第11話 ダンジョン大進行

「して、これからどうするか?我と娘はどうとでもなるぞ。できれば娘の訓練はしたいがな。」


「ひとまずダンジョン攻略をしたいかな。さっき行ったのが54階層。100まであるらしいからそこまでは行きたい。」


そこで僕は欠伸をする。


「寝るか?」


「うん、ちょっと横になるよ………」


僕はそこまで言うとスロを抱きしめ、目を閉じた。


 ◇ ◇ ◇ 


「…ふぁぁ。」


見知らぬ天井、じゃなくて岩肌。


僕は体を起こす。


「よぉ、起きたか。随分寝たな。」


「そんなに寝てた?」


フローラはニヤけながら言う。


「2 日ほど。暇すぎて少しこの子と狩りに出掛けたよ。」


僕は足にすり寄ってくるフェンリルの子供、ニルと名付けた。を撫でる。


空間から木の実を取り出して食べながら背伸びをする。


「じゃあ、行くか。今日は僕は基本戦わないで君たちに任せるよ。」


僕の声を聞いてフローラ親子は進み始める。


「スロもおはよう。」


僕はその後ろをスロとついていった。


 ◇ ◇ ◇ 


フローラたちの戦いの感想は、強い。ただそれだけだ。


フローラは神獣らしい圧倒的な力で、ニルでさえ僕が起きるまでの狩りや生まれてから日が経ったことで強くなっていた。


今は80階層のボスを倒したところ。


徐々にニルの方に疲れが出てきたので僕はフローラにチェンジすることを伝えた。


さぁ、いっちょやりますか。

僕はスロとともに前に出た。


やはり、階層が進んだこともあり敵は強くなっている。


今までみたいに片手間で倒せるものではない。


僕が基本剣で戦い、スロにも攻撃してもらうというスタイルでどんどんと進んで行く。


 ◇ ◇ ◇


「90階層のボス。」


僕は、フローラ達を後ろに下がらせ扉を開く。


「ほぅ、ワイバーンか。」


フローラの呟きが聞こえる。


僕は、スロと目を合わせ、飛び出す。


「空斬!」


避けられることはなかったがあまり手応えは感じない。


スロも僕が引くと攻撃をしているが今一つだ。


「そいつは首元の光ってるとこが弱点だぞ。」


フローラのアドバイスが届く。


「スロっ!」


僕はワイバーンの尻尾を避けながら叫ぶ。


剣で切りつけていると、スロが近くによってくる。


「僕が投げるから、あの赤いやつを突けるか?」


スロは大きく跳ねる。


それを見て僕は、一歩下がり本気で地面をける。


「空斬、感覚の型。」


弾丸のように動き出した体が咆哮するワイバーンに向かっていく。


ワイバーンも僕に向けて爪を伸ばす。


「はぁぁー!!!」


剣を叩きつけるように鱗に食い込ませるが、それでも少し傷がついたくらいだ。


でも、それでいい。僕はスロの元へ着地し、そのからだを投げる。


キュゥぅうう!!


スロは声をあげながらワイバーンの胸に飛び込み、体を針のように変形させ光る首元に刺さる。


「ぐぁぁあ!!!ヴォぉオオオ!」


遺言として特段大きな咆哮をして、ワイバーンは死んでいった。


「やった!やったねスロ!!」


僕はその勝利をスロと喜んだ。


 ◇ ◇ ◇


僕らはまたフローラたちと攻撃役を交換……はせず全員で戦っていた。


91階層からは今までと違いその階層ごとが全部ボス部屋のようになっているのだ。


「ここは我に。」


93階層の敵、ワニ型の魔獣を見てフローラは一人前に出た。


?を浮かべる僕とスロをおいてフローラはワニに近づく。


「えっちょっ、食べられ………」


フローラはワニに何も攻撃せず、されるがまま食べられていった。


「いまたすけ、るっ!??」


近寄ると突然ワニが爆発して中から血だらけのフローラが出てきた。


「この魔物は外からの攻撃にはめっぽう強いが、中からなら一発なんだよ。」


ニシシと笑うフローラにあっそうと適当に返事をして僕は次へと進む。


「つれないやつだな。」


うるせぇよ。


僕は心のなかでそう呟き、94階層のおっきな鳥型の魔物に八つ当たり気味に攻撃する。


今度は魔法禁止で物理オンリーだったらしく、すぐに勝敗がついた。


「そういうお主もたいがいだがな。」


「神獣様に褒められて嬉しいですよーー。」


僕はスロを抱きしめながら魔石を回収する。


「ほれ、拗ねんな。次に行くぞ。」


フローラが扉を開ける。


今度は蜘蛛の魔物か。


と、思っていたら急にニルが飛び出した。


「えっちょっ…」


僕が叫ぶ前にフローラがやれやれという感じで飛び出し、ニルに加勢する。


数分も立たぬうちに倒れた蜘蛛を見て僕は聞く。


「フローラじゃあるまいし、ニルはどうしたんだ?」


「なんと、失礼な。ニルはあれだ、蜘蛛嫌いだ。我もわからんが何故か蜘蛛だけは好かんのだよ。」


フローラはニルをよしよしと舐めながら言う。


「誰にでも嫌いなものあるしな。」


僕は次の層へと足を踏み入れた。


 ◇ ◇ ◇


「ユニコーン!!」


僕は96階層のボスを見て驚く。


言わずとしれた人気者、馬に角が生えた虹色のユニコーンさんがいたのだ。


「魔物というよりはいいやつのイメージだけど。」


「ユニコーンは神の乗り物として有名だが、人を襲わないわけではないんだよ。」


そう言いながらフローラは魔法を使う。


僕も少し躊躇しながら剣で斬りかかる。


「こいつ、強いな。」


楽に行けるかと思ったが、角で防がれてしまった。


「せーのでいくぞい。」


僕はフローラの掛け声でスロとニルとともに駆け込む。


僕は剣、フローラは水魔法、スロは体当たり、ニルは噛みつき。


皆での攻撃でユニコーンは倒れた。


その跡には魔石はなく角が落ちていた。


「これ価値あるのか?」


フローラに聞くと、


「短剣にしたり王族のボタンに使われるんだよ。」


らしい。王族ってすげーな。


 ◇ ◇ ◇ 


97.8は毒の魔物と回復力が高い魔物だった。


それらはそこまで手がかからずたおせた。

多分だが91階層からは戦力のバランスが試されているのだと思う。


91の揺れる地面の地竜で体幹。

92の感覚がおかしくなるキノコで5感。

93で思考。

94で物理。

95で魔法。

96で団結。

97で治療。

98で火力。


それらを持っていないと倒せない魔物だった。


僕は99階層は何が必要になるのか少しワクワクしながら扉を開ける。


「っ!」


光が差し込む部屋の中心にいたのは朽ち果てた鎧をつけた骨の魔物だった。


彼は剣を持ち、その鋭い眼光でこちらを睨んでいる。


「僕が行く。」


みんなも反論はないようだ。


僕が剣を構えると骸骨はその刀に自分の刀を合わせた。


「よろしく頼む。」


僕はそう呟き完全記憶の魔法を使い、後ろに一歩下がる。


…………きたっ!


骸骨はすごい速さで僕に迫ってきた。


僕は剣を突き出し骸骨の一撃を防ぐ。


「今度は僕だ!!」


僕も一歩踏み込み攻めの型で攻撃する。

もちろん止められる。


僕と骸骨は剣を通して純粋に会話し楽しんでいた。


僕はわかる。

今も剣を合わせるうちに自分の技が磨かれているのが。

骸骨の剣もどんどん鋭く、急所を突いたものになっている。


「やれやれ、男は死んでも剣に惚れたままなんだな。」


フローラの呆れた声が聞こえる。


でも僕は剣を止めない。

だってこんなにも楽しいのだから。


 ◇ ◇ ◇ 


「はぁはぁ、行くぞ!!」


僕は何度目かわからない袈裟斬りを放つ。


ガッ!


骸骨の型にめり込んだ剣を僕は引き抜く。


相手は骸骨。骨のみ。なので剣を交えるうちに僕のほうが強くなっていた。


「もっと剣をあわせたかったけど、ここまでみたいだね。」


僕はそう言うと後ろに下がり今日イチに感覚を研ぎ澄ませる。


光斬こうさん!」


僕は彼との戦いで得られた空斬の先の技、光斬を放ち、骸骨を倒す。


骸骨の体が薄れていくうちに僕は語りかける。


「もしも、君にまたあったら。その時は友として。絶対だ。」


『絶対だ』


骸骨は消える間際、そういった気がした。


僕は消えた骸骨のあとに残った彼の愛剣を手に取る。


すべてを直そう叩いて重ねて繕う修復リペア


先の戦いでかけたところを直し、僕はその刀を彼に捧げるようにしてから、腰にさした。


これで3本目だ。

ゴブリンくんの西洋剣。

オーガさんの70cmほどの刀らしいもの。

そして骸骨の1m弱の刀。


「いよいよ100層だな。」


僕は隣から聞こえてきた言葉に周りを見る。


すでにみんな僕の横にいた。


「ふふ、いい戦いだったな。ほれ、行くぞ!」


僕はフローラにつれられ、いよいよ100階層へと踏み出した。


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