第10話 初依頼達成

 木漏れ日が見える。

 実に長閑なもんだ。

 木にいくつもの爪痕がなければな。

 近いな。

 木の葉を踏む音がする。


「マリー、来たぞ。絶対前に出るなよ」

「うん」


 現在、6歳の俺ことディザとマリーは森で熊さんと出会った。

 出会ったもなにもこのジェノサイドベアは俺達の初めての獲物なんですけどね。

 ジェノサイドベアは4メートルほどの熊で、たぶん前世でこれに出会ったら腰を抜かしてちびっちまう。

 そういう自信がある。


 ポリゴンで出来たライフルを構えるマリー。

 俺の武器はライオンだ。


「【ショップ】。ライオンの3Dモデルとアニメーションをゲット」


 手に持っている金貨と銀貨が溶けるように消えた。

 ショップスキルは3Dモデルとアニメーションを買える。

 とうぜんリアルなのは高い。


「【モデリング】」


 さっき買ったライオンの3Dモデルを呼び出して3倍に拡大した。

 このぐらいは慣れれば簡単だ。



「【具現化】。よし、行け。エンペラー1号」


 ライオンの3Dモデルが実体化して目の前に現れる。


「【アニメーション】走り」


 走るアニメーション実行だ。

 位置を変えてワープさせても良かったのだが、やっぱり走らせたいじゃない。

 象ほどもあるライオンが森を駆ける。


「【アニメーション】飛び掛かり」


 ここで飛び掛かりアニメーションに切り替えてと。

 ライオンは飛び掛かり、ジェノサイドベアと組み合った形になった。


「マリー、今だ撃て」


 マリーがポリゴンのライフルを構え撃つ。


 弾はジェノサイドベアの足に当たったようだ。

 足から血しぶきが上がる。

 ジェノサイドベアが吠えた。


 俺は手榴弾を投げた。

 焦っていたのか手榴弾はあさっての方向に。

 樹にダメージを与えただけだった。


 そして、ジェノサイドベアが反撃に移る。

 ライオンにかみつき振り回す。

 光となって消えていくライオン。


「ふふふ、もうモデルは出来ている。【具現化】。よし、行け。エンペラー2号【アニメーション】走り」


 ジェノサイドベアは四つん這いになってこちらへ突進の構えを見せる。

 だが、足を引きずって歩き難そうだ。


「【アニメーション】飛び掛かり」


 ライオンを走らせ飛び掛からせる。

 頭と頭がぶつかり鈍い音を立てた。

 光になって消えて行くライオン。


 マリーが隙を悟って、弾の位置をリセットして発射する。

 体に何度か着弾。

 そして、最後は頭に当たり、ジェノサイドベアは倒れた。


「うーん、ライオンはちょっと弱いな。1000ポリゴンじゃこんなものか」


 俺の能力のポリゴンは制約が幾つか存在する。

 まず、ポリゴン数が現在、一日に1万までしか使えない。

 ただし日を跨ぐと復活する為、前の日に出しておけば問題は解消される。


 そして、出した3Dモデルの性能は本物に近いかどうかで決まる。

 一般的にはポリゴン数が増えると性能は増す。

 だが、モデリングの腕が良ければこの限りではない。

 俺は美術成績1の男。

 とうぜんそんな3Dモデルは作れない。


「わたしには何もないの」

「弾を当てて偉いぞ、マリー」


 マリーの頭をなでてやる。


「えへへ」


 マリーははにかんだ

 緩んだ目と口がネコ科の動物を思わせる。

 しかし、精神的にタフだよな。

 実戦にも怯まない。

 異世界の子供ってのは皆こんななのかな。


 さあ帰り支度だ。


「【ショップ】。ユンボの3Dモデルとアニメーションをゲットして、【具現化】【アニメーション】すくい取り」


 すくい取りアニメーションを実行。

 ジェノサイドベアの死骸をバケットですくい取った。

 もしかしてライオンよりユンボの方が強いんじゃ。

 いや、ネコ科はロマンだ。


 今回の反省点は、銃最強って事だな。

 弾丸のポリゴン数を改造して3千ぐらいに増やしたから、強度はばっちりだ。

 この増やす作業はとっても簡単だ。

 ポリゴンを分割して滑らかにするとすればいい。

 分割するのを1枚1枚やらなくていい。

 便利なものだ。


 ポリゴン数はかなり使ったが、銃が強力なのは間違いない。

 ライオンは弱い。

 見栄を張って雄ライオンでなく雌ライオンにしとけば、もう少し強かったのかも。

 ポリゴンを分割して性能を良くすればもう少しましになるだろう。


 それと、口の中に炎のオブジェクトを仕込んで火炎放射してみようかな。

 熱くないけど恰好良いだろう。

 意表は突けるはずだ。


 爪を伸ばすモーフィングアニメーションを作って薙ぎ払いなんてのも面白い。

 宿に帰ってから、魔改造してやろう。


「さあ、マリー乗って」


 ユンボの操縦席に駆けあがった俺は声を掛けた。


「うんしょ、えいっ」

「シートベルトはないから落ちないようにな」

「うん」


「【アニメーション】走行」


 ユンボの操縦席にマリーと乗り、街に凱旋する。

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