10,000フォロワー達成記念SS!!

マッソの楽しい筋肉講座

「失礼する!!」


「どうぞどうぞ。」


僕は初めて自分の部屋に友達というものを招き入れた。


「おお!!寮だな!!!」


部屋の入口で仁王立ちして言うマッソ。


まぁ何か特筆して言うことはないよね。

家具なんて買ってないし、部屋が引き渡されたときとほぼ変わってから。


「ふぅ!!なんか暑いな!!!」


マッソは部屋の端まで歩き、窓を開いてからタンクトップをパタパタする。


「マッソってどれくらい鍛えているの?」


タンクトップの隙間から見え隠れする筋肉を見て、ふと疑問が浮かんできた。


とてもムキムキなマッソだが、やはり毎日何時間もトレーニングをしているのだろうか?


僕も男だから肉体美というものに少しは憧れる。


簡単なものだったらやってみたいかなぁーとか思ったり思わなかったり………。


「曜日ごとにセットが決まっていてそれを5周している!!だいたい2時間もかからんぞ!!」


力こぶをみせつけ、フンと鼻息を吐くマッソ。


その体は長身と合わさってとても美しかった。


「筋肉って僕でもつく?」


なんとなくで言ってみたのだが、


「うむ!!!つくぞつくぞ!!やってみるか!!?」


「あ、じゃあお願いするよ。」


僕はこの言葉を少し後に後悔することになる。


 ◇ ◇ ◇ 


「着替えたよ。」


流石に体を動かすのに制服というのは如何なものかと思ったので、ちゃんと紺の短パン、薄黄色の半袖シャツを着た。


「ふん!!!じゃあまず今の筋肉を見せてもらおうか!!!」


「よ、よろしくおねがいします。」


少し緊張しながら、僕は手足を開いて立つ。


「いくぞ!」


マッソは肩、腕、手と触っていき、腹筋背筋、尻の筋肉、足の筋肉を見たあといいぞと言う。


「全体的に動いているのが分かるいい筋肉だが、戦うことや効率に対してに偏り気味だな!!全身の筋肉はバランスよくつけるのがいい!レストの場合だと利き手じゃない方の左腕や、ふくらはぎ、背筋がすこし足りないな!!」


ふむふむ。


日本では全く筋肉がついてなかった僕も、こっちに来て一ヶ月強。戦う筋肉はついたみたい。


しかし、実戦しかしてこなかったのが裏目に出てバランスは悪いと。


「じゃあ、どうやって鍛えるか教えてもらってもいい?」


「あぁ!!!望むところだ!!!!」


マッソは太陽のような笑みでサムズアップする。


「まずは体をほぐす!!両手を前に出せ!」


「こう?」


僕は体の芯と腕が垂直になるように腕を伸ばす。


「うむ!それでよい!!そこの位置から横に開き、下まで持っていく!!これを繰り返すんだ!!」


マッソはすべての角を直角に保ちながら腕を動かす。


その姿はエアーでシンバルを叩いているみたいだった。


「こ、こう?」


僕も真似して、腕を動かしてみる。


「うん!!そのまま続けよう!!!」


「わ、分かった。」


…………これ、以外に疲れるな。


地味な運動こそ疲れるというもの。なかなかに腕がきつくなってきた。


「よし!!終わりだ!!!」


「ぷはぁー………キツイね。」


「そうだろう!!!?」


僕と同じかそれ以上やっていたマッソは全く疲れなんてないような顔をしている。


これが筋肉の違いかぁ。くそぉ、なんか羨ましい!


「次!!足を肩幅くらい開く!!」


「はい!」


「右手で左足のつま先をさわる。一旦元の体勢に戻り、次に左手で右手のつま先をさわる。これを繰り返せ!!!」


斜めに体を折りたたんでは元に戻りを繰り返す動作はシュールだった。


「こ、こうかな?」


「そうだ!!!」


僕も見様見真似でやってみる。


…………これも最初はどこに効いてるの?って思うが、続けてると効いてくる。


「よし!!!最後は腿上げだ!!!!」


これは、僕でもわかる。


走りを大げさにしたみたいなフォームで、その場で地団駄を踏むんだよな。


「はっ!!!これでしょ!?」


「そうだ!!!上手いな!!!」


僕のイメージは当たってたみたいだ。


二人の男が狭い部屋で無心に腿上げをするという謎の時間が過ぎ、


「やめ!!!一旦休憩だ!!!」


「はぁ、きっつい……」


僕は部屋の椅子に腰掛ける。


「2、3分したら続きをするぞ!!?」


「は、はひぃ」


僕はこの先のことを思い浮かべ、なぜ筋肉の話題を振ってしまったのかと少し後悔した。


 ◇ ◇ ◇ 


「よし!!始めるか!!!」


「お、おーー」


ワクワク顔のマッソに気の抜けた返事をし、僕は椅子から立ち上がろうとして……………固まる。


「ど、どうした!!!?」


「やっやばいかも。足、つった……」


あまり使わない筋肉を急に刺激してしまったので、負荷に耐えきれずつってしまったみたい。


僕の体、なんて軟弱なんだ。


「そ、そうか!それは大変だな!じゃあ今日はもう辞めるか!!?」


「や、やめとくよ。ごめんねわざわざ教えてもらったのに。」


僕はなんとか椅子に座り直して、謝る。


「いや、体の健康が一番だ!!!それに、筋肉は積み重ねによって生まれるのだ!!!一気にやっては意味がない!!!」


「あ、ありがとう。」


僕が少しホッとしたのは言うまでもないだろ。


この日から数日間、マッソが僕の筋肉のことを気にかけていたことをここに記しておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る