第39話 打ち上げ

「ただいま、ダンジョン討伐を終えて戻りました」

「えっ、終わったの」


 驚いたような受付嬢の声。


「クラン・ヴァルドのSランク4人と無事終わりました」

「大変。探索隊を編制しなおさないと」

「坊主、いい加減な事を言うなよ。ダンジョンが出来たって話も怪しいもんだ。まして、ダンジョン討伐だあ。とても信じられないぜ」

「受付のお姉さん。はい、証拠のダンジョンコア」

「これを渡したという事はギルドに貸し出してくれるんですよね」

「うん」

「やった。ボーナス倍増。では早速。ギルド職員がハイポーションを生み出せるよう命令して下さい」

「ダンジョンコア、ハイポーションをギルド職員と作れ」

「魔力を吸わせて。ハイポーション作成」


 ダンジョンコアからポーションが生み出された。


「うわ、本当だわ。ハイポーションができた」

「貸出の金額はいくらぐらい」

「そうね。相場だと年間で金貨1282枚くらいかしら」

「やったぞ、マリー。大金持ちだ」

「ポーション無限なら、もっと高いんじゃ」


「あのね、ダンジョンコアは龍脈の上にないと無限製造は無理ね。今は物を生み出すのに魔力が必要よ」

「マリー、値段には理由があるものなんだ」

「そうなんだ。お姉さん、ごめんなさい」


「いいのよ。疑問点は聞いてもらっても。依頼で分からない事があったらバンバン聞きなさい」

「うん」

「これで収納バッグが買える」

「やっとだね」


 作成依頼で消費したお金を取り戻せたな。

 二年目からはがっぽがっぽだ。

 笑いが止まらない。


「ディザ君達パーティをAランクに推薦するわ」

「いいの。戦闘はほとんどSランクの4人がやったのに」

「ダンジョンコア貸出しの功績はそれぐらい大きいわ」

「じゃ遠慮なく」


「野郎ども後片付けは不服だが、ダンジョンの素材を根こそぎ持ち帰るぞ」

「おう」

「行くぜ」

「準備オッケーだ」

「こうしちゃおられん。俺達のパーティも召集をかけないと」


 ギルドにいた冒険者が散って行き、ギルドが空になった。

 培養施設なんかは在りそうだから、安全に儲けられるだろう。

 目の色が変わる訳だ。


 それから、俺達は酒場でクラン・ヴァルドのメンバーと宴会を始めた。


「今日は最初にやられた王打おうだのおごりね」

「仕方ないな。剣聖、助けた貸しがあるよな。勘定を半分持て」

「そんなのでいいのか」

「おう、命を救ってもらい一杯おごる。これが冒険者よ。よし、ダンジョン討伐の祝いだ。この酒場に居る奴は俺達がただで飲ませてやる」


「ごちになります」

「さすがSランク」

「クラン・ヴァルドもなかなかやるな」


 人気取りしてどうなるって物でもないが、仕事をやりやすくしているんだろうな。

 ベテランらしい心遣いだ。


「おりゃぁよ。閃いたぜ」

「何です剣聖さん」

「剣をよ。ねじり込むように突くのよ。名付けて螺旋剣」

「手首に負担がかかりそうな技ですね」

「レベルが100を超えるとそのくらい訳ないぜ」


「おう、俺もパクろうかな。スパイラルインパクトなんてどうだ」

王打おうだの好きにして下さい」


 剣聖と王打おうだの二人は技談義を始めてしまった。

 マリーはアンリミテッドとペット談義をしている。

 ジュエルスターは一人で寡黙に飲んでいた。


 噂話が聞こえてくる。


「受付嬢に斬りかかった男がいるそうじゃねぇか。そいつ指名手配されたんだがよ。密告されそうになって宿の従業員を切り殺したらしい」


 なぬ、ゼットの奴は指名手配されたのに宿に泊まったのか。

 まあ、あいつに野宿は無理だから、分からないでもない。


「それは賞金首になりそうだな」

「ああ、賞金が掛かって、手が空いてる冒険者が血眼になって探している」


 そうか、賞金首になったか。

 そう言えば雇っていた傭兵はどうなった。


「おじさん、その賞金首に護衛はいないの」

「傭兵なら犯罪に加担出来ないと去って行ったぜ。だが、奴は覚醒者だ。見つけても知らんぷりした方が良い。宿の従業員と同じ目にあったら、かなわないからな」

「うん、気をつける」


 ゼットの奴をどうしようかな。

 見つけたら、捕まえるぐらいでいいか。

 のこのこと出てくるほど馬鹿じゃないと思うがな。


 腐っても覚醒者か。

 逃げ足ってスキルは逃げるだけなら、有効な手だな。

 そう言えばステータスをチェックしてなかった。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:ディザ LV28


魔力:61

筋力:51

防御:44

知力:60

器用:49

瞬発:53


スキル:ポリゴン LV6

――――――――――――――


 能力値は上がっているが、スキルレベルは上がらずか。

 レベル10が最高らしいから、なかなか上がらないのかもな。

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