと言うなよ。お前が望んだからオレはこの世に生まれたんだ。全てはお前が望んだことだ。」
たしかにそうだ。
僕は昔から自分が嫌いだった。
弱くて無力で何もできない自分。
誰からも愛を与えられずに育った自分。
そんな境遇や自分自身を否定し続ける人生を歩んできたせいでこんな怪物を自分の中に宿してしまったのだ。
正常と狂気の狭間で 山西光一 @shadow777
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