5 虎の沼地合宿編
プロローグ
『わかってる?失敗は許されないんだよぉ?』
「何より存じております。」
暗闇の中、話す女の影が一つ。
『我らが主のためだよ?あの研究はだぁいじな手がかりだからねぇ?』
「それと、魂の補填のためで御座いますか?」
ふふふと笑う声が空間越しに聴こえる。
その場に女しかいないが、男の声が部屋に響いていた。
『分かってるじゃぁん。じゃああの薬使ってもいいからぁ、やっちゃってぇ。』
「御心のままに。」
『じゃあねぇ。』
男との通信が切れるとともに、女は息を吐き地面に倒れる。
「…全てはあの方のため。そして、あの方の主様のため。………あぁX様ぁ」
女は震える声でつぶやいた。
愛しくも恐ろしくもある、あの御方の名前を。
◇ ◇ ◇
「あの子はうまくやれるかなぁ?」
男は一人つぶやく。
眼の前には、視界に収まりきらない怪物が一匹。
「まぁ、どうでもいいかぁ。本命はこっちだからねぇ。ほい!!」
「ウ、ゥゥウギャァアアアアアアアアア!!!」
ドシンと音を立て、怪物の巨体は倒れる。
「よろしく頼むよぉ、ドラゴン君♪」
彼はその山から立ち去る。
とある言葉を口ずさみながら。
「ワイズマンは大賢者♪
大賢者はかしこきもの♪
なんびとより深く♪
なんびとより広い♪
思考を持つもの♫♪」
◇ ◇ ◇
聖書 第12章758節
勇者を助ける4人の者がいた。
精霊たちはその4人の歌を代わる代わる歌う。
マジシャンは大魔法使い。
大魔法使いはまどわすもの。
なんびとより美しく
なんびとより強き
理想を持つもの。
ガーディアンは大盾使い。
大盾使いはまもるもの。
なんびとより堅く
なんびとより太い
意識を持つもの。
ヒーラーは大聖女。
大聖女はいやすもの。
なんびとより優しく
なんびとより慈愛深い
心を持つもの。
ワイズマンは大賢者。
大賢者はかしこきもの。
なんびとより深く
なんびとより広い
思考を持つもの。
森にはその歌が響き渡った。
◇ ◇ ◇
世界は動き出す。
とある少年を中心に、
とある人物を求める、
とある集団を敵とし、
とある英雄は蘇り、
とある精霊は再び歌うのだ。
世界は崩壊すると。
それを止める者が現れると。
その時、世界は動き始めると。
長い時を遡り、
異空を通過し、
交差した思いは、
やがて一つになる。
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