4 病の王女編

第26話 入学式

いよいよ来ました。入学式の日でございます。


日本の方々はこの日を特別に思い、可愛い子やかっこいい子がいないかと式場をウロウロし、さて好みの子を見つけたとなっても話しかける度胸もなく、近くをウロウロして声をかけてもらえないかなぁーと、咳払いなどをするが相手は友達との話に夢中。


そんな感じだと思います。


………話を戻します。



僕はこの異世界で日本とは違くていじめられないし、目立たないモブはモブ、モブofモブを目指したいと思う。


今は早めに起きてしまったので、腹ごしらえとして酸っぱい実をいつもより多めに食べ、森でシャワーついでに薬草採集クエストを受けて、部屋に戻ってきたところだ。


「よいしょっと。うん、制服って感じ。」


Yシャツもセーターもブレザーもネクタイもローファー何もかも日本の制服と同じ感じ。


あっちに比べて少し硬かったりゴワゴワしてたりするのはまぁご愛嬌だろう。


鞄に一応今まで貰ってきた説明の資料などを詰めておく。


「…さて、問題はこれだな。」


持ち上げると白い裾が垂れて地面にこすりそうになるこの、


着ていったほうが良いのかな?


入ってたってことは来たほうがいいのか。でも、学校で白衣って化学の先生じゃあるまいし。


僕の学校に理系で白衣を着てる先生はいなかったな。

なぜか古文のおじいちゃん先生が白衣を着ていたが。


『私のローブは?着ないの?』


………魔王が寂しそうに言うので、白衣は鞄に詰め込んで、制服の上からローブを羽織った。


「…案外合うなこの組み合わせ。」


紺の制服に魔王の黒と赤のローブが映えている。


『うんうん。いいねいいね!!イヤリングも指輪もいい感じに飾ってるよぉー!!』


魔王さんが楽しそうで何より。


「もう行かないとじゃないのか?」


「まじか!」


フローラに言われて時計を見るともう7時30だ。

8時集合だから早めに着くにはこれくらいがいい。


「鍵持った、制服着てる、鞄持った、あとは…………大丈夫!」


外に出て鍵を閉める。


「ふぃー!!」


スロを肩に乗せ、まだ眠そうなニルを抱えあげるる。


「いってらっしゃ~い」


受付にいた制服のお姉さんが挨拶してくれた。


「いってきます!」


外に出ると、朝の爽やかな日差しで照らされて眩しかった。


「新入生はこちらでーす。自身の教室に向かってくださーい。」


学園についたけど、結構混んでいた。


主に新入生たちがあっちへこっちへの大混乱。

僕は巻き込まれないように離れながら地図を見る。


Cは……会議室C集合ね。


クラスはまだ決まっていない。

今決まっているのは階級ランクだけ。


入学式が終わってから各コースに分かれるんだとか。


「こちらCの方!!」


お姉さん達が所々にいて案内してくれるので、迷わないな。


「おお!少年!久しぶりだな!!」


「あぁ、お久しぶりです。」


会議室Cに入ろうとしたら後ろからムキムキ君が来た。


………僕この人の名前知らないな。

ヒスイさんの名前も入試のときに知ったしな。

名前を聞くようにしておこう。


そんなことを考えながら部屋の後ろの席に座る。

見るからに自由席みたいだ。


「少年!名前はなんと言うんだ!!」


あちらから聞いてくれた。


「レストです。あなたは?」


「俺は!マッソー・トレーニングだ!!子爵だ!!」


「僕は………平民かな?」


間違ってはいない。

もう魔王爵なんてないかもだし、いままでそれで優遇されたこともないし。


でも、これはまずいかな?貴平差別があったりするのかな?


「そうか!よろしくな!レスト!俺のことはマッソと呼べ!あと、俺には敬語を使うな!!筋肉と心で通じ合った仲だろ!!」


「いや、まだ二回目だけど。でもわかったよ。よろしくマッソ。」


手を出して握り合う。


彼は貴族とか気にしないみたいだ。

子爵なのも関係してるのかな?


「おーい、集まったか?じゃあ出席取るぞー。」


説明会の気だるそうな試験官がやってきて、端から名前を読んでいく。


「レスト・ローズド・サタンヴィッチ・ルシファー、なんだクソなげぇな。」


「はい。」


………恥ずかしい。

なんというか、キラキラネームみたいな感じた。


チラ


周りを見るが、それほど嘲笑うような感じはない。それどころかなんか一目置かれてる感じ?


「僕の名前って変?」


「いや!長いのはそのぶん高位の貴族ってことだ!レストは平民なのにながいんだな!!」


「まぁね。教えてくれてありがとう。」


そういうことか。

じゃあやっぱりレストって名乗ったほうがいいな。


思い出すのめんどいし、なんか大変そうだし。


「これから屋内の訓練場に集合だ。そこで挨拶とかしてそのままコース決めだから考えとけよ。じゃあ動け。」


それだけ言って試験官ことテイチ先生(さっき言っていた)が去っていく。


「行くぞ!」


「おう。」


マッソに連れられて中の訓練場まで動く。


外の方は行ったことがあるが、中は初めてだ。


新入生全体が動くのですごい大移動で道が塞がっていたが、マッソが一歩出るとそこに道ができるのだ。


大きい身体って便利だね。


ヒスイはどこなんだろう?

見てないけど。


こっちに来て初めての知り合い? なんだから仲良くしておきたい。


それと、ヒスイはなかなかに頭がよくそこそこに信用できたりもする。


やっぱ人脈って大事!!


まぁ、完全に信じたわけではないのだが。


「着いたぞ!!」


「そうだね。」


色々と考えていたら訓練場に着いていた。


中の訓練場は体育館みたいな感じだった。

前にはステージがあり、檀も置かれている。


C階級のスペース内で自由席らしいので、マッソと隣り合って後ろの方に座る。


「あーあー、聞こえてますか?」


少しすると、日本で言うマイクみたいな感じで大きな声が訓練場に響いた。


それまでざわついていた訓練場内が一気に静まる。


「えー、これから4004年度の入学式を始める。一同起立!」



ザザザ!


音を立ててみんなが一斉に立ち上がる。リハでもしたのかという合いっぷりだ。

僕も遅れないようについていく。


「礼!着席!学校長挨拶。」


その声に合わせて照明が落ちる。


「ごほん、ごほん。」


咳払いが聞こえた後に、暗闇の中に人影が見えた。


「えー、入学誠におめでとう。私はこの魔法学園の学園長のマジカだ。これからよろしく。貴殿らはこれから様々なことを学び、行く行くはこの世界に名を轟かすになるかもしれない。英雄は孤独というが、そんなことはない。勇者には仲間が必要だし、聖女には信者が必要だ。信頼し合え、戦場渦の中で背中を預けられるような、生涯を共にする仲間がこの学園で見つかることを祈っている。思い切り励むように。」



パチパチパチ


生徒や教員から学園長に拍手が送られた。


________________________________________


その後堅苦しい偉そうなおじさん方の話を聞き、終了となった。


「ランクC、こっち来い。」


テイチ先生の元へと生徒たちが集まる。


「じゃあいよいよお楽しみのコース決めだ。コースは3つある。魔術と総合、剣術だ。魔術コースは主に魔法を使うコースだ。剣術コースは主に剣を使うコースだ。名前通りだな。総合コースは魔術、剣術の両方を使うコースだ。それぞれに1/3が行くようにバラけろ。じゃあ、左から魔術、総合、剣術で列になれ。」


ウワーッて感じ生徒達が騒ぎ出す。


「一緒に魔術行こうぜ!」

「総合コースかなぁ?」

「おい、俺の足を踏むな!!」


すごい喧騒だ。


「俺は!総合にするぜ!!お前はどうする!レスト!!」


マッソが肩をバシバシ叩く。

痛い。


コース決めか、そうだな………魔術はなし。剣術か総合だが………。


「僕も総合にするよ。」


「おお!!そうか!一緒だな!」


ニカッて感じでマッソが笑う。

イケメンは眩しいぜ。


「あっいた、レスト君!久しぶり。」


いきなり話しかけられて、振り返ると特徴的な翡翠ヒスイ色の髪の毛。


「ヒスイさん!久しぶりです。どこの階級ですか?」


ヒスイさんと軽く握手を交わし、挨拶する。


「Cだぞ。君は?」


「僕もCです!」


「そうか、同じだったんだな。君はどのコースにするんだ?」


「総合です。ヒスイさんは?」


「私も総合だ。いっしょだな!」


嬉しそうに笑うヒスイさん。

でも意外だな、魔法コースだと思ったが。


「魔法と悩んだのだが、近接戦になったときの手段がほしいからな。」


「そうなんですね。」


成程、納得した。

魔法が得意だが、それに傲らず弱点を直したいということか。


「レスト!この女性は誰だ!?」


マッソが少し声を小さくして聞いてくる。


「えっと、入試のときに知り合ったヒスイさん。」


「そうかそうか!!知り合いか!親友の知り合いは俺の親友だ!!初めてだ!俺はマッソー・トレーニングだ!気軽にマッソと読んでくれ!!」


おいマッソ。

それだと親友の知り合いの知り合いも、その知り合いも又その知り合いも親友になるだろう。


お前親友何人いるんだよ?


「あぁ、よろしく。私はヒスイ・アオ・ラストレアだ。」


ぎこちないが、マッソとヒスイが手を交わす。


「みんなで列に並ぼうぜ!!」


「そうだね。」


「そうですね。」


マッソに続いて真ん中の列に並ぶ。


周りも大体決まっているみたいだった。

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