side Y&T 2

ガラガラ


硬い木が地面に当たる音が響く。


「何この音?」

「人?」

「嘘だろ?」

「は、はやくなんかしようよ」

「助かるか?」


久しぶりに聞いた人工的な音にクラスメイトたちは興奮気味だ。


「hwyuzvqyebzhsywtgzis?」


現れた馬車?から重鎧を着込んだ騎士たちがぞろぞろと降りてくる。


「dtwrqtiqpsbevvcgwysj.hwuvztaown?」


英語とも日本語とも似つかない異世界語を話した偉そうなおじさんが馬車から降りてくる。


「わ、私が通訳してみる、よ。」


確か言語系の能力を獲得していた女子が一歩前にでる。


赤井たちは相変わらず偉そうに椅子に座ってふんぞり返っている。不敬罪とかで捕まらないか俺は心配で仕方ない。


「hywuuabskuabao?」

「htauqgsyayatwtisbs」

「hrqfsggsfsfasibxiw、、、」


何回か会話をして通訳役の女子はこちらに振り返る。


「この人たちは私達の味方だよ!!天からのお告げで勇者様一行を迎えに来たって!!」


「お、おっしゃーー!!!」

「よっしゃ!」

「やったぜ!!」

「た、助かった!!」


クラスメイト達は皆思い思いに差し伸べられた救助の手に歓喜する。


でも俺はそう簡単には騙されない。こういうところの国ってだいたいろくでもないところなのだ。


「田中どうする?」

「そうだな。完全信用じゃないけどついていくしかないよね。」


田中と確認し、俺らも高そうな馬車の後ろの大人数用の馬車に乗り込む。


「平和に暮らせて、帰れればいいんだが。」


そんな誰かの呟きはみんなの喧騒の声で打ち消された。


 ◇ ◇ ◇


連れてこられたのは、ヤフリオ王国の首都。

その真ん中に位置する西洋風の城の最上階。


国王への謁見らしい。


言葉は通じるのって思うだろう。

あんなに苦労して話していたが、城の魔法使いの人が唱えてくれた魔法で完璧に通じるようになった。


感覚としては母国語が増えた感じ。

日本語に翻訳って感じではない。


勇者の職業をもつ赤井君が王様へ最初に頭を下げ、続いて僕たちが頭を下げる。


「面をあげよ。この度は異界より、よく参った。」


俺はその言葉に頭を上げて、王様を見る。


歳は50位。だが、皺がある顔は若々しく、肉体も筋肉がついていて、まだまだ現役といったところだ。


「今後貴殿らにはとして、王都で鍛錬を積み、約一ヶ月後の魔法大学の入試を受験して貰う。王国として最大限のバックアップを施し、やがてロシャナ公国の勇者と聖女に並び、追い越すような英雄になって貰う。大いに期待しているぞ。」


国王のその言葉に再度頭を下げ、僕等は与えられた部屋に戻っていく。


部屋は二人一部屋で男女別。俺は当然田中と一緒になった。


「すごいことになったよね。」


「それな。ただの高校生の俺らがいきなり勇者一行とか………。」


「うん。それに、この国も信じていいかだよね………」


田中がそういったとき、隣の部屋ーーーー赤井君達の部屋から大声が聞こえる。


「ふざけるな!!なんで勇者である俺が二人部屋なんだよ!!!それにあのじじぃ国王の態度はなんだ!?見下しやがって!!!」


…………みんなと一緒にいた時には冷静で口数が少なかったが、プライベートだから安心したのか、怒号がこちらまで聞こえてくる。


「………なんというか、誰も信じれないね。」


「俺らはずっと一緒に頑張ろうな。」


「うん!」


俺は田中と固く握手を交わした。


 ◇ ◇ ◇ 


時は少し遡り、唯一が起きた直後の王国中核。


「枢機卿により、勇者の予言がなされた。」


「「「オォォー!!」」」


「異界より参った者が勇者を選び、勇者もまた選んだとか言っていたが、そんなことは関係ない…………だろ?」


「ふふふ。仰る通り。我が王国にも勇者がいるとなれば公国、帝国への牽制。ひいては大陸での権力の安定が成されるでしょう。」


「それに、勇者以外にも聖騎士や聖女なんかの高位職業を持つものがたくさんいるらしいぞ。」


「「「オオオ!!」」」


「勇者が使い物に成らなくても別にいい。こっちに連れてきて訓練と称して最低限鍛えたら魔法大学にあずけよう。」


「そうですね、そうですね。お飾りですもんね。」


「死なれたら困りますものね。」


「いや。死なれても隠蔽できるだろう?」


「「「ハハハハハハ」」」

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