第37話 ダンジョン攻略

「そっち、行ったぞ」

「任せて」


 火炎放射器の炎がゴブリンを焼き尽くす。

 マリーが魔力切れを起こさないのは、実は少しタネというか仕掛けがある。

 魔法テクスチャーを先頭の炎だけにして他は剥がしたのだ。

 当たり判定が先っぽしかない。

 けち臭いシューティングゲームのレーザーみたいだ。


 いやねレーザーの当たり判定って実にめんどくさいのよ。

 範囲で取らないといけない。

 大きさが可変な物だから、へぼなプログラマーがやると手を抜いて、先頭しか当たり判定がないって事になる。

 前世で一緒に働いていた同僚が言ってた。

 それにならって俺も手抜きしてみた訳だ。


「魔石を抜いたら先に進もう」

「うん」


 そう言えば他の4人は灯りを持って行かなかったけど、大丈夫なのだろうか。

 剣聖さんなら、暗闇で相手の動きを察知出来なくてどうするぐらい言いそうだ。


 カンテラの灯りに照らされたダンジョンを歩く。

 ダンジョンは岩をくり抜いて作ってあるけど、どうやって出来たんだろう。

 謎だ。

 ライオンが壁に向かって盛んに爪を立てている現場に到着した。

 この向こうに何かあるのか。


 硬い物に対する武器を作るべきだな。


「【作成依頼】パイルバンカーをお願い」

「作成料として金貨12枚を頂きます」

「分かった」

「作成完了」


 火薬はないから魔法の爆発で杭を打ち込むパイルバンカーだ。


「やるから、離れて」


 俺はパイルバンカーを壁に当てた。


「【アニメーション】爆発」


 杭が発射され壁を壊す。

 俺は反動で向かいの壁に叩きつけられた。


 一瞬息が止まった。

 酷い目にあった。


「大丈夫?」


 マリーが心配そうに俺を覗き込む。


「平気だ。痣が少しできたぐらいだろう」


 これは子供用の武器じゃないな。

 次の時は鎧の戦士に使わせたいところだが、ポリゴンで出した物は魔力を行使できない。

 誰か大人に使わせるべきだな。


 壁の穴から中を覗き込むと、ゴブリンが培養されていた。

 ダンジョンの魔獣はこうやって出来るのか。

 なるほどね。

 スタンピードを起こす量の魔獣が産まれるのも頷ける。


 機関銃を乱射して培養施設をライオンと共に破壊した。

 魔石が簡単に集まって得したな。


 そして、広間みたいになっている所に俺達は出た。

 玉座みたいな物があって、真っ赤な鬼が腰かけていた。

 身長は2.5メートルってところだろうか。


「あれが何か分かる?」

「たぶんだけどオーガ。早く寝ないと真っ赤なオーガが食べに来るぞって、よく言われたわ」

「その上位種かな。【具現化】鎧の戦士と振動剣。オーガを退治してくれ」


 鎧の戦士がオーガに近づくとオーガは立ち上がり手招きした。

 くっ、知能があるのか。

 賢い奴は嫌いだ。


 鎧の戦士はブーンという音を立てる剣をオーガに叩き込んだ。

 だが、手首を手刀で叩かれ蹴りを入れられ光になってしまった。

 負けちゃったか。


 こういう奴は正攻法でいくと難しい。

 だから、搦め手でいく。


「【作成依頼】オーガがいる辺りの地面をコピーしろ」

「作成料として金貨28枚を頂きます」

「分かった」

「作成完了」


 これに電撃のテクスチャーが現れるアニメーションを作ってと。

 地面にそれを仕込んで、名前を電撃のダンジョンでどうだ。


「【作成依頼】俺の靴を頼む」

「作成料として金貨4枚を頂きます」

「分かった」

「作成完了」


 靴を浮かしてフライングブーツという名前にして、履き替えた。

 僅かに空中に浮いたので、地面がフワフワする。


「【具現化】電撃のダンジョン」


 今、ダンジョンの地面は俺の領域だ。

 俺は電撃のダンジョンの中央に立って手招きをした。

 訝しげに俺を見るオーガ。

 しかし、オーガは電撃のダンジョンの中に踏み込んだ。


「【アニメーション】電撃。くそう、魔力切れか」


 俺は目の前が真っ暗になった。

 気がつくと唇が濡れていて、マリーに膝枕されていた。


「マナポーション飲ませたよ」

「おう、サンキュ。オーガは?」

「動けなくなったから、火炎放射器で焼き殺した」


 俺の全魔力を使った電撃を食らえばオーガと言えども麻痺するだろう。

 ふう、中ボス殺すのも大変だ。


 強敵はもうこりごりだ。

 平穏にいきたい。

 でもそうは行かないのだろうな。

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