第15話 ランクアップ

 さあ、魔改造の時間だ。


 ライオンが噛みつき空中で回転して噛み千切る。

 噛みつきに回転のアニメーションを加えてみただけだ。

 これぐらい俺にも出来る。


 AIはこういった作ったアニメーションも対応してくれるから嬉しい。


 爪を伸ばして猫パンチする。

 ざっくりいきそうだ。


 猫パンチ乱舞なんてのも作った。


 頭突きなんてのも作った。

 頭突きする時になんと尖った刃物が額から出現するようにした。

 生き物じゃないのだから、こういう自由度があっても良いと思う。


 それと使えるポリゴン数が増えたのでライオンのポリゴン数を3倍にして3000ぐらいにしておいた。

 だいぶ強化されたはずだ。


 ついでに大岩も3000ポリゴンぐらいにしておいた。


「掛かれ」


 俺は残党のオークを前にしたライオンにそう命じる。

 ライオンはオークに向かって走り、足に噛みついた。

 オークが拳を振り上げると一旦離れ、助走をつけて飛び掛かった。

 額から刃物を出して頭突き。

 ぐっさりとオークに刺さる。


 そこから空中で踏ん張って噛みつき。

 動作のつなぎ目が変なのは仕方ないな。

 自然に見えるほどアニメーションの種類がある訳ではないからな。


 空中で猫パンチ乱舞炸裂。

 そして一旦離れて飛び掛かり首筋に噛みつき回転。

 見事仕留めた。


 うーん、アニメーションのつなぎがな。

 走り一つとっても方向転換の時がぎこちない。

 ちょっと格好が悪いな。


 だが、実力は申し分ないようだ。

 オークとタイマンして勝てた。

 とりあえず現状は分かった。

 検証はこんなもので良いな。


 オークの死体をユンボに運ばせる。

 これで行くと怒られるよな。

 でも捨てていくのはもったいない。


 トラックなら馬車に似ているから良いかな。

 トラックの荷台にユンボがオークの死骸を積む。

 そうだ、馬も出してけん引した振りをしよう。

 馬と荷台を繋ぐ。

 馬具は急ごしらえだが、馬は生き物じゃないので、こすれたりしても嫌がらない。

 よし行こう。


 門のところに堂々と乗り付ける。


「ごつい馬車に乗ってきたな。今日の獲物はオークか。さすが覚醒者だな」

「ありがと」


 門をくぐり、買取所に車をつけた。


「買い取りをお願い」

「オークは金貨1枚と銀貨3枚だね」

「ディザ、金貨だって」

「おう、これからはライオンさんがいっぱい獲物を狩ってくれるぞ」

「お金持ちね。甲斐性が全てってこういう事を言うのね」


 ギルドに依頼の報告に行った。


「ロックウルフを8とオークが27とグリフォンが1」


 採った魔石を出した。


「依頼料は金貨5枚と銀貨78枚です。おめでとうございます。Eランクにランクアップしました」

「ディザ、やったね」

「マリーも一緒にEランクだから」

「えへへ」


 ギルドでの手続きを終えて、街を歩く。


「この野郎許さないぞ」

「えっと、どちらさんで」

「お前に馬糞を投げつけられた。モンド、二コライ、レッドだよ」


「ああ、あの時の。名前までは知らなかったがな」

「いい服着ているじゃないか。寄越せよ」

「そうだ慰謝料だ。有り金全部だ」

「もちろん快くゆずるよな」


 こいつらも懲りてないな。


「【具現化】ライオン。威嚇しろ」


 現れたライオンが吠えるポーズをとる。

 そして空中に向かって噛みついた。

 最後に熱くない炎を口から吐いた。

 炎のアニメーションは俺が作った。


「あわわわ」

「不味いよ。逃げないと」

「うわー、おかあさーん」


 三人は腰を抜かしたようだ。


「これに懲りたら、カツアゲは辞めるんだな」

「ずるい」

「ずるい? 平等なんてのは幻想なんだよ。じゃあ何か。機会さえあれば、お前達はもっと上手くやれるというのか」


 子供のくせにと続けそうになった。

 いかんな大人げない。

 リーナさんが生い立ちを語ってくれた事がある。

 リーナさんは浮浪児をしていて、ある日市場でスリを見たそうだ。

 自分にも出来ると思ってスリ稼業を始めたらしい。

 上手くいっていたが、ある日、女冒険者の財布をスリそこなって捕まった。

 そうしたら、女冒険者が最低限の装備を買ってくれて、非道を行えば私が必ず殺しに行くと言ったそうだ。


 懐は温かい。

 装備を与えてやろうじゃないか。


「【具現化】剣。【具現化】剣。【具現化】剣。ほらこれを使って冒険者になれよ。それと金だ」


 俺は金貨1枚を投げてやった。


「金貨だ」

「初めて見た」

「パンいくつ食えるかな」


「お前達ならやれるんだろ。もし、お前らがそれを使って強盗を働くような事があれば、俺が息の根を止めてやる」


「おう、冒険者やってやる」

「そうだ、見てろよ」

「俺達だって」


「最初は下水道が良いらしいぞ。くさいがな」

「ふん、行こう」


「ディザ、恰好良かった。あいつら腰抜かしてたわ。いい気味よ。でもあれでよかったの」

「まあ、あいつらがこれからどう生きるかは、あいつら次第だ。犯罪者になるようだったら、懲らしめるけどな」


 さあ、ランクアップのお祝いだ。

 露店を食い歩き、宿でマリーと抱き合い眠る。

 最近はマリーと寝るのが普通になってきた。

 いかん、俺はロリコンじゃない。

 別々に寝ると言うとマリーは悲しむんだろうな。


「むにゃ、むにゃ、お父さん」


 そうか、俺はお父さんの代わりか。

 それなら、仕方無い。


「いつでも一緒にいるぞ。良い夢見ろよ」

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