第74話 陰謀

 夜中に鐘が鳴らされる。

 なんだ、また盗賊か。

 家から出るとパックウルフの大群がいた。

 イオ達、4頭のライオンが食い殺して奮戦している。


「スタンピードだ」


 群れには群れで対抗だ。


「【具現化】雌ライオン1000頭」


 雌ライオン達がパックウルフを食い殺して回る。

 程なくしてパックウルフは居なくなった。


 さあ、寝直すぞ。

 雌ライオン達を消してベッドに滑り込む。

 マリーが抱きついてきた。

 夜風に当たっていたのでマリーが暖かく感じる。

 お日様のようだ。

 すぐに眠りについて、朝になって目が覚めた。


「これは少ないですが、お納め下さい」


 村長が金の入った袋を差し出した。

 昨日のスタンピード解決のお礼だろう。


 ありがたく頂いておく。


「この者は村人なのですが、村長に頼まれまして。街まで乗せて行っては貰えないでしょうか」


 リンジムがそう言って貧相な青年を紹介した。


「いいよ、まだ席は空いているから」


 車は四人乗りだからな。

 四人で街まで帰る。

 道中何事もなく無事に着いた。


 俺達は冒険者ギルドに村救援の報告に行く事にした。

 なんでか分からないが、リンジムと村の青年もついてくる。

 ギルドに用事かな。


 救援依頼の報告をしていると、リンジムが声を張り上げた。


「Sランクの万物生成のディザを告発する。これが証拠の盗賊との契約書だ」


 なにっ、俺はそんな物にサインした覚えはないぞ。

 リンジムが手に持った契約書を見る。

 確かに俺のサインだ。

 盗賊に情報を渡す事と、盗賊に扮して商人を襲った場合に、盗品を売る売買の事が書いてある。

 嵌められた。


「それに昨日、魔獣寄せの香で、村に疑似スタンピードを起こしました。俺が証人です。マッチポンプで謝礼金を巻き上げるそのやり口が許せない」


 一緒についてきた村の青年がそう付け加えた。

 告発は受理され、裁判をすること事に。


 クランハウスに行くとクランマスターが。


「子供だから仕方ないさね。嵌められたんだろうね。だが、けじめはつけないといけない。クランハウスの出入り禁止だ。謹慎してな」

「分かったよ。裁判が終わるまでは大人しくしてる」


 俺を見損なっただとか。

 若い奴が力を持つと悪の道に転がりやすいだとか。

 いろいろな話を冒険者がしているのが耳に入った。


 信用を失ったな。

 信じてくれる人もいるだろうが、今回はちょっと打つ手がないかもな。

 逃げるように家に帰った。


「私はディザの事を信じてるよ。いつでも味方だよ」


 そう言ってマリーが俺を慰める。


「ありがと」

「こういう時こそ、ぱーっとしましょ。美味しい物を食べれば気が晴れるわよ」

「そうだな」


 俺達は馴染みのレストランに行った。


「お客さん、あいにくと今日は満席でございます。申し訳ありません」

「なによ。空席があるじゃない」

「マリー、よそう。帰ろう」


 家で何か食べようと商店で食材を買おうとした。


「悪いな。あんたに売る商品はない」

「そんな」

「マリー、帰ろう。収納バッグに保存食なら蓄えてある」


「ディザ、バナナにお使いを頼みましょ。バナナなら私達との関係を知らない人もいるわ」

「そうだな。そうしよう」


 バナナがお使いから帰ってきた。

 メモが食材に挟んである。


 『負けるなよ。おおっぴらに商品は売ってやれないが、頑張れ』と書いてある。

 涙が出た。


「ほら、私達の事を信じてくれている人もいるわ」

「そうだな頑張らないと」


 まず、盗賊との契約書だが、あれは護衛の契約書の時に嵌められたんだ。

 どういう仕組みかは分からないが、あれは俺のサインだろう。

 これは覆らない。

 疑似スタンピードは村人の証言だけだ。

 こちらは問題ないだろう。


 俺の無実を晴らすには盗賊の頭目を捕まえるしかない。

 リンジムは盗賊と契約を交わしているに違いない。

 頭目のアジトには保管してあるだろう。

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