第76話 決意する

「情報収集の依頼を出したい」


 俺は冒険者ギルドの受付でそう切り出した。


「出すのは良いけれど、受けてくれる冒険者は居ないと思うわ」

「なぜだ」

「ディザ君、評判、悪いわよ」

「資格停止されたからか」

「違うわ。噂が広まっているみたい。なんでもマリーを力ずくで物にしたとか。スキルの力は無料なのに暴利をむさぼっているとか。クランマスターのえこひいきでクランに加入したとか。兄弟を殺したとか」


 マリーの事は事実無根だとしても、他のはみんな当たってる。

 敵は俺をよく調べたらしい。

 これはどうしようもないな。


「出直してくる」

「そうした方が良いわ」


 俺が冒険者ギルドを出ると手招きする三人がいる。

 ええと確かこいつらはモンド、二コライ、レッドの三人だ。

 浮浪児だったのを俺が装備と支度金を出してやったんだった。

 何の用だろう。


「お前の悪い噂を流している冒険者がいる。最近になって、他所の街からきた冒険者で、胡散臭い奴だ」

「手出しするなよ」

「するもんか。実力はわきまえているぜ」

「そうだ。馬鹿じゃない」

「俺達三人じゃ勝てない」


「分かっているなら良いよ」

「その胡散臭い奴はエルヴって言うんだが、こいつ盗賊と話をしてた」

「後をつけたのか」


「おう、ばっちりだぜ。盗賊のアジトも突きとめて冒険者ギルドに情報を売った」

「お前らなかなかやるな」

「エルヴを告発したいけど、俺達はまだほとんど子供だろ。話を聞いてくれるかどうか」

「クラン・ヴァルドにイラスさんという人がいる。口は悪いが力になってくれるはずだ」


「俺達はお前を信じているぜ。元浮浪児のよしみだ」

「ありがとよ」


 俺は嬉しくなった。


「この件が片付いたら、良い剣を作ってやる。鎧もだ」

「おう、待ってるぜ」


 俺はマリーが心配で足早に家に戻った。

 マリーはベッドで高熱にうなされていた。

 冷却シートの魔力が切れているな。

 充填しないと。


 その時、玄関の方から声がした。

 出ると役人から裁判は明日だと言われた。

 そうか、明日全てが決まるのか。


 マリーの下に戻ると、俺は冷却シートに魔力を充填した。

 マリーが目を開ける。


「人が来たよね。なんて言ってたの」

「明日、裁判だって」

「そう、勝てそう」

「分からない。相手の頭目を捕まえる事が出来れば解決なんだけど」


「あのね。私の事は良いから、盗賊の頭目を捕まえに行って」

「そんな事できないよ」

「私の看病の為に負けるのは嫌。よく考えて」


 マリーは目を閉じた。

 時間が経って花の香りが薄れているな。

 花のポリゴンを消して新しいのを作る。

 やる事が無くなった。


「そうだ。ステータス」


――――――――――――――

名前:ディザ LV30


魔力:62

筋力:52

防御:45

知力:61

器用:50

瞬発:55


スキル:ポリゴン LV8

――――――――――――――


 スキルレベルが上がっている。


――――――――――――――

ポリゴン LV8

 1000000000ポリゴンまでのモデリングをする事が出来る。


 サブスキル:

  モデリング

  具現化

  アニメーション

  ショップ

  作成依頼

 プラグイン:

  AI

  魔法テクスチャー

  匂いテクスチャー

  味テクスチャー

――――――――――――――



――――――――――――――

味テクスチャー

 味を貼り付ける事が出来る。

 味は時間が経つと薄れる。

――――――――――――――


 味なんてポリゴンに付けられても問題の解決にはならない。

 飴みたいな商品はいくらでも開発できるが、そんな気分じゃない。

 マリーの看病をしながら夜を明かす。

 いつの間にか眠ってしまったらしい。


「なに、ぼやぼやしているの。さっさと盗賊の頭目を捕まえに行きなさい。でないと一生恨むから」


 マリーが苦しそうにあえぎながらそう言った。

 マリーを一人置いていけるかよ。


「じれったいね」

「クランマスター」

「声を掛けたんだが、返事がないので上がらせてもらったよ。マリーの面倒は私が見る。なあに鑑定スキルを使えば医者より診断の腕は確かさ。薬も一通り持って来たよ。投薬タイミングも鑑定スキルでばっちりだ。さあ、早く行きな」

「すまない、マリー、クランマスター」


 俺は家の外へ決戦の場に赴くべく踏み出した。

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