第8話 白髪と死
43歳ともなると白髪との戦いだ。
髪の生え際と分け目にゴッソリと白髪が生えてくる。
2週間に1度は染めたいところだが、髪は痛むし、出費もするので1か月は我慢する。
それまでの間は市販の白髪隠しでなんとか凌いでいる。
芸能人でたまに見かけるが、若くして思い切り潔くグレイヘアにする人がいる。心から尊敬をする。本当はみんな楽になりたい。私だってそうだ。
でも43歳だとまだまだ諦めが付かないのだ。
60歳くらいまでは諦めが付かない気がする。
私はアホ毛も人並み以上に多いので、見つけると兎に角抜きまくる。白髪も抜きまくる。気が付くとゴミ箱には髪が大量に。
今度は薄毛になることが怖くなり、かなり高い育毛剤を購入して塗布し、マッサージをしている。
そして抜く。
イタチごっこだ。
くだらないと思われるかもしれないが、私は白髪を見ただけで死にたくなるのだ。「老い」を受け止められないのとはまた違うかもしれない。とにかく完璧主義者の私は少しでも白髪やアホ毛があることが我慢ならない。
出掛ける最後の段階で、アホ毛を見つけて結局2時間くらい格闘して、アホ毛を抜き取ってから出掛ける。又は出掛けるのを取りやめにする。
そうすると本当に死にたくなるのだ。
皺やシミや法令線より、私は白髪が嫌なのだ。男性が禿を恐れるように、女性は白髪を恐れる。白髪や禿をなくす薬を開発した人がいたら、ノーベル賞をあげたいと心から思う。
ある日、遺書もなしに私は自殺する。
精神疾患のこともあるから、それが原因だと周りは思うだろう。
しかしそれがまさか、白髪が原因だとは誰も思うまい。
愚かすぎる理由だ。
最近、私は真剣に部分用ウィッグを購入することを考えている。
まだまだ薄毛ではないのだが、精神的なものによる髪を抜く癖を防ぐためにと、心の安定のためにだ。
私は結構確信している。
白髪を苦に自殺した女性がいるのではないか、と。
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