第33話 エピローグ

全員が一通り初級魔法を試したら、先生が視線を集める。


「一年生で中級、二年生で上級。出切れば卒業時に王級を目指しています。三日後の実習で使えるようにするためにも、今日と明日をかけて初級を完璧にしましょう。」


 ◇ ◇ ◇ 


ご飯を食べた後は、『見本を見て、やる』の繰り返しだった。


僕も少しずつ練度を上げて、終わる頃には「上手いですね!」と言われるくらいにはしておいた。


「さぁて、ギルドに顔を出すか。」


学校も終わり放課後。


久しぶり?にギルドに行こうと思い、外へ出る。


「姫様が治ったって!!?」

「秘匿された第三王女様だ!」

「これは、公爵家も勢い付くんじゃないか!?」


道中、鎧をつけた騎士さんが学園の隅へと走っていくのを見た。


姫様は治ったみたいで良かった。


でも、王家としてはバレてしまっていいのだろうか?


これから何もかも公表するか、ただ第三王女がいることだけを伝え、裏は隠すのか。

はたまたすべてを隠蔽するのか。


まぁ何より、彼女リリアが幸せになってもらえればいい。


偽善や我儘とはいえ助けたんだ、少し位の責任は負わないとな。


 ◇ ◇ ◇ 


「いらっしゃいませ。」


ギルドに入るといつものお兄さんが声をかけてくれる。


本当に何時いつもいるが、彼も社畜なのだろうか?


だとしたら、頑張れと伝えたい。


「依頼は………」


ざっと目を通していく。


ゴブリン討伐、遺跡探検、薬草採集…………。


「すみません、これ受けます。」


「はい。ご説明は?」


「大丈夫です。」


結局ゴミ拾いクエストを受けた。

前に見たら、街が汚かったのだ。


金稼ぎにきれいにしてやんよ!!


 ◇ ◇ ◇ 


「お疲れさまでした。報酬はこちらになります。」


「ありがとうございます。」


トレーに乗ったお金を受け取る。


二時間半、細々道に落ちているゴミたちを拾って4970ヤヨ。


誰もやってないからか、今回はよくわからない廃材や木くずが多く、たくさん稼げた。


「さて、フローラは怒っているかな?」


僕はお金をポッケに入れながら部屋に帰ったときの心配をするのだった。


 ◇ ◇ ◇


「何処をほっつき歩いてたのじゃ!!!」


案の定といったところか、部屋に入ると同時にフローラからはお説教、スロからはダイビングハグを貰った。


事情を説明したら、「また変なことをして」と言われ、納得してくれた。

だか、「でも連絡くらいすればどうじゃ!!」と再び怒られてしまった。


今回は僕が悪いので素直に受け止めて、善処するつもりだ。善処。


必ずするとは言ってない。


「ふぃー!!」


「ごめん、ごめんて。」


スロもお怒りのようで、執拗に撫でるのを求めてくるが、それが可愛いので少し焦らしていたら本格的に怒られてしまった。


撫でてあげたら、ふぃーと声を上げてすぐに寝てしまった。


心配してくれたのだろう。


ニルも普段はあまり寄ってこないが、近寄ってスリスリしてくれた。


「今度からはなるべく連絡するようにするよ。」


「なるべくか。当てにならんなぁ。」


ジト目で見つめられる。


「…分かったって、ちゃんとするから。拗ねないでって!」


一分くらい経って僕が折れた。

善処ではなく、ちゃんと改善するようにしよう。


「おやすみなさい。」


愛しの布団に入るとすぐに寝てしまった。


◇ ◇ ◇


「ヤバイヤバイヤバイ!やばいぃぃーー!!!」


通学路を全速力で走る。

こっそり強化魔法を一つだけかけるが、間に合うのか。


一昨日徹夜したからか、スロが密着していたからか、寝すぎたのだ。


流石に2日連続遅刻はヤバい。


◇ ◇ ◇


「失礼します!」


僕がついたのは後ろから3番目くらい。


遅刻ではないが、ほぼ全員が席についていて、少し恥ずかしかった。


「今日は午前中剣術、午後魔法術といったところだ。何か質問あるか?……ないのな。じゃあすぐ外に来い。」


やる気のなさそうなテイチ先生によるHRが終わり、ヒスイに話しかける。


「王族って何人いるの?」


「王族?分からないけど国王陛下の親戚とか合わせたら、何百人っているんじゃないの?」


マジか!

じゃあ王位継承権が無くなるとか、王家の血がぁとかにはならないのか。


「そういえば、噂で聞いたけど新しい王女様が見つかったって話だよ?何でも銀髪の美しい姫様なのだとか。」


「へぇ、そうなんだ。」


もう街にまで噂が流れているのか。


まぁ、人の口に戸は立てられないと言うし、これは王家から何らかの言葉があるのも時間のうちかもな。


「集まったかぁ?じゃあ今日も前回と同じ、ペア組んで打ち合いしろ。」


「やろうか?」


「そうだね。お願いするよ。」


話の流れでヒスイとペアを組むことになった。


思えば剣で戦うのは始めてかな?

いや剣以外でも戦ったことはないのだが。


「いくぞ!!」


はあっと声を出して斬り掛かってくるが、遅いし軽い。


「くっ!レスト、強いな!」


だが負けんとでも言いたそうな顔でこちらを見るが、僕まだ攻めてないんだけど。


「あのさ、多分剣の大きさがあってないと思うんだけど。」


「これ?」


ヒスイがもっているのは両刀の大剣とまでは行かないが、かなり大きな剣だ。

女の子で、ましてや魔術師の彼女の筋肉にはキツイだろう。


「うん。僕の持ってるような短剣とかにしたら良いと思うよ。」


「むむ?そうか。考えてみよう。」


その後また前回と同じように先生からの指導が入り、剣術の授業は終わりになった。


 ◇ ◇ ◇


ご飯を食べて午後。


「あそこの的に当てるように初級魔法を打ってくださいね。」


連れてこられた訓練場には、弓道の的みたいな丸いのが立っていた。


「こんな風に当てるんですよ。」


と言いながら撃った先生の水の玉は的の真ん中に当たり、弾けた。


「じゃあ、端からどうぞ。」


5個ある的に均等に並び、列ごとに回していく。

意外に回転率が高く、すぐに僕の番が来た。


「はっ!」


放った風魔法は的を少し傷つけて終わる。


こんなもんだろう?

周りを見るが当てている人のほうが少ないようだ。


僕も次回からはいい感じに外すようにしよう。


今日も何もなく終わる………かと思ったが授業終わりに先生に止められた。


「少しいいですか?」


「は、はい。」


なんだろうか?バレたのか?

いや。完璧なはずだから……それはないと思いたい。


「この論文だけどあなたとヒスイさんが書いたんですよね?」


出されたのは、入試のときに出した論文。

あぁ、これのことか。


僕は納得し、返事をする。


「僕も少し手伝いましたが、主にヒスイさんが書いているので僕はあまり分かりません。」


「そ、そうなんですか。分かりました。」


先生はそう言い残して去っていった。

まじ怖かったとだけいっておこう。


 ◇ ◇ ◇


5日、6日目と剣術、魔法術、体術を仕込まれて僕らは一学年合同遠征を迎えた。


「楽しみだね!」


「楽しみだな!!!」


「そうだね!」


僕ら3人もハイテンションだ。


日程としては、一日目はご飯を作ったり沼地を探索したりのオリエンテーション。


二日目で魔物と戦うなどの交戦体験。

三日目は班での自由行動となっている。虎の沼地で二泊三日の合宿を行う。


先生たちも10クラス3コース分で30人とプラスアルファいるし、問題は起こりずらいだろう。


「なんと言うか、すごい大群だよね。」


「壮観だな!!」


900人の大移動だ、その姿は牛の大移動みたいな圧巻さがある。


「ったく歩いてなんてめんどいな。」


テイチ先生がブツブツ文句言ってるが僕らは無視して歩き続けた。

沼地前の町まで学園都市から歩いて5時間。20キロ強ある。


二泊三日、長い合宿になりそうだ。

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