第32話 魔法の属性

90階なので、花が咲いているかと思って探してみたが、見つからなかった。


「もう一個上に行くか。やだなぁー。もう戦いたくないよ。」


『まぁ頑張れ。』


僕は収納から木の実を出してポリポリと食べながら、階段を登った。


「ワンパンで終わらせたいな。」


なんて願望を抱くが、多分今度も泥試合にもつれ込むだろう。


殺らないと殺られるみたいなのは嫌なんだけどさ、僕の強さがこれくらいだからしょうがないんだよな。


死ぬ前に魔法で脱出はできるが、やはり痛いのは嫌だし、負けたくない。


「さぁて、今度の魔物は?」


階段からひょっこりと頭を出して見る。


そこにいたのは、ゴリラが燃えてる見た目のゴツゴツの魔物。


『あれはファイアゴリラだね。』


「……そのままだな。」


「ウホホホホホ!!」


僕に気づいたゴリラは、胸を叩きながら走ってくる。


『あれは凍らせて体温を0未満にすれば自動的に死ぬよ。それ以外に倒す方法ははっきり言って君にはないね。逆に言えば魔法特化の君には相性がいい。』


僕的には魔法特化な自覚はないのだけど。


「さいですか。」


迫りくる炎のブレスを躱しながら返事をする。


さぁて、冷やすのか。

凍らせればいいかな?


ってか、氷って水魔法かな?


僕は逃げる足を止め、ゴリラに振り返る。


降らせ降らせ異界の空を上には足りず凍らせ凍らせ異界の海を下には余る冷やせ冷やせ異界の大地を中には居られない。絶対零度」


魔力を大量に注ぎ込み冷凍庫とかのイメージで魔法を使う。


「ウホホーー!!」


「おお!!」


足から凍っていき、明らかにゴリラは弱ってきている。


その証拠に胸のあたりに燃える炎がどんどん小さくなり、逆だっていた毛もしゅんと垂れてきている。


「ウホッ!!」


ゴリラは精一杯胸を叩き、体温を上げようとするが、それもドンドン迫ってくる氷に拒まれる。


「…くっ……!」


魔力を注ぎ続けているこっちも結構辛い。


「ウホホー!!!!」


最後に強く声を上げ、全身が氷に包まれたゴリラは絶命した。


「ぶはぁ……キツかったぁ。」


『よくやったね。今回は花が咲いてるといいけど。』


僕はだるい体に鞭を打ち、花を探す。


「…………あるかな……。」


入り口からぐるっと一周探してみたが、花自体見当たらない。


これは、また上に行かないと駄目かな?


そう思い、ため息をついたときだった。


「…あった!!」


一番奥側の壁と床の隙間に栄養を求めるように、力強く生えている花があった。


でも、色は全体的に黒で一部分が暗いオレンジ色だ。


「これがソラの花?」


王女様が言っていた空のような色とは程遠かった。


『ソラの花はその時の空の色と同じ色をしている。今は朝の5時位だから丁度それくらいじゃない?』


「へぇ、そうなんだ。」


僕は花を優しく摘み、念の為魔石が落ちてないか確認し、落ちてないので少し落ち込み、下へと降りていく。


 ◇ ◇ ◇ 


「…もう日が昇ってる。」


降りるのにも時間がかかった。

移動魔法は魔力を使いすぎたせいか、使えなかった。


僕は手に持つソラの花と空を見比べる。


「本当に対応してるんだね。」


日が昇り、明るさが占める空の割合が増えるとともに、ソラの花もオレンジに色気づいていく。


『帰ろうか?』


「うん。帰ろう。」


海辺の崖から見る朝日というシチュエーションにみとれていた僕は、残りの魔力で身体強化魔法を重ねがけし、走り出す。


朝の冷たな風が心地よかった。


 ◇ ◇ ◇


「すみません!遅れました。」


教室の後ろのドアから入る。 


「10分の遅刻ですよ。気をつけてくださいね。」


「はい。」


ターシャ先生に怒られて、席につくとマッソが小声で話しかけてくる。


「どうしたんだ!?遅刻なんて!!」


「そうだね………人助けをしてたんだ。」


「そうか!なら良い!!」


ニカッと笑い前を向くマッソ。

まぁ間違ってはないんじゃないかな?


『本当にいいのあれで?伝わるかな?』


「良いんだよ。もし伝わらなくても僕と彼女は本来交わることのない二人だ。通りすがりの魔王ってことにしておこうよ。」


『お人好しだねぇ。』


いいんだ。

あれは僕の自己満足。

自分と同じ絶望の顔をさせたくなかったとかいう、ただのワガママだから。


「じゃあ外に行きましょう。」


「「はい!」」


ターシャ先生の声で皆が待ち望んだかのように一斉に立ち上がる。

まぁ、座学は眠くなるしつまらないから、実際待ち望んでいたのだろう。


「…あのさヒスイ……内容教えてれない?」


「いいわよ。」


僕はヒスイに10分間の内容を教えてもらいながら、外へと向かった。


 ◇ ◇ ◇ 


「まず適正属性を測定します。この石を順番に触ってください。」


ターシャ先生が出したのは赤.青.緑.茶.黒.白の6つの石。

色的に赤が火、青が水、緑が風、茶が土、黒が闇、白が光だろう。


「平民は基本2属性です。3属性は珍しいですね、4属性はほんの僅かで、5属性以上はとても貴重です。じゃあ、この石に触って魔力を流してください。何らかの事象が起これば適正ありです。」


ズラッと並んだ列の前から流れるように石を触っていく。


さて、全属性持ちなのだが、2属性ぐらいにしとくか。

それが普通そうだし。


属性は………風と光かな?

風で攻撃全般、念の為回復のために光が最適だろう。

うん。そうしよう。


少し前に並んだヒスイが石を触ると、赤の石は燃え、青の石からは水が出て、緑の石からは風が吹き、茶の石からは土が出てくる。

さらに、白の石は光り、黒の石からは霧が出る。


「まっまさか!全属性持ち!!」


「はい。そうですよ。」


先生の声にヒスイは気にしないように言うが、頬が嬉しそうに上がっている。

皆からも拍手で褒め称えられているから嬉しいのだろう。


「闇だけか!まぁいいか!!」


マッソは一瞬落ち込んだが、すぐに元に戻り、隣の女の子に筋肉を見せつけている。


あれセクハラじゃないのか?

なんて考えていたら僕の番だ。


緑と白の魔石以外には魔力を込めずに、なんてこと無くやり過ごす。


「お疲れさまです。皆一つは適正があったみたいで良かったです。次は適正のあった属性の初級魔法を使います。」


呪文はさっきやりましたね。

と言った先生は、見本で火、水、風、土の初級魔法を使う。


先生は4属性適正らしい。


「じゃあ皆さんもやってください。イメージするんですよ。」


周りと同じように僕も風の初級魔法を、少しだけ魔力を込めて使う。


ここでヘマをやらかすようなバカではないのだよ!!


風を与えよ凛々しさで包むウィング


ほらね?一般的な風の初級魔法だ。


「うん。普通ですね。」


先生からも普通のお墨付きをもらった。


何とかやり過ごせそうだな。

僕はほっと胸を撫で下ろし、光の初級魔法を使った。

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