第11話 カゲ、ヒナタに咲く
「空色無式、墜ちろ」
「桃色息吹、ぶっ飛べ!」
「赤色遊戯、切り裂け!」
アオがアカを抑え込み、モモコがそれを吹き飛ばす。連携攻撃。それを呼び出していたジャック・ザ・リッパーで切り裂くアカ。
クロは咄嗟の出来事にオハシラとムラサキから視線を逸らす事に成功する。パニックから逃れる。
「ホッホッホッ、面白くなって来たのうアカ」
「お、オハシラ、無事にムラサキ確保出来たか……って血出てるぞ!? 何ヘマした!?」
「想定外がな、カゲとヒナタの息子じゃよ、都合の良いものしかみないバカップルのな」
「あ? なんか見覚え有ると思ったらそれか!」
クロは思わず逃げようとしていた足を止める。
「カゲ、ヒナタ!?」
「どうしたクロ?」
モモコが近寄る。クロは恐怖を振り払うようにして叫ぶ。
「何でお前らが俺の親の名前を知ってる!?」
その時だった。
「やれやれ、これでは混戦が過ぎる。一旦状況を整理しよう」
タキシードの男が現れる。
「カゲ!?」
「おいおいクロ、お父さんと呼べといつも口を酸っぱくして言っているだろう」
「ふざけんなクソ親父! まともに家にも帰ってこずに! かーちゃんにも出て行かれたくせに!」
「う、それを言われると痛い……だが、ここから父親らしいことをする。お前を助けるぞクロ。影色濃淡、染めろ」
すると街灯の灯りに照らされたカゲの影が、広がっていく。全てを飲み込む。
モモコ、クロ、アオ、アカ、ムラサキ、オハシラ。
全てまとめて。
「これで状況整理が出来るだろう? アオ、どう分ける?」
「いきなり出て来て仕切るな
「りょーかい、あとは?」
「まとめて、アカを叩く!」
影が全員を完全に飲み込む。
TOKYOに残されたのはカゲ一人。
「さて上手くやれるかね、我が息子は」
公安御祓局の本拠地の廃寺。
「よりによってここに飛ばしやがったあの野郎」
「アオさんも父と知り合いなんですか!?」
「アンタが息子とまでは知らなかったよ……さあ来るよ!」
アカが髪を掻き揚げる。
「あーあ、せっかく楽しかったのに台無しだぜ。こいつを出すか赤色遊戯、嗤え」
現れた緑色の怪物。
「グレムリン……」
「TOKYOに放った100体はだいたいこいつらだった。都市機能を麻痺させるためにな」
「それはウチのミドリが阻止した」
アオが不適に笑う、アカは辟易とした様子で。
「厄介だよなぁ。緑色植樹。『生えろ』と、唱えるそれだけで霊的
そこでアオが構えを取る。臨戦態勢だ。
「お話はここまでだアカ。A級犯罪者。此処でお前を捕縛する」
アカも構えを取る、独特な下から他人を眺めるような低い構えだった。
「そろそろS級に上げてくれていいんじゃないの?」
「そんなクラスは存在しねぇ!」
アオが腕を突き出す。
「
ルーチンワークの破棄、集中力の欠如、集中力を必要とする超能力にとっては致命的な行動。しかし、それを逆手に取って。中途半端な精度の技を出す事で、速度を優先し相手を揺さぶるのだ。
しかし。
「効かねぇって!
アカも同じ手練れ、同じ技を使える。アオの空間制御をアカの呼び出したピエロ姿の
そこにモモコが割って入る、サマーソルトキックから放たれる桃色の斬撃がピエロ姿の
血飛沫が舞う、辺りを染める、赤色に。
「
ジャック・ザ・リッパーが分裂する、状況は変わらない。
かに思われた。
「略……色……っ!」
モモコの
桃色の息吹を受けたピエロ達は、混乱したかのように互いに斬り合う。
「
「姐さんこそ! 腕鈍ってんじゃないっすか!」
モモコのパンチとアカの蹴りがぶつかり合う。超能力を纏った同士の一撃。
反発しあい弾き合う。そこに生まれた隙。割って入ったのはクロだ。
「黒色一蹴……!、砕けェ!」
放たれる蹴り、ただの蹴りじゃない。都合のいい現実しか見ない目から放たれた蹴りだ。無理矢理、観測され
弱化する
蹴りが見事に
「カハッ!?」
驚きに腹を押さえるアカ、痛みは噛み潰した。しかし、インパクトが強すぎた。身体が浮いた。
その隙をアオが見逃すはずが無かった。
「空色無式、捕縛」
泡のような空間歪曲が起こる。その泡に包み込まれるアカ。出られなくなる。技を出そうにも集中力が足りない。言葉を発する事が出来ない。
詰みだ。
「終わったな、こちらアオ、全員に告ぐ、主犯の一人を押さえた。皆ご苦労だった」
全員に通信を送るアオ、通信先からは歓声が響く。
「終わったんすか……? あの化け物……ううう、オハシラとかいう奴は……?」
クロが問う。
「今頃、お前の親父が相手してるだろうさ」
「カゲが……?」
「アオさん! ムラサキは!?」
「元の座敷牢の中だ、確認は済んでる」
いつの間に、とは誰も言わなかった。
モモコは苦虫を噛み潰したような顔で。
「どうしてムラサキに人を殺させたんすか!? TOKYOに放てばそうなる事くらいアオさん分かってたでしょう!?」
「数人の命より云百万人の幸福。それが
「出来ないって知ってる癖に」
「ああ、知ってて言ってる」
「モモコ?」
クロが心配そうにモモコを覗く、モモコは俯いたまま動かない。
「お前は親父が心配じゃないのか?」
アオがクロに問う。
クロは頭を掻きながら。
「なんつーか、イマイチ実感沸かないというか……アイツ、ただの公務員だって言ってたのに」
「アハハッ! 間違ってはいねーな! 『ただの』ってとこ以外は!」
「じゃあやっぱり……」
「ああ、お前の親父は公安御祓局の局員だ。海外出張行ってた」
「海外行ってたのは知ってますけど……」
クロも俯く。アオはクロとモモコの肩を叩く。
「ま、お前らの問題は後々、なんとかする。今はアカ確保を喜ぼーぜ?」
そう言って、公安御祓局本部内へと二人を連れ込むアオ、泡の中のアカも一緒だ。浮いたまま着いて来ている。紐の付いた風船のようだ。紐を持つのはアオ。
そんなアオに連れられるクロとモモコはさしずめ犬だった。リードを引かれる犬。
紐に繋がれた三人が、
さて視点をカゲ対オハシラに移そうか。
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