第34話 スタンピード始まる

 家の補強をしようと思う。

 そこで問題だ。

 問題というか外観が不細工になる。

 ここは一つ塀を作ろう。


 おしゃれに作るなら、金属の棒だが。

 強度重視なら石の板だな。

 石の板を何枚も重ねた塀を作った。


「なんか、刑務所みたいになったな」

「刑務所って何」

「悪い人を閉じ込めておく所さ」

「じゃ可愛くしないとね」


 石の板に花の模様をつける。

 マリーの提案でデフォルメしたライオンのマークとかもつけた。

 俺はデザインできないので作成依頼に出した。


 なんとも形容し難いものになったな。

 しいて言うなら、いかつい幼稚園だ。


 門を作って気づいた。

 門の所が弱いな。

 ここが弱点だ。


 えっと、城の場合はどうしてたっけ。

 堀をほって、跳ね橋を架けたんだったな。

 そのくらいユンボを使えば楽勝だ。


 楽勝だと思ったがのり面が崩れる。

 土木工事なんてした事がないから、これは無理だな。

 そうだ。

 でかいU字溝を作って埋めればいい。

 それなら、何となくできそうだ。


 工事が終了した。

 改心の出来とは言い難いが、合格点だ。


「この街にずっといる訳じゃないよね」

「その時は家を消して、他の街で同じのを組み立てるさ」

「この家は記念に残しておきたいな」

「分かった。消さないよ」


「ディザくーん」

「あっ、受付のお姉さん」


 家までギルドの受付のお姉さんが訪ねて来た。


「指名依頼よ。避難民が押し寄せるから、住宅をお願い」

「なんで俺が」

「だって家を一日で建てたでしょ」

「見られてたのか」

「ギルドに報告が上がっているわ。問題ないから放っておいたけど」

「仕方ない。家を建てるよ」

「出来れば塀もお願いね」

「お願いされました」


 城壁を拡張してその中に家を建てる。

 俺の家も拡張した城壁の内側に入った。

 なんだかな。

 苦労して塀を作る必要はなかった。


 強度はお察しだが、3日で避難民の家は完成。

 そして、家の庭でライオン達を洗っている時に、クラン・ヴァルドの面々が訪ねてきた。


「坊主、強くなったか」

「剣聖さん、もちろんだよ」

「聞いたぞ。従魔に任せっきりだってな」

王打おうださん、そんな事ないよ」


 まあ、ポリゴンスキルがないと何にもできないけどさ。


「なんか、マリーちゃんのペットって変わった?」

「イメチェンしたんだ」

「名前もバナナにしたの」

「可愛い名前ね」


「ディザ後輩。ダンジョンに早く案内しろ」

「そう急ぐ事もないだろう。まずはどれだけ強くなったか見せてもらわないとな」

「ふっ、【具現化】巨大ゴム輪【アニメーション】縮め」

独楽切こまぎれいち」


 剣聖がくるりと回りながら剣を少し抜いて、ゴム輪を切り裂いた。


「えっ、自信があったのにな」

独楽切こまぎれは接近戦用の技だ。吐息が掛かる距離でも斬り刻める」

「倍化剣ってまだ技があるんですね」

「おう、門下生になる気になったか」

「免許皆伝は欲しいかな」


「倍化剣をやってみろ」

「フライングソード。倍化剣を再現」


 ひゅんひゅんと剣が風を切って動く。


「駄目だな。倍化剣は斬る回数を増やす毎にスピードを速くしないと」

「この速さが限界なんですよ」


 そうだ風の魔法を貼ったらどうだろう。


「【具現化】フライングソード。倍化剣を再現」

「おっ良いな。坊主、よくなったぞ。これなら免許皆伝をやれるな。だがな、精進するんだぞ」


「もう、良いだろう。ディザ後輩、行くぞ」


 遠くから剣戟の音や悲鳴がする。

 何事が起きたんだ。

 俺は駆け出した。


 拡張した城壁の外に出ると、ゴブリンとオークとウルフの混成軍が押し寄せてきていた。

 ついにスタンピードが始まったんだな。


「ダンジョンを攻略する前の準備運動だ。【斬撃強化】倍化剣いち、倍化剣に、倍化剣よん、倍化剣はち、倍化剣いちろく、倍化剣さんに、倍化剣ろくよん、倍化剣いちにっぱ、倍化剣にごろ、ふう、暖まったぜ。倍化剣ごいちに、倍化剣いちぜろにいよん、倍化剣にいぜろよんはち」

「【流動】キングインパクト」


 剣聖さんと王打おうださんは安定の強さだ。


「超強酸砲」


 ジュエルスターさんはプールぐらいある酸の塊を発射して魔獣を溶かした。


「業火よ湧きあがれ泉のごとく湧き上がれ、エクスプロージョン【魔法巨化】」


 アンリミテッドさんは爆発の魔法を唱えキノコ雲を発生させた。

 さすがSランク。

 俺も負けてはいられない。


「ライオンさん、やっちゃって」


 ライオン達が混成軍に襲い掛かり始めた。

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