第9話 ダンジョンのボス達
ボス部屋は安全地帯なので、丁度いいと僕は一旦そこで休憩と睡眠を取り、21階層へ足を運んだ。
◇ ◇ ◇
「炎のステージか!」
僕は21階層の光景に心を躍らせる。
道の両端が燃えていて、所々にマグマの水溜りがある。
21階層からのテーマは炎らしい。
「ジキキキキキキキキキキ!」
出て来た魔物は体が燃え盛り、口からマグマの球を吐く、ハチのような奴だった。
「えいっ!」
剣を突き刺すとかんたんに死んでしまった。
「攻撃力は高いが、防御は弱いのか。」
僕は落ちた魔石を拾い21階層を進む。
◇ ◇ ◇
「ってことでやってきました。ボス部屋!!」
21.22.23......を危険もなく突破し続け、僕は3日めながら3度めのボス部屋に来ていた。
「たのもーーー!」
扉を開けると居たのは、マグマの沼を泳ぐ大きな鯛?みたいな魚だった。
僕が近寄るとマグマを吐いて攻撃してくるし、かといって遠くにいても、岩を飛ばしてくる。
それは別に痛くも痒くもないのだが、
「こっちの攻撃も当たらないんだよなぁ……。」
それが痛い。
近寄ると溶けそうだし、熱そうだし。
かと言って魔力は温存したいしでまたもやジリ貧だ。
僕は仕方がないので身体能力強化をかけて、鯛がマグマから跳ねるときに石を投げつけることにした。
ドンッ
鈍い音を立てて石が当たる。
鯛は大してダメージがないらしい。タイだけに。
「…………クソやろっ!!!」
腹いせに投げつけた石が鯛の目に当たって鯛がその体を大きく揺らす。
「ジギャぁぁぁああ!!」
おっきなマグマを吐いて来た。
僕は避けきらないと思い、結界を張る。
僕が無傷なのにより腹を立てた鯛が大きくマグマから跳ねる。
僕はそのタイミングで大きめの石を2発同時に投げる。
「ジギギギギギャ!」
鯛の頭と潰れてない方の目にあたったらしく、鯛は倒れ、マグマの沼がなくなり奥への道ができる。
?
こんなことは今までなかった。
僕は不思議に思いながらも、興味に逆らえず奥へと進む。
ついでに魔石を拾うことも忘れずにね!
「これは…………宝箱?」
沼の向こう、少し盛り上がったところにあったのは2つの宝箱だった。
片方は大きめのきれいな宝箱。
もう片方は汚く小さく細長い宝箱。
「これ完全に罠だよな。」
日本の昔話にも似たようなのがあったが、僕は引っかからない。
「ほいっと。」
そこら辺の石を2つの宝箱に投げる。
予想通り、大きい宝箱は魔物へと姿を変えて石を噛み砕いた。
ザク。
僕は一見宝箱に戻った魔物に剣を刺し、小さめの方を開ける。
「地図と………なんだ?」
中にあったのは1枚の地図。これはこのダンジョンのものだと思う。
30 階層のところに赤い印があるのでこれが現在地。僕は地図の端を見る。
「100層かぁ。」
一際大きな部屋が書かれている地図の上には100の文字。ここが最後なのだろう。
僕は短いような長いようなその数字を見て複雑な気持ちのまま、2枚目の紙を見る。
書かれているのは読めない文字なので、賢者様に翻訳してもらう。
『ヤッホー!ちーす、俺の名前はイカス!名前の通りイカしてるハンサムなおじさんだぜ!!
俺っちって未知なものに目がないじゃん?
だから、国王に言われた旅の途中に変なダンジョンみっけたから、気になって一人で潜っちゃったわけなのよ!
30層までは来たけど、この階層のボスめっちゃ強いのよ!チミもこれ見てるってことは倒したんでしょ?強かったよねウンウン。
まぁ、そこでもう今死にそうなのよ!
自分で言うのもなんだけど、オレっちって世紀の大魔法使いなわけよ。で、その素晴らしい魔法を絶やすのはもったいないじゃんか?だからここに書として残しとくわ。っても、もう死にそうで血がドバドバ状態で書いてるから、一個しか書かないよ!
教えるのはオレっちの代名詞と言われためちゃすごい大技の【
今まで溶かせなかった金やミスリルを溶かせるわけ!スゴくね?
で、そんなすげー液体を敵の上から降らせたらそりゃもう溶けるよね!!
かなりやべー魔法だからチミが悪い人だったら仲間にスゲーだろって自慢するくらいにして我慢してくれよ!!
あっヤベえ血が吹き出てきた!
じゃあな!ちゃんと使えよ!!!
PS.使わねーから俺の魔法で探ったダンジョンの地図を入れておくぜ兄弟!!』
なんかめっちゃムカつく文章だ。
でも、この書は本物らしく読むと感覚的に王水雨の使い方がわかった。
僕は一応理系なので王水のヤバさはわかる。
なんかすごい魔法と地図をゲットした!
僕はイカスさんに感謝しつつ31階層に向かった。
◇ ◇ ◇
「炎の次は雪ってか。」
31階層からは炎と相反して、雪の降る氷のステージだった。
雪の精霊っぽい奴や、強そうな雪だるまみたいな奴、氷のゴーレムや狼など多種多様な生物を僕は斬り伏せながらどんどん進んでいる。
現在37階層にいる。
そこで事件は起きた。
「ガオーー!!」
「ワオォーーーン!!」
ダンジョンの魔物である灰色の狼達と、僕でもわかる。銀色の神々しい光、伝説の神獣フェンリルが戦っていたのだ。
否、戦いとは言えない。ただフェンリルが攻撃されていた。
狼の魔物20匹ほどがフェンリル1匹と戦っている。
「ワオォーーン!!」
フェンリルが遠吠えをする。
その最中にもオオカミたちは大したダメージにはならないだろうが、攻撃を続けている。
そこで一つ疑問が湧く。
「なんでフェンリルは攻撃しないんだ?」
神話の中じゃ最強とも謳われた伝説の魔獣がいるのだそれこそ国の1つや2つ滅ぼせてもいいものだが、ただの狼を前にして突っ立っているだけなのだ。
そこで頭に声が響く。
『お主、そこの
聞こえてきた声に僕はあからさまに顔をしかめる。
ここはすぐ答えて助けるのがセオリーだが、相手はフェンリル。神話級の魔物だ何を求められるかわからない。それに助けて僕になんの利益があるというのだ?
なので僕は強気に言う。
「話だけなら聞くけど、それ相応の対価を貰うよ?」
『承知した!此度、我の生まれたばかりの娘がこの犬ころ共に攫われた。奴らは以心伝心が仲間内で出来る。我がここを制圧したとなれば娘が危うい。なのでお主に下の階層まで行って娘を助け出してもらいたい。』
僕はそこまで聞いて納得する。
つまり、フェンリルは狼を倒そうと思えば余裕で倒せるのだろう。その証拠に先程からの狼の攻撃でまったくもって傷ついていない。
でも娘を人質にされ、倒したらそのことが群れの本体に伝わるから変に動けないと。
僕はそこで生まれた疑問を投げかける。
「質問をしよう。一つ、娘もフェンリルのはずだがなぜ格下のこいつらにさらわれたのか?二つ、なぜフェンリルなんて伝説級の魔物がこんな寂れたダンジョンにいるのか?」
僕にも情は有るので助けたいものは助けたいが、マッチポンプなど疑おうと思えば疑う場所はいくらでもある。
『娘は生まれてまだ2日。さらわれたのは1日目のときだっただから対抗する力を持っていなかった。ダンジョンに来たのは娘に力をつけさせるため。子供のフェンリルは人間にも魔物にも襲われやすい。だからダンジョンで鍛えようとした矢先に………攫われた。』
話の筋は通っているし何より、話している声がどんどん震えて最後には今にも泣き出すか、はたまた激昂しそうなほど声を荒あげていた。
ここで僕は本当に聞きたい一つのことを聞く。
「………なんで僕に声を掛けたんだ?」
フェンリルは静かに黙って僕の目を初めて見据えた。
『ふふ、ははははははは』
「なんで笑うんだよ!?」
『いやすまんすまん。お主が馬鹿なことを言うのでこんな時に笑ってしもうた。そりゃあ、そんな高濃度の研ぎ澄まされた魔力垂れ流して、変な呼吸で周りの魔力吸ってる奴がいたら誰でも恐怖に思うし、我は縋りたくなるだろうよ。』
僕は言われて自分を見つめる。
「そんな分かるのか?」
『あぁ、わかるわかる。我のような神獣は無論、そこらへんの上位魔獣ですら気づくわ!その証拠にお主ここまででかなり魔獣に出会っただろ?それはお前の匂いがプンプンしてるからだぞ。』
「まっまじかよ………やたら襲われるなとは思っていたけど。でも、お前の覚悟はわかった。僕がその子を助けることをここに約束しよう。で、最後の質問だ。」
僕は威厳ある眼差しの中に僅かな不安を残して僕を見つめるフェンリルに言う。
「僕に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます