side Y&T 3

王都に来た翌日、俺達は城の訓練場に来ていた。


「君達にはコース選択をしてもらう。剣と魔法だ。基本自由だが魔法の方は適正がないと使えないので注意するように。」


喋っているのは爽やかなお兄さん。騎士団長らしい。


「じゃあ剣選択の人は俺の方に、魔法選択の人はあの帽子をかぶった人の方に行ってくれ。」


彼の指す方に、ローブを着てとんがりボウシをかぶったいかにもな魔女さんがいた。


「田中、どうする?」


山田が不安そうに聞いてくる。


「俺は剣かな。」


「そうか。僕は魔法かな。」


じゃあねというと、山田はあのお姉さんの方へ歩いていった。


俺もお兄さんに近寄るが、明らかに人気がなかった。


見る限り俺を入れて3人。


多分、同級生達は魔法が珍しくて使いたいのだろう。それと、男子はあのお姉さんがキレイだから、女子は剣を握りたくないとか筋肉はやだとかそんな理由だろう。


俺はこのお兄さんもカッコいいと思うけどな。


「魔法適性検査が終わるまでまとう。」


少しすると、トボトボと男子3人女子2人がこっちに来た。


多分適正がなかったのだろう。


「これで全部か?っと、赤井くんってのはどの子だ?」


女子の一人が魔法の方にいる赤井を指す。


「おーい。赤井くんはこっちだ!!」


「ッチ!なんでなんだ?」


赤井くんは機嫌が悪そうにやってきた。


「君は勇者だからな。剣も魔法も使えるようにならないと駄目なのだ。そして、初めは剣からだ。」


「っチ」


赤井くんは舌打ちして置いてあった木刀を手に取る。


「俺とお前で戦って、俺が勝ったらあっち行ってもいいよな?」


「あぁ。構わないよ。」


お兄さんは爽やかに答えて赤井くんと同じく木刀を持った。


「さぁおいで。」


俺達から少し離れると、そう言って構える。


「うっせ!言われなくても行くっての!!」


赤井くんが剣を容赦なくお兄さんに叩き込む。


「つっ強い!」


女子の誰かが言った。


そう言ってしまうのも仕方ない。赤井くんは剣をまともに握ったこともないのに、騎士団長を攻め続けているのだから。


騎士団長は防戦一方で赤井くんに攻撃ができていない。


すぐに決着がつく。



そう思ったが、なかなか終わらない。


それどころか、攻め続ける赤井くんはハァハァと息切れし、受けばっかりの騎士団長は息1つあがっていない。


「っ!なんでだよ!!」


赤井くんがそう叫んで攻撃するが、明らかに弱かった。


その攻撃は騎士団長が出した手によって優しく受け止められる。


「うん、悪くないね。初めてにしてはすごいと思うよ。でも、すこし全体的に雑かな?剣ってのは鏡だ。持つ人の心がよぉく写る。君の剣からは『相手を倒す』それしか伝わってこない。それでは勝てないよ。だから、お手本を見せてあげるよ。」


そういった騎士団長は剣を肩の前で、対峙する赤井くんに向けてまっすぐと構えた。


「剣ってのはこう使うんだよ?」


その瞬間、俺からしたら何も起きてないかのように思えた。だが、勝負はついていた。


赤井くんが地面に倒れ、騎士団長がその喉元に剣先を触れるか触れないかの距離で向けている、


「じゃあ、練習しよっか!」


お兄さんはそう笑って赤井くんに背を向ける。


「あっ危ない!」


赤井くんが立ち上がり、その無防備な背中に剣を叩き込もうとする。





が、次の瞬間赤井くんは首根っこを掴まれて、訓練場の壁に押し付けられていた。


「がはっ!」


赤井くんが嗚咽をあげる。


それを見て、騎士団長は冷酷な冷め切った顔で言う。


「勇者赤井、お前はこれから剣を取り、それを振るうであろう。それが正義の為か悪の為かは知らぬが、その姿は勇者であると同時に、騎士でもある。騎士というのは常に驕らず謙虚で紳士で、王家に王国に仕え、如何なるときも民の為国の為に尽力する者だ。騎士は正義である。その正義は人によって違うが、無防備な背中に一方的に自己中心的に剣を振るうのは絶対に正義ではない。絶対にだ。剣を振るう時と場所と相手を考えろ。」

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