第44話 金を稼ぐ

「あー、良く寝た」

「今日はお寝坊はしないの?」

「そうなんだ。くっくっく、シェードの野郎どう考えているかな。やさが突き止められなくてやさぐれている」

「ダジャレが出るようなら、安心だわ」


 襲撃の心配がないってのは実に良い。

 さてと、目下の懸念は現金が少し心許ないって事だ。

 俺は商業ギルドを訪ねた。


「商品の配送の手配をお願いします」

「偉いわね坊や。お使いができて」

「まあね」


 ルコスの街の魔道具店を受け取り人にして振動包丁やコンロや水が出る蛇口を送った。

 これで魔道具店が売りさばいてくれて、お金を送ってくれるはずだ。


 次は新商品開発だ。


「さて、何を作ろう」

「マッサージ器は売らないの?」

「ああ、あれね。あれはポリゴン数も少ないし、いいね。売ろう。次に魔道具店に商品を送る時に一緒に送ろう。他に無い」

「火炎放射器は強いと思うな」

「うん、武器としては中々だな。でもポリゴン数が多いから、大量生産に向かない」

「小っちゃいのを作れば良いんじゃない」

「縮小してもポリゴン数は変わらないんだ。でも、待てよ。ポリゴン数を減らす方向で開発するのはありかもな」


 まずは本体だ。

 究極はカードだな。

 トランプほどのカードを作る。


 その中に立方体をぺちゃんこにして幾つも埋め込む。

 そして、ふくらましながら、前方に伸ばすアニメーションを設定。

 立方体には炎のパーティクルを付けて。

 魔法テクスチャーを貼ろう。


 造詣が火炎放射に見えないから火力はお察しだ。

 試してみてないが、ゴブリンぐらいなら撃退できるだろう。


「【具現化】魔法カード。マリー、使ってみて」

「うん。炎伸びろ。かくかくした炎だね」


 炎もどきがマリーが手にしたカードから伸びる。


「思いっきりポリゴン数を削った。実戦と行こう」


 森に行ってゴブリンと対峙した。

 ゴブリンは子供二人だと思って舐め切っている。

 今にも飛び掛かって来そうだ。


「伸びろ」

「グギャー」


 カードから炎が出て顔を炙られゴブリンが逃げていく。

 流石に殺傷能力はないか。

 電撃でスタンガンというのも考えた。

 しかし、犯罪に使われそうな気がする、

 ここいらが妥当だろう。

 さあ、売り込みだ。


 冒険者ギルドに行くぞ。


「お姉さん、画期的な商品が出来たんだけど、ギルドで取り扱わない?」

「見るだけなら」

「一つ目は振動包丁。ルコスの冒険者ギルドでも好評だったんだ。骨まですっぱっと切れるんだよ。見てて薪を切るから」


 薪を両断してやった。


「どう、凄い切れ味でしょ。金貨1枚ぽっきりでどうだ」

「買った」

「そうでしょ。お次は魔法カード。ちょっと炎が伸びるから危ないよ。空間を開けて」


 魔法カードから炎が伸びる。


「どう、詠唱しないで魔法が使えるんだ。護身用にぴったりだよ。これで暗い夜道も安心さ。これも金貨1枚ぽっきり」

「買った」

「お買い上げありがとう。どれぐらい在庫を置いてくれるかな?」

「試しに30ずつってところね」

「じゃ、それでお願い。じゃ、見張り塔の依頼を貼って」


 受付嬢が見張り塔建設の依頼書を貼る。

 あのFランク冒険者が来て受付嬢に質問を始めた。


「見張り塔の建設がたった金貨90枚ぽっち。信じられない。期限も一日だなんて」

「嫌なら受けなくて結構です」

「昨日は無茶な依頼を受けて怒られたし、パスって事で」


「じゃ、その依頼は俺が受けるよ」

「昨日のがきんちょ。鎧の騎士は今日は居ないのね」

「ああ、表で待たせている」

「ああっ、どうしたら良いの。子供が依頼を受けるのを阻止しろって言われるし、無茶な依頼は受けるなとも言われるし」

「一日で見張り塔を建てられるメンバーを見つけてから挑戦したら良い」

「そうよね。私のせいじゃ無いわよね」


 Fランクの女の子は去って行った。

 馬鹿だな。

 妨害するなら手はいくらでもある。

 とりあえず依頼を受けといて、放置すれば良いんだ。

 それでギルドが文句を言ってきたら、じゃお前がこの値段と期限でやってみろと言えば良い。

 ただ、クラン・デスタスのメンバーではそういう事は出来ないだろうな。

 クランの評判もあるし、Sランクの沽券に関わる。


 Fランクの女の子も無理だろうな。

 駆け出しに面の皮を厚くしろっていうのも無理な話だ。

 Cランクぐらいの人間を雇って事に当たらせるのが正解だ。


 ただその場合、俺が出てきて『じゃ、やりましょう』と言うから、その手も通じないのだけどな。

 さてと、どういう手に出て来るかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る