第77話 罠を仕掛ける

「おい、どこに行く」


 家の前で見張っていた役人が、俺に声をかけた。


「裁判が終わるまでは俺は罪人じゃない。どこに行くのも自由だ」

「逃げるつもりだな。そうはいかない」

「虫がたかったぞ」


 てんとう虫が役人に止まり電撃を放つ。

 こんな事もあるかと用意しておいて良かった。


 他の仲間はいないみたいだ。

 俺が逃亡するとは考えていなかったらしい。


 そうだよな。

 告発した奴らは俺が無罪だと知っている。

 病人のマリーもいるし、普通なら逃げない。


 役人が目を覚ます前に街の外に出よう。

 その前に商業ギルドだ。


「高級な干し肉と酒を買いたいんだけど」


 商業ギルドの受付で俺はそう言った。


「なに、子供なのに宴会でもするの」

「僕の父さんは盗賊やられたんだ」


 そうなんだよな。

 糞親父は盗賊にやられたというか組んでいる。

 盗賊の魅力にやられたって事にしておくか。


「それは可哀そうだけど、それと宴会がどうつながるの」

「干し肉と酒に毒を仕込むんだ。奴らがそれを口にすれば復讐が出来る」

「面白いわね。でも上手くいくかしら。毒は用心していると思うわ」

「絶対ばれないと思う。時間が経ってから効くタイプだから」


「いいわ、手配してあげる。そうなると馬車と馬と運び手もいるわね」

「お金はあるから、頼むよ」


 俺は買った干し肉と酒にある物を仕込んだ。


「今日の朝一番で出発してほしい」


 運び屋を前に俺はそう言った。


「はいよ。高い金もらったからには頑張って届けるぜ」

「盗賊が出たら逃げていいよ。その為の予備の馬も用意した」

「変わった依頼だな。ははーん、襲わせてから逆襲しようってのか」

「そうだ、追跡者がいる」


「じゃあ、襲われるまで隣町と往復を繰り返した方がいいな」

「そうだね。頼むよ」

「おし、頼まれたぜ」


 命がけの仕事なので依頼金は弾んだ。

 これで街での準備は終わりだ。


 街の外に出る。

 追跡者を作らないとな。

 モモンガ君、頼んだぞ。


 ポリゴンで作ったモモンガを多数、街道に忍ばせた。

 モモンガなら木に登っても目立たない。

 森での活動には適している。

 見かけても仕留めて食おうともしないはずだ。


 後は待つだけだ。

 街道で待っていたら運び屋が馬を走らせている。

 上手くいったようだ。

 後はあの干し肉と酒を盗賊達が飲食するかどうかだ。


「イオ、モモンガの匂いを追って」


 イオがモモンガの匂いを追っていく。

 盗賊のアジトはすぐに見つかった。

 だが、モモンガの匂いは続いているらしい。


 ここが終点ではないようだ。

 アジトのツリーハウスを観察するが、誰も出て来ない。

 仕方ないので鷹を偵察に飛ばす。


 帰って来た鷹に確認すると盗賊のアジトには誰もいないらしい。

 気づかれたか。

 仕掛けも見破られたと思っておいた方がいいな。

 モモンガの後を追ったら待ち構えているに違いない。


 どうするよ。

 匂いの跡を追うか。

 それともライオン達だけを突入させるか。

 偵察だけに留めるか。


 選択肢はあるが、どれもぱっとしない。

 考えもなしに突入するのは無謀というしかない。

 ライオン達だけで行かせるのは撃破してくれと言わんばかりだ。

 偵察はばれていた場合は無意味というか、確実に斥候がやられるだろう。


 考えろ。

 そうだ、モグラだ。

 モグラを斥候に出そう。


 これなら時間は掛かるが、情報を持ち帰る可能性は高くなる。

 モグラを斥候として放った。


 待つ事一時間。

 なんと千鳥足で盗賊がアジトに帰ってきた。

 あれっ、なんという間抜け。

 こいつらも間抜けだが、俺も考えすぎか。


 アジトを空にしていたのはみんなで集まって宴会をしていたに違いない。

 でも一応、モグラは待とう。


 モグラが帰ってきた。


「頭目のアジトは見つけたか?」


 頷くモグラ。

 やった遂に頭目のアジトを見つけた。

 だが罠があるとも限らない。


「罠はあるか?」


 頷くモグラ。

 そうか、罠があるか。

 それは予想していた。


「道具を使った罠か?」


 首を振るモグラ。


「伏兵か?」


 頷くモグラ。

 伏兵がいるらしい。

 力ずくで突破するしかないのか。

 ライオン軍団でなんとかなるかな。

 ライオン1000頭に鎧の戦士を100体でどうだ。

 これで駄目ならどうしようもない。

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