第9話 暗躍☆デスゲーム


「なぁ、オハシラよぉ、いい加減、お遊びもここら辺にしねぇか?」

 真っ赤な髪の女性、その顔立ちは鋭く、目の前の者を威嚇する相貌をしていた。身体には、爪痕のような傷模様の柄が入っていた。そういう服なのだろうが、露出が多く、そういう傷がある様に見えた。

 オハシラと呼ばれた影は答える。

「そも、考えがあるのか? 〈赤熱する憤怒〉よ」

「その呼び方ダセーからやめろって!」


 手を振ってオハシラを制する赤い髪の女性。

「考えならある、 100禍魂マガタマTOKYO

 虚空に向かって叫ぶ赤色の女性。

 そう此処は公安御祓局の本拠地である廃寺だった。

 オハシラと呼ばれた影と赤の女性はそこに居た。

「ちっ、ランダムに境界チャンネルを変えて、こっちからは入れなくしてやがる。真っ先に此処を潰してやりたかったのによぉ」


「事を焦るな、アカ。全ては大願成就の為……」

「分かってるよ、じーさん、全ては

 アカと呼ばれた女性は頭を掻く。

「しかしまどっろこしいよなぁ……此処され叩ければ終わりだってのに。全国の超能力者を束ね、御祓師サイキッカーにしてる本拠地。禍魂退治の専門家集団、目の上のたんこぶ

「邪魔な存在ではある、だがその分、利用できるならば、その分の価値はある」

 オハシラなる影が言葉を発している。その存在は不定形だ。

「そーゆーもんかね、手っ取り早くぶっ潰しちまえば早い話だと思うんだけど」


 アカはそんな不定形と当たり前のように話している。

「挑発は済んだ、帰るぞ」

「ちぇ、せっかくアオとと思ったのにな」

 虚空に大穴が開く、そこを通る二人(片方は不定形だが)、どこか遠くへと旅立っていった。


 翌日。


「宣戦布告があった」

 アオ、きぃ、イエロウ、マシロ、ハクジ、モモコ、クロ、とその他大勢が大集合の公安御祓局の本部。

 主任たるアオが語り出す。

「今日、TOKYOに100体の禍魂マガタマが放出される」

 驚きが広がる会議室。驚いてないのは言い出したアオくらいだ。

「オハシラと〈赤熱する憤怒〉が攻めて来た。境界チャンネルを変えて対応したけど、直接叩いた方が早かったかも」

 モモコが立ち上がる。


「そうっすよ! ワタシ達を呼んでくれれば!」

「まだモモコは実力不足だからダーメ」

 にべもないアオに思わず座り込むモモコ。

「とにかく、私達はその100体の禍魂マガタマをなんとかしなきゃならない、そのための全員招集」

 ざわつく会議室。戦闘班以外の者も集められている。

「戦闘能力の無いものは、民間人の避難に当たって欲しい」

 それを見越してアオが指示を出す。


『了解です!』

 一斉に外へ出る非戦闘班。そう事は今日始まるのだ。善は急げ。

「さて、戦闘能力があるものは……だけど」

 そこでモモコが手を挙げる。

「はいはーい! 100体の禍魂マガタマを退治すればいいんすよね!?」

「急ぐなモモコ、アオさんの話を待て」

 片手でモモコの頭を押さえ込み言葉を遮るハクジ。


「まあ、言ってしまえばモモコの言う通りなんだが、相手は100体だ。事はそう簡単じゃない」

 きぃが下唇を噛む。

「あたしで10体ってところかな……相性によってはもっと減る」

 マシロが挙手する。

「はいはーい! ってモモコちゃんの真似みたい……でもでもアタシとハクジなら20体は行けるよー!」


 アオが指折り数える、指一本につき10体。

「これで30体、残り70体」

 モモコがハクジの手を払いのけて叫んだ。

「ワタシ達なら! クロとなら! 何体だって倒せます!」

 アオはそれを無視して。

「それは論外として、50残り20体。こっちも奥の手を出す」


「おいおい、アオさんまさか」

「え、なになに、どしたのハクジ」

「ソレはやばいっすよアオさん……」

「どうした、モモコ?」

 やっとクロが言葉を発した。


 会議室が凍り付いた。時が止まったかに思われた。

「あの出すってんですか!? アオさん!」

 ハクジが叫び、時は動き出す。

「半魂半人の怪物。そいつを檻から出す意味を分かっているの?」

 きぃがアオに問いかける。

「まあ、十中八九、それがアカ達の狙いだろうね、でも100体の禍魂マガタマ相手だ。TOKYOの幸運が吸い尽くされない内に倒すには、これしかない」


 アオが髪をかき上げる。

「というか、反対意見を聞き入れるつもりもない」

「決定事項?」

 マシロがのほほんとした様子で聞く、事態の重要さを分かっていないらしい。

「そういう事だ、マシロ、モモコも分かったな」

 桃色の少女は俯く。

「モモコ?」

 クロは顔を覗き込む。

「あいつは、友達なんだ……!」


 会議室の外に飛び出すモモコ。TOKYOへと駆け出す。

「あ、おい待て!」

 クロも後を追う。

「なになに、どゆこと?」

 マシロは展開に着いて行けてないようだ。

「あの馬鹿……」

 そういいながら微笑するアオ。


 残りのメンバーもその場を後にした。


 アカが摩天楼の屋上に立っている。

「赤色遊戯、始めろ」

 真っ赤に染まりゆく空、落ちてくる雨、雨、雨。

 それは血涙のように赤い。

 その一粒一粒が禍魂マガタマに成っていく。


「ほら! こうして超能力者が禍魂マガタマを生み出す! これは矛盾か!? いいや、違うね! これこそが道理だ! 超能力者も等しく人外である証だ! 聞いてるんだろアオ! お前も来いよ! 

 魑魅魍魎が跋扈する、まさしく百鬼夜行。

 TOKYOに100体の禍魂マガタマが放たれた。


「出ろ、ムラサキ」

 地下牢から表へと引きずり出される褐色肌の少女。髪の毛の色は黒。

 白いワンピースに、手枷足枷を付けている。

「刃向かったら、分かるな?」

 アオはいつもと言葉遣いが違う。

 ムラサキと呼ばれた少女は「ワン!」と吠えた。


 オハシラと呼ばれる影が嗤う。

「カッカッカッ! 出て来たか猛獣! 

 ムラサキもTOKYOへと躍り出る。

 叫ぶ。

「紫色混濁、爆ぜろ!」

 出会い頭に一匹の禍魂マガタマと、を破裂させた。


 当たりに悲鳴が広がる、頭からの起こした惨劇だとは思われてないらしいが。

 ムラサキは駆ける。縦横無尽に、敵味方の区別なく、全てを狩るために。


「爆ぜろ、爆ぜろ、爆ぜろ!」

 舞う血飛沫、禍魂マガタマのモノか人間のモノかも分からない。

 ムラサキには区別出来ない。

 血飛沫の数が20を超えた当たりで。

「もう止めろムラサキ!」

 モモコがムラサキの前へと出て行った。

「モ、モモ、コ?」


 ムラサキの開いていた瞳孔が縮まる。正気に戻ったような顔。

「そうだよ、昔よく遊んだろ?」

 そうして手を差し出す。しかしそこに。

「おっとそこまでだぜ、モモコちゃん?」

 アカが割って入った。

「赤色遊戯――」

「モモコに手を出すな!」


 今度はクロが割って入って来たのだった。

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