第59話 アジトに踏み込む

 カルメの案内でアジトに急ぐ。

 アジトは村から離れた炭焼き小屋だった。


 見張りを透明な矢でサクッと倒す。

 この透明な矢はポリゴン製だ。

 ライフルでの射撃は外しそうだったので、クランの人でもっとも弓が上手い人にやってもらった。


 開ける時に合言葉とかあるんだろうな。

 そう言えばネズミはどこから出て来たんだ。

 カルメと問答で使われていない煙突から脱出したと判明した。


「【具現化】ネズミ。煙突から中に入り扉を開けろ。重くて無理な時は帰って来い」


 ネズミを放すと壁をよじ登り煙突から中に入っていった。

 しばらくして扉を開くように力を入れると扉は軋む事無く開いた。

 やったでかしたぞ。

 ネズミ大活躍だな。


 扉の構造を見ると3センチほどの留め金があるだけだった。


「お前達は何だ」


 扉が開いたのに気づいて椅子に座った男が立ち上がる。


「死ね」


 俺はライフルで男を仕留めた。

 ポリゴンのライフルは発射音がしないのが良い。

 隠密行動にはぴったりだ。

 小屋の中は狭い。

 どこかに秘密の入口があるのだろう。


 シャツのポケットに入っているカルメのナビで入口を探す。

 ベットの上に登った時に反応があった。


「ベットを静かにどかして」


 ベットをどかすと床に扉があり、地下への入口が現れた。

 俺が地下に入って行こうとしたら止められた。

 こいつはえーと、そうだ毒牙のイラスだ。


「お前、死相が出ているぞ」

「だから止めたのか」

「ああ、そうだ。イラス様に感謝するんだな」


 駆け込みたい心を抑えて出来る事をする。

 狭い所の戦闘用に何か作るべきだな。

 相手は取り回しの良い短剣やボウガンでくる可能性がある。

 ここは意表をついてさすまただな。

 少なくとも短剣には勝てる。

 ボウガンもさすまたで突かれたらイチコロだろう。



「【具現化】さすまた」


 強敵が現れたら困るな。


「【具現化】スタンガン」


 握りの先に電撃の魔法テクスチャーを貼ったスタンガンを作った。

 久しぶりに自分でモデリングした。

 さすまたとボウガンとスタンガンを持ったクランメンバーが地下へ入って行く。

 地下から怒号と悲鳴が聞こえる。


「死相が消えたから、入ってよし」

「サンキューな。焦って突っ込んだら、死んでたかもな」


 よし、俺も地下に入ろう。

 ランタンで行く手を照らし、カルメのナビで地下の迷路を行く。


 そして、分厚い扉に出くわした。

 ここか。

 ここにさらわれた子供がいるんだな。

 よし扉を破ろう。


「【作成依頼】チェーンソー」

「作成料として金貨15枚を頂きます」

「早くしてくれ」

「作成完了」


 チェーンソーを作動させて分厚い扉に突き入れた。

 そして、両断するように動かす。


 分厚い扉は三角形のパーツになって地に落ちた。

 中を覗くと、短剣を両手に持った男が佇んでいる。

 その奥には鉄格子があって牢屋になっていた。

 短剣男はかなりやりそうだ。

 まともに勝負なんてしてやらんもんね。


「【具現化】サンダーアロー5本。飛べ」


 サンダーアローが男に向かって飛んで行く。

 男はサンダーアローを短剣で払おうとして感電して短剣を取り落とした。

 後続のサンダーアローが男に突き刺さる。


「ぐがががが」

「死んどけよ」


 俺は接近してチェーンソーを首に刺し入れた。

 血が飛び散り男は死んだ。


 牢にマリーの姿を見て、男の腰から急いで鍵を取った。


「遅くなった。今鍵を開けるから」

「絶対来るって信じてた」


 鍵が開きマリーと俺は抱き合った。


「隷属させられたわ。この部屋から出ないように命令されているの」

「隷属の解除方法は?」

「スキル持ちを殺すしかないわね」

「スキル持ちの特徴は?」

「腕に髑髏の入れ墨をした男よ」

「よし、待ってろ。すぐに解除してやる。【具現化】ネズミ16匹。腕に髑髏の入れ墨をした男を探せ」


 ネズミが帰ってくるまで何をしよう。


「そうだ。人さらいの目的は。何か言ってたか?」

「奴隷として売り払うつもりだったみたい」

「何で裕福な家の子を狙ったのかな」

「しつけをする手間を省く為らしいわ」


 なるほどね。

 浮浪者をさらったんじゃ高く売れないって訳か。


 人数を確認して聴取をしているうちに、ネズミが一匹帰って来た。


「見つけたか」


 頷くネズミ。


「よし、案内しろ」


 髑髏の男を始末しに行く途中で出くわしたクランメンバーに牢屋の警護を頼んだ。

 ネズミを案内につけたから、牢屋を奪還されるなんて間抜けな事にはならないだろう。

 いよいよ大詰めだな。

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