第７２話 コウモリ作戦失敗
俺は情報を求めに冒険者ギルドにやって来た。
「皆さん、村の防衛に力をお貸し下さい」
「よし、行ってやるぜ。これが縁で村娘と良い仲になったりしてな。がはははっ」
「俺も行くぜ。盗賊の好き勝手にはさせないぞ」
「俺も」
「俺も」
掲示板を見ると一番上の目立つ所にでかでかと村防衛依頼と書いた紙が貼ってある。
依頼主は領主か。
なるほどね。
身代金事件で懲りたのだろう。
盗賊に渡すお金は惜しいが、防衛の為のお金は出せるとは、なかなか出来た領主のようだ。
身代金事件の時に思ったが。
身代金をはいそうですかなんて渡す領主は、家を潰すだろう。
かといって村人を見殺しにするのも駄目だ。
そこでその時は冒険者に依頼した。
普通の考えのように思えるがどちらも駄目な時に考えたとしては評価できる。
今回の決断が裏目に出ない事を祈りたい。
「ねぇ、お姉さん。盗賊の出現情報はどうなっているの」
「今の所は商人が油断してるから、それを襲っているらしいわ」
「一旦、退いたから、確かに油断してるかも」
「今はまともな商人なら、馬車は使ってないわ。ドラゴン便を値下げしないといけないかしら」
「俺は構わないよ」
「ありがとう。上の者に伝えておくわ」
村の防衛にポリゴンで作ったライオンを貸し出そうかな。
ドラゴンは強いけど、小回りが利かない上に火が吐けない。
魔法テクスチャーで作れば別だけど、魔力が要る。
それも大量にだ。
ライオンぐらいがちょうどいい。
「ライオンを村の防衛の為に格安で貸し出そうか」
「それは助かるわ。とにかく人手が足りないのよ」
「じゃあ、冒険者に権限を渡すから、村の防衛に行く人がいたら言って」
俺は一人の冒険者に付き一頭の雌ライオンを付けてやった。
さてと、頭目を尾行する為の策を考えないと。
ネズミは駄目だな。
木の葉などでガサガサという音を立てたら気づかれる。
ネズミの親戚と言う事でコウモリはどうだろうか。
黒いし、割合と静かだ。
森にいても不思議ではない。
よし、コウモリを放とう。
俺は街道の所々にコウモリを配置した。
数日経ったが、頭目のアジトを突き止めたと帰ってきたコウモリはいない。
街道にコウモリの数をチェックしに行った。
数が減っている。
という事は後をつけたがやられたって事だな。
「何、考えているの？」
「何でコウモリの尾行がばれたのかなって、考えてた」
「何だ、そんな事」
「マリーには理由が分かるの」
「ええ、ここらの人間はコウモリを悪魔の使いって呼ぶわ。後をついてきたら。いいえ、見かけたら殺すわね」
「なんですと」
「なんで悪魔の使いなのかも知っているわ。吸血するからよ」
おお、まさかの吸血コウモリ。
それは殺すな。
蚊が飛んでたら、殺すものな。
後をついてくるイコール、血を吸うターゲットだな。
うん、殺す。
吸血しない種類なんだよと言っても仕方ない。
この辺りには吸血コウモリしかいないとすれば、説得力の欠片もない。
「後をついてきても殺さない動物って何だと思う」
「スカンクね」
「それだと全速力で逃げるだろう。そして、追って来たら、相打ち覚悟で殺すと思う」
うーん、上手くいかない。
ウサギなんかに後をつけさせたら、盗賊が晩飯だと思って襲い掛かってくるな。
大概の物は食っちまうだろうから、動物は難しいな。
鳥だって下手したら、晩飯だと思われる。
晩飯だと思って投げナイフを投げて光になって消えたら、俺の事を宣伝しているような物だ。
コウモリはよくそう思われなかったな。
「何、考えているの？」
「いや、コウモリが倒されて光になったらどう思う」
「本物の悪魔の使いだと思う」
「えっ、そんな風に思うのか」
カルチャーギャップだな。
まあ、俺が後をつけようとしていると思われなきゃ何でも良い。
「盗賊は極悪人だから、悪魔の使いが目をつけても不思議はないわ」
「なるほどね」
尾行させる動物はあとでゆっくり考えよう。
クランハウスに行くと緊急要請の通知がされる。
内容は村が盗賊に襲われているだった。
直接対決なら手っ取り早い。
頭目が居るといいのだが。
俺達は村に向かって車を飛ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます