第33話 村の救援に行く

 雌ライオンに犠牲者が出た。

 どうやらオークにやられたらしい。

 ライオン達がオークを持って帰る頻度も高くなった。

 イオのグループは無事だろうか。

 ダンジョンの場所を突き止めて帰ってきてほしい。


「汚れが目立つライオンさん達が帰ってきたよ」


 ある日マリーが窓から外を見て言った。

 みると、イオの一団が帰って来たのが分かった。

 足環の色で識別しているから間違いない。

 慌てて家の外に出る。


「ずいぶん数が減ったな。ご苦労様。で見つけたか」


 頷くイオ。

 そうか見つけたか。

 6日ぐらい経っているから、昼夜も問わずライオンの足で走って3日ってところか。


「よしよし」


 イオのたてがみを撫でた後に、雌ライオンを補充して汚れを落としてやった。


「ダンジョンの入口に行くのはクラン・ヴァルドのメンバーが来てからだな」

「じゃ、何するの」

「街の人にスタンピードの警告をしないと」

「魔獣が攻めてくるの?」

「ああ、間違いない」

「大変、家が壊されちゃう」

「それも、補強しないとな」


 冒険者ギルドに行った。


「ダンジョンが出来たと思う。間違いない」

「坊主、いい加減な事を言うとただじゃおかないぞ」

「従魔が突き止めたんだ」


「ディザ君を虐めたら駄目ですよ。クラン・デスタスからもダンジョンが出来たという推測の報告が上がっています」

「受付のお姉さんは信じてくれると思ったよ」

「案内してもらうにしても、探索隊を編制する必要がありますね」

「どれぐらいかかる?」

「10日はみないと」


 都合が良い。

 クラン・ヴァルドを呼び寄せてから案内出来る。

 ダンジョン一番乗りの特命を果たせたな。


「クラン・ヴァルドに早馬で手紙を出したい」

「高いけど良いの。金貨10枚よ」

「大丈夫。払えるよ」


 文面は『ダンジョンを発見した。ディザ』でいいだろう。


「村がオークに囲まれているんだ。誰か助けてくれ」


 少年が駆け込んで来た。


「俺達が行ってやろう。状況を話せ」


 気の良い冒険者が救援を買って出た。


「オークの数は沢山としか言えない。ボスは通常のオークの2倍はある」

「見間違いじゃないのか」

「あんな巨体を見間違うものか」


 顔が青くなる冒険者達。


「オークジェネラルだな。Aランクだ。俺達の手には余る」


 仕方ないな。


「俺が行ってやるよ」

「へっ、子供?」


「一応、覚醒者だ」

「それなら。俺の村を助けてくれ」

「任された。マリー行くよ」

「うん」


 オープンカーに乗って村に駆け付ける。

 村は包囲されていて村人が応戦する為に柵越しにオークとにらみ合っていた。

 どういうつもりだ。

 この数のオークなら柵を壊して村に侵入できるはずだ。


 まあ、いい。

 オークの思惑なんて関係ない。


「イオ、カリスト、ガニメデ、エウロパ、やっていいぞ」


 ライオン84匹がオークに襲い掛かろうとする。

 その時吠え声がして2倍の大きさのオークが現れた。

 これがオークジェネラルか。

 オークエンペラーより弱そうだから問題はないな。


「エサ、ずくない。がっかり」


 オークジェネラルは救援を待っていたらしい。

 それを食べるつもりだったんだな。


「【具現化】大岩【アニメーション】落下」


 オークジェネラルは大岩を避けた。

 意外と素早いな。


「【具現化】鎧の戦士と振動ブレード。オークジェネラルを倒せ」


 雑魚オークが邪魔だ。


「マリーは狙撃して。ライオンさんやっちゃって」


 ライオンが入り乱れる乱戦になった。


「ライオンさん、ごめんなさい。当てちゃった」


 マリーの弾がたまにライオンに当たる


「マリー構うな。ライオンは補充できる。【具現化】雌ライオン10頭」

「うん」


 雑魚オークは次第に討伐されて行く。

 ライオンはいくらでも補充がきくからな。


 鎧の戦士がオークジェネラルを討ち取って戦いは終わった。


「ほえー、覚醒者様って凄いんだな」

「戦闘力100倍はあるかもな」

「俺、訓練して覚醒者になる。それで冒険者になって村を助けて回るんだ」

「頑張れよ、少年」

「ディザ、年上みたい」


 精神年齢なら年上なんだけどもな。


 村の人が総出で解体を行う。

 俺は燻製器と振動包丁を貸し出してやった。


「この村にお立ち寄りの時は歓迎いたしますぞ」


 そう村長に言われた。


「こんな事を言うのもなんだけど、避難した方が良いと思う。今にダンジョンから魔獣が溢れてくる」

「それは大変だ。近隣の村にも知らせないと」


 力が無いってのは大変だ。

 異世界で生き抜くには力がないと。

 俺なんかまだまだだ。

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