第19話 今年もよろしく☆
香ばしい香りで目が覚める。
パジャマのまま、匂いにつられるようにうぱまろとリビングに向かう。
「お母さん、あけましておめでとう」
「あけましておめでとう。あぴ子ちゃんのお餅、焼けたわよ。おばあちゃんはもう食べて散歩行ったわ。ゆぴ美はまだ寝てる」
網の上にぷくっと餅が膨れている。
「おいしそぅぅ!」
「熱いからさわっちゃだめ!火傷しちゃう!」
うぱまろがお餅に飛びつこうとするので、必死に止める。
お母さんは、焼いた餅を皿に乗せていく。
我が家では、正月に雑煮を食べない。
網焼き派かレンジでチン派でまず分かれ、更にきな粉などの甘い派、醤油などのしょっぱい派に分かれる。餅に対してこだわりが皆強いため、それぞれが自由に味付けして食べている。
ちなみに、私は焼いた餅に明太子ととろけるチーズとバターを乗せて海苔を巻くコテコテのものが好きだ。
「うぱまろちゃんはどう食べるの?」
「餅、食べさせたことないからなぁ」
ゆぴ美も起きてきて、レンチンした餅に唐辛子をかけまくっている。
私は、うぱまろのために、きな粉、大根おろし、お好み焼きソースにピザチーズのせ等、いろいろと作っていく。
うぱまろは目の前にたくさんのアレンジされた餅を並べて食べ比べをしている。
「どれもぉ、おいしくてぇ☆全部かなぁ!でもぉ、これは無理っ!」
欲張りなうぱまろでも、ゆぴ美の唐辛子餅は受け付けなかったらしい。
私達が食べ終えても、うぱまろはまだ餅を食べ続けている。
「いくら食べでも太らないから、本当、羨ましいわ」
幸せそうに餅を何個も回収していくうぱまろを見つめる。
「あぴ姉」
ゆぴ美が何か抱えて部屋からやってきた。
「これ、やろ」
ジャーン!という効果音が聞こえてきそうなくらいに堂々と、ポスターサイズの紙を広げる。
「愛を語って❤️推し双六☆作・ゆぴ美」
ゆぴ美にも、「ライ君」という「主人公の事務所に出入りする配達員」という、なかなか出番のない推しがいる。
「良いものを作ったね、やろう!」
双六のコマは勿論、推しのアクリルスタンド。
タマキさんのアクリルスタンドは、いつも鞄に入れて持ち運んでいるから帰省先でもいつも一緒だ。
サイコロを転がし、出た目の数だけ進むのは普通の双六と同じルール。これは、全てのマスに、推しへの「課題」が書かれている。
「あぴ姉、先でいい」
ゆぴ美からサイコロをもらい、私はそれを転がす。
止まったマスには「推しがコーヒーをどう飲みそうか場面ごとに妄想して語れ」と書いてある。
公式でタマキさんがコーヒーを飲んでるシーンなんてないから、妄想するしかない。
「タマキさんは……職場やカフェでブラックコーヒーを顔色一つ変えずにクールに飲む……豆にもかなりこだわりがあり、特定の店でしか買わない……しかしっ!実はかなり甘党なため、家では砂糖やミルクをドバドバ入れて飲むっ!豆本来の風味が無くなるくらいまで甘く……そんなタマキさんに『お砂糖は1つまでにしないとだめっ☆』なんてかわいく叱ってあげたいっっっ!」
力んで語る私に、ゆぴ美はパチパチと拍手する。
ゆぴ美も、サイコロを投げる。
止まったマスは、「推しと連絡先交換することになったシチュエーションを語れ」
ゆぴ美は考える間もなく、マシンガントークを始める。
「まず、私は主人公の事務所に就職した庶務事務員だと仮定する。ライ君が事務所に来るようになってから、私は事務所の備品を近くの大型ホームセンターに買いに行くのではなく、宅配便を駆使するようになる。そこから、春は和菓子、夏は飲み物、秋は煎餅冬はカイロとライ君が事務所に来る度に……(以下省略)」
普段は無口なゆぴ美も、推しのことになると淡々にとはいえ、かなり饒舌になる。マシンガントークといった方がいいのか。
流石、我が妹よ!
うぱまろは餅を食べ終わったようだ。
「あしょんで!」
うぱまろは、のそのそと私達のもとにやってくる。
「ほれ」
ゆぴ美は、別の紙を取り出す。
「なにこりぇ」
ピンク色の、ころんとしたフォルムが白い紙に描かれている。
横には、ぴろぴろや口、目などのパーツが置かれていた。
「福笑いね。ゆぴゆぴもうぱまろも、目を瞑って」
私は目を瞑ってパーツを一つ取り、適当な位置に置く。ゆぴ美も同じことをする。繰り返し、パーツが一つもなくなった頃、目を皆で同時に開ける。
かわいいうぱまろになるはずだが、目は寄ってしまったており、口は逆さになって怒っているみたいになってしまった。
「め、めっちゃ面白い!」
「わろた」
「かわいくないよぉ!」
私達は爆笑しているが、うぱまろはプリプリと怒っている。
「ゆぴゆぴ、あぴ子ちゃんのぉも、つくってよぉ」
「りょ」
うぱまろは、すっかりゆぴ美とも仲良くなったみたいだ。
皆様、今年もうぱまろとあぴ子をよろしくお願い致します。
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