第43話 見張り塔を建てる

 今日も重役出勤だ。

 見張り塔の依頼と貴重な薬草の採取依頼が出されるはずだ。

 掲示板の前で今か今かと待つ。


 受付嬢が掲示板に貼った瞬間に横合いから手が伸びる。


「鎧の戦士、ブロックだ」


 護衛に鎧の戦士を連れて来てよかった。

 俺はブロックした冒険者をまじまじと眺めた。


「誰だ。俺のAランクの依頼を取る奴は。へっ、お前は昨日登録したFランクの駆け出しじゃないか」

「ちぇっ、金貨1枚のアルバイトが」


 こいつ、シェードに雇われやがったな。

 そうだ。

 こいつを利用しよう。


 ええと貴重薬草の依頼は数多くこなしても問題ないから。

 受付に行って話し掛けた。


「お姉さん、薬草のAランク依頼追加ね。ただし、報酬は金貨1枚だ。それで期限は三日だ」

「そんなの安くて期限が短いの受ける人が居ないでしょ」

「いるみたいだよ。さあ、貼って」


 受付嬢が依頼を貼る。

 駆け出し冒険者が剥がして、受付に行った。


「パーティ・シェードがこの依頼を受けます」


 報酬が金貨一枚だって知ったらシェードはどんな顔をするかな。

 でも、次はこの手は使えない。

 依頼の取り合いに負けたとなると次はごつい男を用意するだろう。

 鎧の戦士を量産してブロックするのも手だが、ここはずるい手を使おう。


「お姉さん、俺が出す薬草採取依頼の期限は三日にしてよ」

「また無茶を言う」

「パーティ・シェードの依頼はたぶん失敗するから。そうしたら出来る人もいると言えば良い」

「そうなの。大丈夫? 三日で探し出せる?」

「俺は三日で貴重薬草を探すよ。失敗した人にはしばらく同じ依頼は出来なくしてほしいな」

「それはルールでそうなっているわ」


 依頼を失敗したら、クラン・デスタスのメンバーの評価が下がるだけだ。

 それにパーティ・シェードは依頼を受けられなくなる。


 門の所に行き、ライオンを500頭を出した。


「グループに分かれて薬草を探すんだ。頼んだよ」


 依頼票を見せると、ライオンは頷き駆け出して行った。

 これで後は見張り塔を建てればいいだけか。


「【作成依頼】見張り塔を頼む」

「作成料として金貨15枚を頂きます」

「分かった」

「作成完了」

「【具現化】見張り塔」


「中に入っても良い?」


 はたで見ていたマリーが尋ねた。


「ああ、いいよ」

「凄い階段が続いている。何段あるかな」

「登ろうか」

「うん」


 汗だくになって階段を登る。

 レベルアップして大分体力がついたと思ったけど、きつい。

 マリーを見ると余裕の表情だ。


「マリーって今、何レベル?」

「ええとね。35」

「負けてる。なんで負けてるの? の、能力値は?」


 能力値も負けている事が判明。

 おかしいと思ったんだ。

 クラッシャーさんはレベル100で筋力が2000を超えている。

 俺はレベル28で筋力が61だ。

 どう伸びてもレベル100で2000は到達しない。

 個人差があるって事だな。

 ポリゴンスキルの副作用なのかもしれない。


 まあいい。

 このぐらいのハンデは許容範囲だ。


「みてみて、遠くまで見えるよ。馬車が積み木みたい」

「良い眺めだな。作った甲斐があるってものだ。さあ、ギルドに報告に行こう」


 ギルドに報告に帰る。


「見張り塔を建ててきたから、確認のサインをお願い」

「ほんとうに、覚醒者って凄いわね」

「見張り塔はまだ要るでしょ。今度から見張り塔の建築依頼は期限一日にして」

「そうね。東西南北に二つずつぐらい欲しいわね」

「一日一つ依頼を出してよ」

「ええ、そうするわ」


 ふふふ、これでシェード対策はばっちりだ。

 今頃は貴重薬草を探す為に駆けずり回っているはず。

 もっとも、参謀タイプに見えたから、本人は宿で悶々としてるかも。


 こうなると今夜あたり殺し屋が来そうだな。

 ライオンの他に警報装置を考えないと。


 うーん、うーん。

 駄目だあ、考えつかない。

 待てよ待ち構える必要はないじゃないか。

 ポリゴンの家ならどこにでも建てられる。

 毎日家の場所を変えれば良い。


 それだと尾行がついたら、ばれるな。

 そうだよ、着ぐるみだ。

 ポリゴンで人間を作って中に入れば良い。

 大柄な人なら胴体に隠れられるな。

 背中にハッチを作って胴体にのぞき穴を開ければ完璧だ。


 俺は筋肉だるまの人を2人作って、誰もみていない所でマリーと中に入った。


「声を出すとばれるから、無言でな」

「うん」


 そして、適当な空き地に行って、仮住まいの小屋を出す。

 小屋の外観を毎回、変えればばれないはずだ。

 見張りはネズミを作った。

 人が近寄れば知らせてくれる。

 ふっ、完璧だ。

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