第35話 お風呂!!
「いただきます。」
少々のトラブルはあったみたいだが、なんとかご飯が作れた。
「…うま。」
久しぶりの木の実以外のちゃんとした料理。
不格好だし焦げも多いが感動する。
「このパン!俺が切ったんだぜ!!」
マッソが向かいの女子生徒にアピールしている。
自分が切ったのを誰かが食べてくれているのが嬉しいのだろう。
「そのスープどうだ?私も手を加えたのだが。」
「うん。美味しいよ。」
こういう時なにか気を利かせたことが言えればいいんだろうが、生憎僕に食レポスキルはない。
美味しい。そうとしか言えない。
「そ、そうか。なら良かった。」
まぁ、ヒスイは満足そうにしているからそれで良かったのかな?
「ごちそうさまでした。」
日本よりも固く粗末なパンをかじり、ご飯を終えた。
「どこ行くんだ!?」
食べ終わったマッソがニカッと笑いながら尋ねてくる。
うん。まず歯についたパンを取ろうか。
「片付けだよ。パンを切るしかしてないし、片付けは手伝おうかなと思って。」
「そうか!ならば俺も行くぞ!」
マッソと並び水洗い場に行く。
この世界には水道なんてものはないが、水の魔石を使った魔道具があるから便利だよな。
そんなことを思いながら少し冷たい水で自分のお皿と調理に使われた鍋やらを洗う。
「お、感心感心。洗い終わったもんは前に置いとけよ。」
通りすがりに褒められた。
こんなんで成績が上がるわけじゃないが、褒められたのは少し嬉しい。
言われたとおり前の籠にお皿を置いて広場に戻った。
◇ ◇ ◇
「もう夜になる。部屋に戻って順番に風呂に入ったら、後は自由だ。といっても自分の部屋から出ることは許さないが。明日は早いから消灯時間には寝るんだぞ。」
ご飯の後、そうとだけ言って部屋に戻された。
風呂はAランクの奴らから入るので、僕らはしばし手持ち無沙汰になる。
「なぁなぁ、お前ら女子で誰がいいよ?」
暇だからか、夜だからかしらないが男子たちはその話題で盛り上がっている。
聞こえてくる話は、公爵家のご令嬢がキレイだの、王女は性格が悪いだの貴族様に聞かれたら怒られそうなものばかりだ。
「レスト、俺と話さないか!?」
マッソが部屋の端の僕の方に来る。
いや、マッソお前そんな顔してそういうの興味あるのか?
「まぁいいよ。」
僕は好きな人とかいないが、こういう話も大事なのだろう。友達関係ってやつには。
「なぁ、聞いてくれ!!」
なんだ、好きな子でもできたか?
それとも、フられたのか?
「最近胸筋がいっそうデカくなってな!どうだ見るか!?」
…………マッソお前。なんというか、裏切らないやつだな。
「ここの筋がキレイになってるだろ!?俺の自慢なんだぜ!!」
そう言ってピクピクされても、すごいなぁとしか言いようがない。
「あぁそうだ!こっちもスゴイんだぞ!!」
胸の代わりにケツを突き出しピクピクさせるマッソ。
「うん、スゴイね。とても硬そうだよ。」
一応感想を述べておくか。
「そうか!!?なんか照れるな!どうだ!触ってみるか!!?」
「いや、それはいいよ。」
何が悲しくてムキムキ同級生の尻を触らねばならぬのだ。
「そ、そうか!」
少し悲しそうにされても絶対に触らん。
触らんったら触らん。
それから脚筋と上腕二頭筋を見せられたところで僕らの風呂の番が来た。
ここの宿には備え付けの大浴場がある。
湯に浸かるのもこっちに来てから初めてなので実は結構楽しみだったりする。
「一番風呂だ!!!」
誰よりも早く着替えて風呂に入るマッソ。
確かに僕らの中では一番だが、その前にA.Bランクの奴らが入ってるだろ。
僕も急ぎ目で着替えて中に入る。
広さとしたら、狭めの銭湯くらいあるな。
シャワーもかなりの数あるし、湯船も広そうで何よりだ。
「ムム!2種類も石鹸があるぞ!!」
シャワーの前の台に黄色と緑の石鹸がおいてあった。
なになに、黄色の方が体用、緑の方は髪の毛用ね。
ボディソープとシャンプーといったところか。
「ほら、洗うぞ。」
意外なことに風呂場持ち込み可だった、スロを洗う。
いつもより泡立ち良好で、肌に優しい感じがしなくもなくもない。
「ふんふ、ふん♪」
体と頭を洗い終わったらお待ちかねの湯船だ。
すでに半分くらいが野郎どもに占拠されているのはお愛嬌だろう。
「くぅあぁぁぁ。」
入ったときに思わず変な声が出てしまった。
いやぁ、やっぱ風呂ってえぇなぁ。
「気持ちいいねぇ。」
頭にタオルを乗せてぐでぇってしながらフェルン君が話しかけてくる。
「湯に浸かると温まりますよねぇ。」
しっかし、本当きれいな肌だよな。
「ふん!俺の肉体美が火を吹くぜ!!」
マッソは………相変わらずだな。
◇ ◇ ◇
「ここ、何処だ?」
風呂から出て部屋に戻る途中で、ちょっと夜風に当たろうかなと思い外を目指したのだが、完全に迷ってしまった。
「ここでラッキースケベなんてやめてくれよな。」
多分ここはまだ男子の部屋がある領域なので大丈夫だ。
…………大丈夫だよね?
「気持ちよかったねぇ。」
「よかったよね。」
…………僕はフラグを立ててしまったみたいだ。
聞こえてきたのは女子生徒の声。
やべえよやべえって、隠れないで堂々と歩いていたならまだしも、こんな隠れているところを見られたら一巻の終わりだって。
気づかれませんように、気づかれませんように。
……………祈りが通じたのか、女子たちは離れていってくれた。
止めていた息を一気に吐き出す。
「はぁぁ……戻ろう。」
僕は隠れた隙間からでて………すぐに転んでしまった。
「いってて……すみません。」
角を曲がってきた女の人にぶつかってしまったみたいだ。
一難去ってまた一難って感じだ。
「って、ターシャ先生!?」
そこに立っていたのは女子生徒ではなく先生だった。
先生は木の箱をいっぱい抱えていておどろいたような顔して突っ立っている。
箱の中にはピンクの液体が入ったガラスの瓶入っていた。
「…ごめんなさい。よそ見していて。」
少し経って再起動したように先生は頭を下げる。
「いやこちらこそすみません。……けど、これなんですか?」
「こ、これはね、あの、その、あれよあれ、魔力回復ポーション!ほら、明日の探索で魔物と戦うじゃないですか?そこで必要になるかもと思いいましてね。」
なんかすごい怪しい。
隠そうとしてる感ムンムンだ。
「そ、それより君はなんでここにいるんですか?ここCランクの部屋からは遠いでしょ?」
「その、迷ってしまって。」
「あら、それは大変ですね!ここから下に降りて左の突き当りが部屋ですよ。ほら早く行ったいった!!」
追い出したい感満載だが、先生も早く用事を済ませて寝たいのだろう。
「ありがとうございました。」
「え、えぇ、おやすみなさい。」
はぁ、良かったという声は空耳だろう。
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