第65話 男は笑い、嗤って、嘲笑う

「さぁて、」


主人公たちから遠く離れた美しい街で男は呟いた。


その格好は悪役らしい真っ黒な外套でも、ピエロ服でもなく、この異世界でよく見る料理屋のウェイターの格好だった。


「そろそろショータイムかな?」


悪の組織の計画といえば、とんでもなく大掛かりで、とんでもなく複雑に絡み合った伏線があり、それを主人公がぶち壊すのが一つ様式美なのだが、男の計画はそれとは正反対。


子供が思いついたのかと言いたくなる、幼稚で短絡的な作戦。


普通そんなの明らかに失敗するのだが、そんな短絡的かつ幼稚な作戦も圧倒的な力を用いればどんな美しい作戦よりも、どんな華麗な戦略よりも駆け引きよりも勝る。


彼の目的、計画は唯一つ。


学園都市でドラゴンを暴れさせ、殺させて、若い人材の優秀な魂や魔力をを進めている本部に送る事。


「直接見れないのはざーんねんだねぇ。まぁいっか。僕の愛しのトカゲさんならうまくやってくれるさ!」


その計画とやらに、レストの存在はないのだが、幸か不幸か二回とも彼が関わってしまうのだ。


それに加え、今回は彼以外に第三王女も深く巻き込むことになる。


これによって起きることは、男にとって良いことなのか悪いことなのか。


「うふふふ、ふふふ、ふぅっふふふふ、ははっ、はぁぁぁああはははははははははは!!!!!」


どちらにせよ、この狂人にはそんな事どうでもいいのだ。


彼は…………いや、彼らはたった一人の人物のために世界を壊そうとしているのだから。


その人さえ救えれば、他の有象無象など心底興味ない。


「さぁさぁさぁさぁ、せぇええーーーーかぁいを混沌にぃ!!!」


男が背中を仰け反らせながら叫んだところで、


「バイト!!てめぇ休憩長ぇぞ!!!」


白いコック服の男に叱られた。


「すみません!すぐ戻ります!!」


狂人はなぜかこの街で普通に働いているみたいだ。


「二番テーブル様ご注文でぇーす!!」


威勢よく声を上げる男によって、生態系の頂上たるが、

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