第14話 エピローグ
「ローブは耐性とかついてるし、何よりかっこいいから着けといてね!あと、宝石が付いてる方の指輪は魔王としての証明であり、今までの歴代魔王の意志の塊だから大切につけといてね!魔石がついてない方の指輪も魔公爵としての印であり、身分証明なんかも兼ねてるから無くさないでね!イヤリングは魔王としての力と強い意志を現してるし、結界が付いてるし、なにより私の本体みたいだから着けといてね!!ね!!」
僕はもうどうとでもなれ精神で言われるままイヤリングと指輪をつけ、黒いローブというかアニメとかで風で揺れてるヒラヒラみたいなやつを羽織る。
「おう、すっかり魔王っぽいな。」
『かっこいいぞ!』
なんて褒めてくれるが全然嬉しくない。
きゅー
スロが僕の頭を撫でてくれる。
ありがとう!君だけだよ!
僕はスロを抱きしめ、離さない。
「この様子だとニルが一階層に戻ってると思うからぼちぼち動かんか?」
『そうだね!私もここから早くでたいし、上に戻りますか!』
嬉しそうな魔王につれられ、部屋の奥の宝箱から山のような金銀財宝と昔の魔法書や文集を魔法でしまい、最奥にある円形の台座に乗る。
『そいじゃ、ワープ!!』
◇ ◇ ◇
「っ!あかる!」
僕は目をさすような明るさに顔をしかめる。
『これ、これだよこれ!この明るさだよ!』
ダンジョンの入り口がある岩の山の前で、魔王ははしゃぎまわっている。転ばないか心配だ。
「我はニルを迎えに行ってくる。」
フローラはそう言ってダンジョンに再び戻っていった。
「僕ってどれくらい強いの?」
不意に浮かんできた疑問を呟く。
あの夢を見た日から。いや、この世界に来たときから今までがむしゃらに鍛えてきた自分の力を知りたくなったのだ。
『そうだね。魔法だけだとS級と特Aの間位。剣だけだと特Aまでは行かないな。うーん。A級の下位、特B級とかかな?どっちも合わせてだと、普通の人相手なら負けなし。勇者とか魔王とか、S級の魔獣等と同じくらいかな?まぁ、君は魔王なんだけど。』
「そっ、そうか。」
剣のけの字も知らない日本人だった僕が、この短期間でそこまでになれたのは【能力】チートや賢者様、ゴブリンやオーガのような敵、スロやシモさんのような仲間、フローラや魔王のような師匠のような人(?)達のおかげだろう。
僕は改めてこれまでの出会いに感謝し、高く登った太陽のもとで大きく背伸びをした。
寝てしまっていたニルを連れたフローラと合流し、僕らは一旦ダンジョンに行く前にいた開けたところに戻ることになった。
「っ、シモさん!!」
僕は木に向かってジャブをするシモに近寄る。
「ブオ!」
シモは右手を上げてやぁといった感じで僕を出迎える。
「なんか強くなった?」
「ブォォ!!」
ボディービルのポーズをするシモは明らかにダンジョンに入る前とは違う。
筋肉は盛り上がり、なんか赤いオーラがつきそうな強者感がある。
『こんな強そうなくまは見たことないな。』
と、魔王も言っているし強いのだろう。
◇ ◇ ◇
僕は、川辺でスロと二人裸の付き合い。お風呂に入っている。
ちゃんと魔法で見えなくして人間シャワー状態で体を洗う。
ある時、スロに薬草を食べさせたら泡が出てきたのを利用し、頭から体まで同じだが、石鹸で洗えている。
「ほら、スロも洗うぞ。」
僕はスロの体をゴシゴシと洗う。
フローラ親子はここより上流で水浴び、シモさんは鍛錬、魔王は眠いといって寝ている。
思念体なのに睡眠は必要なのか気になるところだが、まぁ魔王だし何でもありなのだろう。
異世界に来て思えば休みなんてなかった。
この一ヶ月と少しの期間で僕は強くなったし、沢山の仲間と会った。
スロとの出会いは僕にとって必要なものだったし、シモとの出会いはスロにとっても大事なものだろう。
フローラ親子は正直言ってまだ悩むところはある。
娘さんを助けたのは事実だし、条件を出して交渉をしたのも僕だ。
でもそれは、彼女たちを信用するためにしたのであって、本当に僕に全てを捧げると言われると、正直不安だ。
僕に神獣というのは些か荷が重い。
僕自身、大それた人柄をしていないし、まだ自分のやりたいこととかが見つかっていない。
せっかくやり直す機会ができたんだから日本の頃と同じように不自由に生きたくはない。
「どうしようか?」
僕は、誰に投げかけたともわからない問を呟く。
星空はいつも通りキレイだった。
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