第20話 冒険者
外に出たらまだ昼だったのでその足で冒険者ギルドと呼ばれるところに行くことにした。
「うわぁ、イメージ通り。」
冒険者ギルドと書かれた看板がかかっている建物は、予想通り木造で酒場と受付があった。
「すみません。門番さんからこれを渡されたんですけど。」
「はい。冒険者登録ですね。ご説明します。」
優しい顔したお兄さんが慣れた手付きで説明してくれる。
冒険者には階級があり、
S
特A
A
特B
B
C
D
E
F
G
の10段階に別れていて、依頼や魔物の難易度もこれで区別されている。
2人以上4人以下ならパーティーを組めて、5人以上ならクランを組める。
冒険者カードは身分証明書として使えて、特殊な素材で作られてるから、偽造は難しい。
色んな人からの依頼があり、自分の階級の下は全部、上は一つ上のものしか受けられない。
階級が高いほど命の危険が高まる。
あとは日本で言う利用規約みたいな奴だったので覚えてない。
「では、こちらがレスト様の冒険者カードとなります。この上から血を垂らしていただくことで私達との契約が完了します。」
契約ねぇー。先程の説明ならいい気もするが、呪いとかかけられないかな?
「分かりました。」
手渡された短剣………ではなく、自分の剣で指を切ってカードに血を垂らす。
「これで登録完了です。」
カードに垂れた血は滲むことなくすぐに蒸発した。
どんな仕組みなんだろうか?
まぁ、登録はできたし依頼でも受けようか。
今の僕にはお金が足りないのだ。というか無いのだ。
どんな世界であってもお金というのは大事なのだよ。
世知辛い世の中だね。
貼り出されている依頼を見る。
僕は、GランクだからFまで受けられるのか。
Gは基本雑用だな。ゴミ拾いとか薬草とか探しものとか。
Fでゴブリン退治、カエルの駆除とか。
僕は1枚の紙を剥がして受付のお兄さんに渡す。
「すみませんこれ受けます。」
「承知しました。ゴミ拾いですね。説明しますと、歩合制でこちらの測定器で100で100ヤヨです。」
ヤヨ………通貨の単位か?
「100ヤヨで何ができますか?」
「そうですね、飲み物を買ったり、果物を買ったり、お菓子を買ったりでしょうか?」
「1000ヤヨだと?」
お兄さんに少し詰め寄る。
「ええっと、少し豪華なディナーや軽い細工物とかでしょうか?」
どうやら1ヤヨ=1円と考えて良さそうだ。
「ありがとうございました。行ってきます。」
「ありがとうございました。」
挨拶をしてギルドを出ていく。
僕としてはゴロツキに絡まれるかと思ったが、意外に静かで安心できた。
「ごみ拾いね。頑張るか。」
お金のため、僕は頑張る!!
◇ ◇ ◇
街というのは一見きれいでも、よく見れば汚い所など至る所にあるのだ。
例えばこの花壇。
表から見れば花がキレイだが、裏から見るとあら大変。投げ捨てられたゴミが沢山見えてしまう。
ギルド貸出のトングみたいなやつでゴミを掴み、麻袋に入れていく。
片っ端から道をキレイにしていくのはとても気持ちいい。
なんか、心までキレイになってる感じ!
◇ ◇ ◇
「もうこんな時間か。」
一心不乱にゴミを集め続け、とうとう門の前まで来たところで暗くなってきたので、終りにした。
「すみません、これいいですか?」
「はい。お疲れ様でした。」
昼のお兄さんがまだいた。
お勤めご苦労さまです。
「こちらですね。全部で3752ですね。こちら端数切り落としの3750ヤヨです。どうぞ。」
僕は出された硬貨を受け取る。
1000と書かれた四角い銀の板3つと、500と書かれた金の丸い板1つと、100と書かれた銀の丸い板が2つ。
10と書かれた銅色の板5つ。
「ありがとうございました。」
半日働いたにしては少ない気もするが、約5時間で3750円。時給750円と考えると普通なのかな?
「お金は地道にだよね。明日は合格発表だって言ってたし早めに寝るか。」
僕はフローラ親子を抱き上げて、図書館へと向かった。
◇ ◇ ◇
「ふぃー!きゅぃイ!!!」
「ん………ふぁあ。おはよ。」
スロが腹の上で声を上げながら跳ねていた。
「起こしてくれてありがとう。」
僕はスロを抱きしめて、背を伸ばす。
『君は身内に優しいよね。』
「身内にじゃなくて、身内にはだけどね。」
僕はみんなに優しいような英雄様ではない。
来る者はなるべく拒み、去る者はなるべく追う。
そんなひねくれ者の魔王であり、賢者なのだ。
◇ ◇ ◇
町を歩く人の中には、そわそわして早足の人が多い。
「受かるかなぁ?」
合格者の中の平均あたりを狙ったが、それが大きく外れていたら、受からないし、受かったとしても上位クラスとかに入って面倒な目に合うんだ。
「どいてくださーーい!!どけて!」
寝癖をつけたまんまの職員さんが、受験生の山を掻き分けて紙を貼り出す。
B と大きく書かれた紙からドンドン貼り出されていく。
「よっしゃー!!Bだ!」
「くそっ!Bにない!」
一喜一憂の声が聞こえる中、僕は全く前が見えずにいた。
前にいるのは、筋肉ムキムキタンクトップの赤髪の青年。
身長が190を超えてそうな巨漢に遮られて前が全く見えずにいるのだ。
「んぅ!」
背伸びをするが、それもムキムキに遮られる。
「厶、少年。見えてないのか?ならば俺の肩に乗れ!!」
そう言ってムキムキ君は背をかがめてくれる。
「あっ、ありがとうございます。」
お言葉に甘えて、肩の上に乗らせてもらった。
貼り出されたのはB~Eの紙。
この学年の入学人数は900人。
合格したら3コース[魔術:総合:剣術]で分けられるそうだが、ここで発表されるのは各階級の合格者だけ。
階級というのはどれくらい強いのかで別れてて、一番上がA。そこからはB.C....とEまである。
各階級で2クラスずつあり、同階級間の強さの差はない。
それが3コース分あるので掛け算で表すと、
となる。
各コースのAクラスの1クラスは貴族様のご令嬢とかご子息とか、国外の権力者、王家の推薦などなどの所謂
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