第80話 ここまでか……
ーーーーアツい
僕は空を飛びながら思う。
王女様に押された背中も、心も、身体も何もかもがアツかった。
「ギィイイイイヤァアアアアアウウウゥウウウウ!!!!」
僕の少し下を飛ぶドラゴンが吼えるが、今はもう震えない。怖くすらない。
「今、助けるから。」
僕はそう言いながら、どうしようかと考える。
正確には、僕の物理攻撃は効かない。
僕がもっと強かったら結果は変わっていたのだろうが…………今それを言っても仕方がない。
物理が駄目なら魔法で攻撃するのみだ。
「グギャァアアアア!!!」
「っ!!!」
僕は倒し方を考えようとするが、
「くっ!!!
時間しのぎに刀を抜いて、斬りかかる。
「グゥギャアアアア」
「くうっあ!!!」
ドラゴンと僕の体が上下に交差して、空を掛ける。
「グィイイイイ!!!」
「っなぁ!!!!」
駄目だ。あっちのほうが速いし、何より強い。
「くっ!!!
水と火の魔法を同時に行使して、瞬間的に蒸発させ、目眩ましにした。
「はぁはぁ……」
僕はその隙に更に高度を上げ、薄くなる息の中下を見下ろしながら再度思考を開始する。
兎に角高火力の魔法を打ち込むか?
いや、それじゃだめな気がする。
魔級魔法ですらこの化物の前では弾かれてしまうだろう。
じゃあ、古典的に口の中に魔法を打ち込むか?
いや、これもだめな気がする。
吼えるときも開くが、それと同時に少量でも炎を吐いている。
そんな灼熱のところに行ったら、死んでしまうだろう。
じゃあ…………。
「くそっ!!!だめだ………思いつかない…。」
もう、目眩ましの霧も風に流されたり、
「ここまでかよぉ!!!!!」
僕が思いっきり叫んで右手を振り下ろしたその時、
『お困りのようだね?』
そんな、間の抜けた声が頭に響いた。
「ま、おう………」
久しぶりに聞いたその声は、何処か胡散臭い感じがした。
『行き詰まってる感じ?』
「そう………だね…。」
半透明の影で、やぁと手を振る魔王に返事をする。
『じゃあ、私から少しアドバイス………というか助言をするよ!』
「よ、よろしく」
断る理由もないし、今はどんな事でも知りたいので僕は前屈みになって話を聞く。
『君は何でも一人で抱えすぎ。ほら、思い返してみて、君が今まで出会ってきた仲間や友達。味方を。そうすれば、あんなへなちょこドラゴン位ちょちょいのちょいさ!!』
「味方か………っ!!!」
僕は言われた通りに思い返そうとするが、とうとう目眩ましの効果が切れて、
「
火の魔法で応戦しつつ、再び剣を抜いて構える。
「はあっ!!!くうっ!!!」
ガギン。もしくは、ジャジュンといった、金属と硬いものが打ち合う音が響く。
「くうっ!!!つよっ!」
思わず打ち合いの最中にそう言ってしまうほど、僕とドラゴンの間には差がある。
こちらは研いであるとは言え鉄の棒。
対するあちらはそれだけで僕の腕よりでかい爪。
「ぬぅうっ!!!」
これじゃ押し負けるのも仕方ないだろう。
「グギィヤヤヤヤァアアアアア!!!」
「ちょっ!!!!」
無いってそれはないって。
この
「もういいよっ!!!!」
僕はこのままじゃジリ貧だと、一度ドラゴンから大きく離れる。
「はぁ…はぁ………。」
浅くなった呼吸を整えて、僕は初めて使う魔法の名前を叫ぶ。
「
その瞬間、体中を電流が走った。
全身の毛が逆立つようなゾクゾクとした感覚とともに、とてつもない眠気に襲われる。
「っう………!!!!」
あっぶない。
自分の頬を殴って止めていなければ、思考が飛んでいた。
確かに、たしかに並列思考の名の通りに色んなことを考えられるし、そのスピードは早いけど……。
「その代わりにすっごい眠いんだよ………ふぁあ」
ヤバい、あくびが止まらない。
「ギィィヤァアアアアアアアアウウゥウウ!!!」
「っ!!!ぬっ!!!」
疲れを知らないのか全然速度もパワーも落ちない
「くうっ……!!」
ーーーー躱せなかった。
並列思考の感覚に慣れられずに、右の頬が大きく切れた。
でも、その痛みのおかげで眠気が一瞬だが飛ぶ。
「これだ!!!」
僕は喜びに満ちた声で叫びながら、後ろに下がった。
並列思考の慣れない動きで少しだけ怪我することで、眠気を飛ばして、戦っていると同時に今までの事を思い返す。
「上手くいくかわからないけど、これで行くしかない!!」
口に出すことで自分に思い込ませて、僕は早速この世界に来てからの一ヶ月強の出来事と自分の味方を思い返す。
まず、スロ。次にシモさんと、フローラ、ニルと魔王。
「くうっ!!!!」
「グギャアィイイイイイイイ!!!」
考えている間にも体は動いていて、
「ギッイイイイ!!!!!!」
「っく!!!」
今回は右足を浅めにやられた。
えっと、後は…………ヒスイとフェルン、マッソにリリア王女。
「ギシャアアアアアア!!!!」
「ぶくっ!!!!っ!!!」
これで全部かな。じゃあ次に、戦いに使えそうなものを探す。
魔王を倒すときに、魔級魔法を使ったよな。
後、ヒスイと入学の論文で転移をやった気がする。
それと、あっそうだ!!イカスの王水雨もあるじゃん!!!
他には……………
僕は頭をフル回転させて、使えるものをあげていった。
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