第7話 宝石と分断の理由
核心を突き、実質正解に辿り着いたにもかかわらず、神官は頑として口を割らなかった。じ、と7人から視線を向けられても目を逸らして黙っている。
これは余程言いたくないというか、言えないのだろうと判断したイアリア。では逆に、自分に関する、この中で自分だけが関わりのある事で、大聖堂の神官がここまで頑なになる要件とは何だろうか?
そもそもイアリア、「冒険者アリア」ではなくイアリア・テレーザ・サルタマレンダは、教会とのかかわりは薄い。何せ養子なのだ。男爵家からのとはいえ、その前は平民である。そんな自分に、教会が関わる事は、と考えた末に、思い出したのは。
「…………マッテオ・ジェイ・ラッチフォード?」
そう。そう、確か、世界最高の魔法使い「
そしてその名前を出して、冒険者組は首を傾げたり誰だという顔をしたところ、神官はその肩を跳ねさせたのだから、恐らくは当たりなのだろう。……この大聖堂は、世界各地の教会の元締めだ。であるなら、もしかすると他にも「元魔法使いの魔石生み」が、いたのかもしれない。
なおかつ、イアリアを魔石生みから魔法使いに戻す事がナディネの目的だ。他にも同じ状態の人間がいて、大事な大事な弟子に実行する前に、その方法を試す事が出来るのなら、あの師匠ならやるだろう。という確信がイアリアにはあった。
「それは誰かな、アリア」
「……師匠が、教会に、身柄を求めた元神官ね」
「なるほど。……あぁうん、確かにそれはアリアだけだし、僕らには秘密にしなきゃいけないし、急ぎか」
イアリアの師匠が誰か知っているノーンズは、イアリアが限界まで情報を絞った回答でも正確にその内容を察したようだ。流石に「
そしてその理由が、元魔法使いで魔石生みに変じたからだ、というのも伝えた。というより、情報を押し付けた。そして身柄を求めた元神官、という時点で、何かやらかしたか事情があるのは分かる事だ。
「で、どうするんだい、アリア」
「どうやら推測は合っているようだし、これは移動した方が良さそうね」
「そうか。じゃあ案内に従おうかな」
その途端、神官のこわばりがマシになった。そんなに怯えなくても、と一瞬思ったイアリアだったが、冷静に考えると、相手は「
で。そんな「
まぁつまり、この神官もある意味被害者だ。いや、確かにやり方自体はまずかったのだが、「普通」に考えればそうなるだろう。世間から切り離され、敬虔に祈りを捧げる規律正しい生活をしているなら、余計にだ。
「……早めに共有しておけばよかったわね」
「していたとして、それを教会に知らせる事は無かったと思うよ」
と、いうところまで思い至ったイアリアだったが、同じく思い至ったらしいノーンズから訂正が入った。なるほど、それはそう。と、頷くイアリア。
「ところでノーンズ」
「何かな?」
「あなたの隠してた用事っていうのは何だったの?」
「……君の問題関係ではないね」
「師匠がいる以上、下手な事をすると大変な事になるわよ」
「たぶん大丈夫」
ただそれはそれこれはこれ、と、何事か隠しているノーンズに確認してみるが、ここまで来てもまだはぐらかされてしまった。
……碌な事じゃなさそう。と、口の中で呟いたイアリアは、悪くないだろう。
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