第73話 村を救援

 村に到着した。

 イオ、カリスト、ガニメデ、エウロパの四頭が盗賊に向かい火を吹き始める。

 この攻撃は魔獣あたりだといまいちなんだけどな。

 人相手の範囲攻撃だと効果が絶大だ。


 盗賊は逃げ始めた。

 冒険者に貸していた雌ライオン達が盗賊に突撃する。

 冒険者達も防衛線にしてた柵の囲いから出て、盗賊を討伐しはじめた。


 頭目が居ないな。


「頭目はどうしたんだ」


 俺は捕虜になった盗賊に尋ねた。


「頭は悪魔の使いの祟りを恐れて、引きこもっちまった」

「場所は?」

「誰にも言わないんでさぁ」


 用心深い奴だな。

 聞きたい事は聞いた。


 冒険者達が盗賊のアジトを強襲すると言うのでついて行く事にした。

 アジトはツリーハウスだった。


 問題は人質がいるという事だ。

 人間の盾にしている。


 そうだ良い事を考え付いた。

 コウモリのモデルを出して、青い炎のパーティクルを貼る。

 そして、魔法テクスチャーの氷を貼る。

 冷たいコウモリの完成だ。


 冒険者達にも手伝ってもらい魔力を充填する。

 そして、青く燃え盛る冷たいコウモリ達が盗賊達に飛んで行く。


「何だ? このコウモリは?」

「うひゃ、冷たい」

「悪魔の使いがやってきたんだ」

「俺は投降して罪を償うぞ」


 コウモリにはAIが入っているので執拗に盗賊達を狙う。

 少し冷たいだけのコウモリに、盗賊の戦意は完全に喪失した。

 半分の盗賊が投稿して、残りも諦めた。


 人質に死人が出なくて良かった。


「これはこれは、万物生成のディザ様ですね。商人のリンジムでございます」


 捕虜の一人だったのだろう。

 商人がもみ手しながら現れた。

 俺の通り名がいつの間にか決まっている。

 万物生成とは言い得て妙だ。


「奪われた荷を取り返したいのなら、ギルドに言ってくれ。規定では商品の価値の二割払えば返してくれるはずだ」

「いえいえ、そういうつもりではございません」

「じゃ、どういうつもり」

「街までの護衛を依頼したいのです」

「マリー、どうする」

「連れて行ってあげたら。どうせ帰り道でしょう」


 そうだな。


「では契約書にサインを」

「商人らしいな。ギルドを通してない依頼だが、契約書があれば確かに安心だな」


 契約書に目を通しサインをする。


「供の者が帰り道の途中の村に滞在している予定です。拾っていきたいのですが」

「それくらいなら」


 リンジムを車に乗せ帰路を急ぐ。

 村に着く頃には陽はかなり傾いていた。


「宿泊費も手前共が出しますので、村に泊まりませんか」


 リンジムがそう提案してきた。

 仕方ないか。

 今夜はここに泊まろう。


 村長宅に行くとリンジムは供の一行と合流できた。

 俺とマリーは一軒の空き家を借りて泊まる事にする。


 風呂に入りたい。

 ポリゴンで浴槽を作る。

 水魔法と火魔法のテクスチャーを貼る。

 水で満たしてから、火で温める。


 うん、良い湯加減だ。

 はぁー、一仕事終えて浸かる湯は最高だな。

 良く冷えたビールが欲しいところだ。

 次点でコーヒー牛乳だ。

 かき氷なんてのもいいな。


 作成依頼しちまうか。

 手回しのかき氷器。


「【作成依頼】手回しかき氷器」

「作成料として金貨17枚を頂きます」

「やってくれ」

「作成完了」


 ペンギンの形のかき氷器が出来た。

 やべっ、もうのぼせそうだ。


 マリーが浴槽に飛び込んできた。


「もう、お風呂入るのなら言ってよ。背中流してあげるから」

「もう出るよ。かき氷、かき氷と」

「なんなの。カキゴオリって」

「とっても美味いものさ」

「もう、食い気優先なんだから」


 風呂から出て製氷皿をポリゴンで作る。

 氷魔法テクスチャーを製氷皿に貼って、氷を作る。

 ひねって氷を取り出すアニメーションも作ってある。

 これはヒット作の予感。

 売れるぞ。


 かき氷器を回して、うきうきしながら皿でかき氷を受け止めた。


 果物のジュースを掛けて完成だ。

 さくっとスプーンですくって食べる。

 キーンと頭にきた。

 これだよ、これっ。

 これがかき氷の醍醐味だ。


 マリーも風呂から出て来たのでかき氷を作ってやる。


「おいしいね」

「風呂上りに冷たい物ってなんで美味しいんだろう。暑い所に冷たいっていうギャップがいいのかな」

「メリハリは大事だよね。それに味かな。氷だけだと冷たいだけで、味気ないんじゃないのかな」


 味は大事だよな。

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