第2話 逃亡

「い、いったぁ。」


そう口では出たものの僕はさほど痛みを感じていなかった。


度重なるいじめで痛みには慣れた。

まぁ、彼らいじめる奴は痛がるのを見るのがいいらしいから僕は痛いというのが癖になっていた。


僕は顔を上げてそこらを見渡す。


前を見ても後ろを見ても、というか全方向が森に囲まれている。


上を見れば快晴の青空。下を見ればしっとりと湿った土。


こんな感じだ。


それと僕の周りには同じく地面に寝転ぶクラスメイト達。

幸いなことに僕が一番最初に起きたみたいだ。


僕は眠る前に見た光、気づくと突然森の中なこの状況。そしてクラスメイトが全員いるという事。


これらを総合して一つの結論にたどり着く。


「ク…ラス…転移…?」


もしも僕の仮説が正しければこの状況はまずい。


異世界というのは魔物や魔法が平然とある世界のことを普通は指す。


だからこのままだと、食べられてしまうかもしれない。


僕はそう思い、クラスメイトを起こそうと立ち上がり近寄ろ………うとして止めた。


僕の頭には先程にはなかった一つの考えが浮かんでいた。


その考えだと僕の今の状況、一番先に起きたというのはかなり好都合だ。


僕は息を潜め今近寄っていたクラスメイトに背を向け、歩き出す。


僕が考えた事は………日本で読んだ追放物の小説だ。


僕はゆっくりと歩きながら考える。


もしもこれがクラス転移なら、多分赤井がリーダーとなり当分は生きていくことになる。


そして僕らは何らかのチートと呼ばれる能力を手に入れるはずだ。そこで大体赤井のような陽キャは【勇者】とかの上位スキルを手にし、僕のような陰キャは………【村人】のような雑魚スキルを手に入れる。


そしてそれが露見されると言われるのだ、お前は俺らにはいらないから出ていけ………と。


いやそれならまだマシかもしれない今回の場合元々僕は彼らの奴隷のようなものだったならば、こっちの世界でも奴隷のように、もしくは本当に奴隷として扱われるかもしれない。


僕はその考えに身震いをしクラスメイト達から見えない森の奥へと入っていく。


あの場にいたクラスメイトは僕を含め25人。

もともとクラスにいたのは30人。


今日は全員いたから、転移したのも多分30人。


となると5人はさっきの場所ではない離れたところに飛んだということだ。


そこで僕がいなくても彼らは僕を含んだ6人が最初からいなかったのだと思うだろう。


だからいなくなっても大丈夫なはず。


そう理解している。分かっているのになぜか、心臓はどんどん早くなる。


「オッ、オェー」


僕は初期位置からだいぶ離れたところで嘔吐する。


やっぱり自分より格上の相手には向かうというのはきついのだ。


もしもバレたらどうしようか。

今ならまだ戻れるんじゃないか。

この先僕は生きていけるのか。


そんな漠然とした不安が押しかかり………僕はもう一度吐く。


でも足を止めることはできない。


今は、今はできるだけ遠くに!奴らから離れないといけない!


僕は足を早める。


 ◇ ◇ ◇ 


30分ほど歩いたら森が明るくなってきた。


「出口かな?」


そう思った僕は厚い草をはねのけた先を見て、絶句する。


声はとっさに抑えたが、動揺は隠しきれない。

収まってきた鼓動の高鳴りが再び始まる。


そして僕は、もう一度見る。


………だが、結果は変わらない。


森を進んだ先にあったのは大きな川と、その周りを歩く5体の異型の生物ゴブリンだった。


僕は周りを見る。

周りにあるのは落ちた木の枝と、小さな石と土だけだ。


対して相手ゴブリンは、5体のうち3体が武器を持っていた。


それは短いがれっきといた刃物である包丁だ。


僕はつばを飲み込む。


そして意を決して、そばに落ちていた石を3つと先のとがった木の棒を持つ。


作戦としてはこうだ。

ゴブリンが一匹はぐれたところに、石を投げつける。

すかさず接近し、木の棒で刺す。


ここで普通なら仲間がきてしまうが………。


そう、ここは異世界だ。そして僕は異世界人。普通ならチートの一つや二つ与えられるはずだ。


でも現状そんなものは確認できない。


なら、数多ある異世界物、それもクラス転移物のの主流のうちのもう一つ魔物を倒したら白い空間にLet goパターンだと僕は思う。


正直コレは賭けだ。


もしも白い空間にLet goできなかったときは、僕は多分死んでしまう。


本当に命をかけた一か八かの大勝負だ。


僕はゴブリンを林の影から見つめる。


そういえばギャンブル好きな叔父クソ野郎がこんなことを言っていた。


「ギャンブルはデッカーくかけて、ドンと構えるのが鉄則だ!」


と。


そこで、ゴブリンの一体が水に近寄り少し離れる。


………が、僕は飛び込まない。


くそy、叔父の言う通りなら今は行ったほうがいいのだろうが僕はその通りにはしない。


何故ならくそやr、はギャンブル好きだったが全く勝てない事でも有名だった。


と、そこでさっきのゴブリンがもう一度水に駆け寄る。しかも今回は川の半分まで来ていて群れとはかなり遠い。


今だ!!!!


僕は手に持った石を投げる!


ドサッ


一撃目は外れた。だが、幸いにもあちらはまだ僕を見つけていない。そして仲間も気づいていない。


やっぱ知能はないのかな?


僕はそう思いながら2発目を震えた腕でつかみ思いっきり投げる。


ドスッ


よっし!あたった!


ゴブリンの目が潰れて血が出ている。


………やはり魔物だとしても堪える。僕は吐き気を抑えて急いで近寄る。


ゴブリンは僕をみて動き出すが、石が効いたのか、その足はヨタヨタとしている。


僕は木の棒を振り上げてもう片方の目を刺す。


その瞬間、グサリという音と、柔らかい感触、そして自分が誰かを攻撃しているという実感が湧いてきた。


吐き気が上がってきて……耐えきれずに僕は吐く。


ゴブリンは両目を抑えてへたり込んでいる。


チャンスだ!


僕はさらに距離を詰めてその胸と思われる部分に先を思いっきり刺す。


グシャァ


という音とともに僕の目の前には光が満ちる。


「ごめんなs」


僕の意識はそこで途絶えた。


 ◇ ◇ ◇ 


「んっんう。」

 

僕は目を開ける。

そこは予想した通り真っ白い広い空間。所謂神の間というやつだ。


僕はそこで体をおこし正座する。


「ごめんなさい。あなたの命を大切にします。」


僕はせめてもの償いでゴブリンに祈りを捧げる。

無宗教を貫いている僕だが、心を込めて精一杯祈る。


『一定の条件を満たしました。能力ギフト及び職業ジョブを選択できます。選択してください。』


その声が止むと、僕の目の前にでっかいパネルが現れる。


そこには、たくさんの職業と思われるものと能力と思われるものが書いてあった。


職業ジョブ

【剣士】【呪縛士】【暗殺者】【魔術師】【聖騎士】【剣聖】【テイマー】【狩人】【建築士】【魔法剣士】【剣術の天才】【統べる者】【聖者】【闘魂者】【語り手】【光の勇者】【闇の力を持つ者】【時空間魔法使い】【全属性を待つもの】【精霊王】【奴隷商人】【踊り子】【管理人】【検査士】【神剣術士】【闘剣術】【僧侶】etc…


たくさんの文字が並ぶ。その隣には


能力ギフト

【火の適正】【剣術】【隠密】【精密】【全属性】【真なる力】【神の加護】【水の適正】【神剣術】【魔剣術】【魔獣化】【喧嘩】【力の源パワールビー】【風の適正】【治癒魔法】【魔法剣】【学力】【身体能力向上】【テイム】【奴隷調教】【誘惑】etc…


多分この中から選ばないといけないのだと思うが、目を下にやっても見きれないほど職業や能力は多い。


特に能力はどこまであるのかわからない。


シンプルな魔法は………


そう考えると僕の頭に職業と能力がそれぞれ二個浮かんでくる。


【魔術師】【魔法使い】

【魔術】【魔法】


なんか、シンプルだな。


僕は全体を見て思う。


これはある種のガチャだと思う。


【村人】【喧嘩】【剣聖】【神の加護】


などあたりのものと外れのものが数多あり、ただそれを選ぶことができるだけ。


そりゃ、ハズレをわざわざ引くことはないが、名前で騙されたりこの多さに諦めて安易に選ぶ人も多いと思う。


それに多分だが先に選ばれたのは選べないと思う。


例えば【光の勇者】は、上位職だと思うし人気だろう。


でも、みんながこれを選んだら一気に勇者が増える。しかも光だけ。


これはこの世界のパワーバランスや秩序に影響しそうだし、ラノベの常識としてありえない。


【村人】なんかは何人選んでも問題はないのかな?


まぁ、こんな職業選ぶ人いないと思うけど。


さて。


僕はパネルに向かい合う。


多分ここは人生を大きく変える起点だ。

特に職業の方は変更は難しいのかと思う。


だからこそ、良さそうなのは保留にしいらないのは非表示にする。


そんな操作もここでは僕の任意らしい。


「選べるんなら選ばなきゃな!!」


僕はいつぶりかの心からの笑顔を浮かべる。







 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


☆☆☆評価お願いします。

3回ボタン押すだけでいいんで、宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る