第35話 スタンピード終わる

 遂にスタンピードが始まった。

 まあ、別に問題は無いのだが。

 不謹慎なようだが、ボーナスステージにしか思えない。


 冒険者の大半はそう思っているらしく、嬉々として魔獣を退治している。

 何やら聞き覚えがある声が聞こえたと思ったら、ゼットじゃねぇか。


「絶風よ、切り刻め。大牙よ噛み殺せ」


 フライングソードが絶風でティラノサウルスが大牙か。

 また、大層な名前を付けたな。

 そうやって大人しく冒険者やってれば良いのにな。


「ひっ、こんな奴が出てくるなんて聞いてないぞ」


 あー、オークジェネラルさんね。

 フライングソードで斬りかかれば、そりゃ怒るだろ。

 ゼットが街の方向に逃げて来る。

 そして。


「邪魔だ。絶風よ切り裂け」


 おい、冒険者仲間に斬りかかったら、いかんだろ。

 剣を没収と。


 突然フライングソードが消えて呆けるゼット。

 我に返り、今度は傭兵に命令しだした。


「こいつらを切り殺せ。そうすれば魔獣は気を取られ、俺を追いかけてこないだろう。大牙よ俺を守れ」

「ご苦労様、寝て良いぞ」


 俺がそう呟くとティラノサウルスは眠り始めた。


「なんでだー」


 そう言うとゼットは漏らしながら、オークジェネラルから逃げた。

 オークジェネラルがゼットに向かってこん棒を振り下ろした。


「ひっ、ステータス。やった俺も覚醒者だ。【逃げ足】」


 腰を抜かした格好でゴキブリのように這って逃げ始めた。

 その速さと言ったら正にゴキブリ。

 それにしても覚醒したスキルが逃げ足とはな。

 ふさわしいと言ったらふさわしいが。

 面白い奴だな。


 オークジェネラルの後始末をしてやるか。


「【具現化】鎧の戦士と剣。オークジェネラルをやれ」


 戦士は頷くとオークジェネラルと戦いはじめた。


「ティラノサウルス、仕事だ。オークジェネラルを戦士と協力してやっつけろ」


 さてと、ライオンは最大1000頭が出せる。

 ピンチになった時の為に半分残してと。


「【具現化】雌ライオン500頭。魔獣らをやっつけてこい」


 ライオン500頭の集団は見ていて迫力がある。

 ウルフなんかは一噛みで殺されていく、ゴブリンも同様だ。

 オークは2メートルを超えるので多少手こずるが2頭で事に当たるとおおよそライオンが勝った。


 ざっと見た所、魔獣の数は一万を超えるかな。

 Sランクの8人は1000匹ぐらい余裕だろうから、残りは2000か。

 ライオン一頭が4匹殺せば計算的には合うな。


「ディザ、この辺に魔獣はもういないよ」

「マリー、どっちが多く仕留められるかライフルで勝負だ」

「負けないよ。ライフル歴は私の方が長いんだから」

「よし、やるぞ。【具現化】ライフル【アニメーション】発射」


 マリーとライフル勝負する事にした。

 激戦区に行くと魔獣だらけだから、狙わなくても当たる。

 前に冒険者がいないよう確認する事の方が骨が折れた。


「よし、32匹目と。マリーは今いくつだ」

「ええと分かんない」


 マリーが数を数えられないのを忘れていた。


「ごめん。勝負はなしだ」


 突如戦場に遠吠えが聞こえた。

 体長が6メートルを超える狼が走ってくるのが見えた。


「カイザーウルフだ。もう終わりだ」


 こいつに岩は相性が悪そうだ。

 避けて終わりだろう。


 鎧の戦士もかみ砕かれるに違いない。

 ライオンは体格差がありすぎて勝負にならない。


 ふっ、問題ない。


「【作成依頼】火の精霊を頼む。魔法の火を貼ってな。アニメーションも頼む」

「作成料として金貨15枚を頂きます」

「分かった」

「作成完了」



「【具現化】火精霊。カイザーウルフを焼き尽くせ」


 火精霊は俺の周りを一周回った後に、カイザーウルフに向かって飛んで行った。


「キャイン」


 カイザーウルフが悲鳴を上げる。

 しかし、火精霊は噛み砕かれてしまった。


「【具現化】火精霊10匹。カイザーウルフを焼き尽くせ」


 うっ、眠い。

 魔力切れか。

 畜生、俺も終わりか。

 いやSランクが8人いるんだ。

 なんとかなるだろう。


 気がついたら俺はマリーに膝枕されてた。


「どうなった」

「火精霊達が焼き尽くしたわ」

「そうか」


 相打ちか。

 精進しないとな。


「ステータス」


――――――――――――――

名前:ディザ LV21


魔力:50

筋力:42

防御:36

知力:56

器用:40

瞬発:44


スキル:ポリゴン LV6

――――――――――――――


 ちぇ、スキルレベルは上がらずか。

 レベルはだいぶ上がったな。

 能力値が最初の時の3倍になった。

 冒険者見習いぐらいはあるだろう。

 だが、体力ごり押しで戦えるようになるには100レベルはいかないと。

 先はまだ長い。

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