第3話 決意
これはなし、これもなし、これもなし、これもなし、これはあり、これもあり、これはなし……
僕はそこからずっと
そろそろ底が見えそうだが。
これはなし、これはあり、これもなし……。
ちょうどそこで下にスクロールできなくなる。
「これで最後か。」
時間も忘れてやっていた。自分で選べるというのが嬉しくて僕は集中していた。
使えそうな職業で、僕に似合うものを選んだ。
【暗殺王】【聖王】【魔術騎士長】【闇の勇者】【賢者】などなど強そうなのは他にも色々あったが僕がこの中で特に注目したのはこの二つだ。
【暗殺王】【賢者】
暗殺王は暗殺者の上位互換で、暗殺に長けているんだろうと思う。
賢者は多分膨大な知識や魔法に対する適正を持っているんだと思う。
なんでこれかというと、暗殺王は僕に似合っているし、賢者は魔法の適性と知識というところがやはりいいかなと思った。
鑑定なんかも知識があればいらないし、剣は努力でなんとかなりそうだけど魔法は適正がないと使えなさそうだからだ。
どっちかを選ぶといえば………うんこれだ。
僕は次に
だが、これは多そうだし最初に絞ったほうがいい気がする。
「魔法系の上位能力……スキルを表示して。」
能力よりはスキルのほうが呼びやすいので、スキルと呼ぶことにした。
僕が声をかけると目の前に限りの内容に見えていた一覧がコンパクトになる。
どれどれ……
【上級魔法術】【王級魔法術】【星級魔法術】【神級魔法術】【全属性適正】【全範囲魔法術】【超遠距離新魔法術】【全属性旧魔法術】【全属性全範囲全魔法術】
おい!
おい!!!
今やばいのを見た気がするぞ。
もう一度見る。
【全属性全範囲全魔法術】
うーーん。絶対強いよな。
まず適正ってやつ。見た限り適正がないと魔法は使えないっぽい?それか適正があれば威力が増すのか?
それと範囲。これはなくてもいいと思うがこれもあったほうが威力や命中力が高いと思う。
そして最後に新とか旧とかいうのはよくわからんが、あったほうがいいだろう。
よしっ。これは選ばなくてはならないな。
僕は何時間考えていたかわからないが声を上げる。
「職業は【賢者】能力は【全属性全範囲全魔法術】でお願いします。」
僕の言葉をきっかけに体が光って、意識が飛ぶ。
◇ ◇ ◇
意識が覚醒すると目の前には倒れたゴブリンがいた。
そうだ。油断はしていられないすぐにこいつの仲間が……。
僕は後ろを振り返る。
そこにはもう少し遅かったら届いていた包丁の刃があった。
「ッ!!」
僕は後ろに飛び去る。
そして感覚で魔法を使う。
「
「
体にパッシブ系の魔法がかかり驚くほど軽くなり力が湧く。
「これが……魔法か!」
僕は笑顔を浮かべ、ゴブリンと対峙する。
ゴブリンたちは僕を逃がす気はないようで、その距離をどんどん詰めてくる。
僕はそこでもう一蹴り下がり、詠唱を始める。
「
放たれた風の刃は手前にいたゴブリンに当たり、その首をいともたやすく切断した。
僕はどうしょうもない感情に襲われる。魔法が怖いような嬉しいような悲しいような切ないような。そんな複雑な思い。
でも、ここは戦場だ。躊躇している暇はない!
僕は歩みをすすめるゴブリンからまた一歩下がる。
そして、右手には
「
左手には「
両手に違う属性の魔法を浮かべゴブリンに放つ。
的となったゴブリンは跡形もなく燃えて、裂ける。
そしてやっぱり、胸が苦しくなる。
情を持っちゃいけないし殺すのは当たり前なのだがやはり悲しくなってしまう。
僕はその思いを消し去ろうと、落ちているゴブリンの剣を手に取り、振るう。
最後に残ったのは一番強そうなゴブリンだった。
そして奴は周りより少し長い剣を持ち、何よりしっかりと構えている。
多分剣に自信があるのだろう。
僕は奴の剣を吸収しようと魔法を使う。
「
これで僕は受けたゴブリンの剣技を吸収し、我が物にできる。
確信はないしこんな魔法初めて知ったのだが、感覚的にわかる。
「これが賢者の力ぁ……。」
僕はゴブリンにも身体能力強化のスキルをかける。
ゴブリンは?の顔をしている。
その顔に僕は言う。
「さあ、戦いを始めようか。」
◇ ◇ ◇
森の中に金属同士が当たる鈍い音が響く。
ゴブリンにも身体能力強化をかけて今剣で戦っている最中なのだが、ゴブリンの剣技というのは面白いものだった。
僕のスキに飛び込んでくるのは普通だが切り上げるところから下げまでの繋ぎが独特だし、多分その短いリーチで当てるために小手先の技なんかも多い。
賢者の知識では上位の魔物は剣術らしきものを使うとあったが、ゴブリンが使うという記述はなかった。
「けど、そろそろ終わりかな?」
僕は傷一つついていない自分と、ところどころ傷だらけのゴブリンを見比べる。
そう、僕が今押しているのだ。
はじめは初めて扱う剣に戸惑って劣勢だったが、完全記憶の力でどんどんゴブリンの動きやそのつながりを記憶し、技を返すことができるようになり、自分から攻めることもできた。
ゴブリンの技術のおかしなところや弱点を無くして更に上の技術にすることで僕はゴブリンの剣をいなしている。
まぁ、どれも賢者さんの力だけど。
肩で息をするゴブリンに僕はせめて一発で行けるように剣に魔法を付与する。
「
スン
と踏み込みゴブリンの間合いに入り、その胸に剣を突き刺す。
「グァッ、アァ」
ゴブリンは小さく悲鳴を上げて燃え尽きる。
「あなた達の死を無駄にはしません。ありがとうございます。」
僕は手を合わせて
「っはぁー。」
僕は合わせていた手を離し息を吐く。
すると、なんとも言えない吐き気が上ってくる。
「オェェ」
少し離れて僕は嘔吐する。
かなりこたえるのだ。精神的にも肉体的にも。
「でも、殺らないと。」
僕は口を拭い顔を上げる。
魔物って魔石があるんだよね?
そう聞くと賢者からの知識が頭に浮かぶ。
魔石は胸の中央あたりにある。宝石のような見た目。
僕ははじめに倒したゴブリンに近寄り、胸に剣を刺す。
刺した剣を少し動かすとなんとも言えない匂いとともに硬い感触に当たる。
「これか……。」
僕はそれを手で掴む。
血をぬぐえば見た目は不格好な黄色い宝石だ。
子供のときに喜んでいたおもちゃの宝石、あれくらいのサイズ。
僕は違うゴブリンに近づきそこからも魔石を取る。
◇ ◇ ◇
魔石を取り終わり、もう一度手を合わせたあと僕はゴブリンたちを一箇所に集め火を付ける。
「
ゴブリンたちは燃え上がり、やがて灰になる。
「
水をかけて火を消し、僕はその場から立ち去る。
空を見るともう暗くなってきていた。
「
僕は知りたいような知りたくないようなそんな気持ちになる。
………そうだ。ここは異世界だ、いつまでもいじめられてるままじゃない!
僕はさっきのゴブリンから貰った長めの剣を手に取る。
刃こぼれがひどいな。
剣には血の跡やかけたところがあり、お世辞にもいいものではなかった。
「
そう唱えるとみるみる剣が直っていく。
少し経つと、僕の手には新品らしい鋼の剣があった。
「すごいな……。」
僕は驚くとともに材料はどこから?と言う疑問が生まれる。
まぁ、魔法だし考えても仕方ないか。
そう思ったとき僕の頭に激痛が走る。
「いっいたい!」
今回は本気で痛かった。
「っ!」
数秒すると頭痛はなくなり、脱力感とともに僕は地面にへたり込んだ。
これは所謂、魔力切れ?
初めての魔法ではしゃいでたが、やっぱ力を使うとなくなるんだ。
僕は新しいことを知って嬉しくなった。
(賢者に聞けば一発でわかるのは言わないでおく。)
新しくなったゴブリンの剣を覚えた型どおりに僕は反復する。
この世界で僕は………自由を手に入れる!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
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